勇者君10
魔王城最上階
愛理とリーリアは怯えた魔族に連れられて魔王城最上階、この世界を騒がせている妖狐の元にやって来た。
「それは何者だ?」
「名は久城愛理、魔界の魔王殿のようです、花月様」
「ほう・・・」(実に美しい)
この世界で魔王の名を名乗る花月は愛理の美貌を見て素直に美しいと思う、愛理は彼の視線を見て私結婚してるんですけど、と思った。
「それで?、魔界の魔王殿が何の用だ?」
「答えは簡単、あんたみたいなのがいると私が犯人だった勘違いして乗り込んで来る勇者がいるの、この子みたいにね、だから魔王って名乗るのはやめてくれないかな?」
「ん?その小娘が最近、俺の部下を仕留めて回っていた勇者か、ならばお前の提案は聞かん、部下を失った元凶と共にいる者の言葉など聞く必要はないからな、それに貴様魔王であろう?、何故勇者と共にいる?、光と闇は相容れぬ存在であろう?」
「そうだね、私は魔神で魔王だ、元勇者だったとしても光の陣営なんかじゃない、私は闇の陣営の一人さ、でもね、そうやって光と闇とか分けて考えるからずっと人間と魔族は争い続けて来たんだ、だから私は魔王としての立場を使ってそう言う考えをなくす為に動いてるの、いつまでも争っていたらいつかみんな滅びちゃう、私、そんなのは嫌なの」
現に愛理の活動のおかげか第一世界や発展した世界では人間と魔族が手を取り始めている、しかしこの世界のように発展途上の世界は愛理の言葉など聞かず人間と魔族は争い続けている、愛理の仕事はそんな世界の争いを止める事だ。
「戯言を、今代の魔王は随分と甘いようだ、ならば力で示して見せよ、お前が正しいと言う事をな」
「望むところさ、行くよ、リーリア」
「はい!、師匠!」
「「魔力バースト!」」
『魔力バースト発動、85パーセントの出力で制御します』
「了解!」
師と弟子は同じ力、魔力バーストを使う、その瞬間激しい魔力が二人の体から二人の体から解放され城を揺らす、全ての身体能力を魔力バーストにより向上させた二人は花月に向かって行く。
花月は立ち上がり己の武器である刀を抜いた、そして向かって来る愛理とリーリアの剣を受け止める。
「「ハァァ!」」
魔力バーストは短期決戦向けの能力だ、早く勝ち切りたい愛理とリーリアは無理矢理に彼を押し切り、蹴り飛ばし奥の壁に彼を叩き付けた。
「やるな、流石は魔王と名乗るだけはある」
「私の力はこんなもんじゃないよ」
「ほう、舐められたものだ!」
愛理が全力ではないと聞いた花月は大きく魔力を発散させ、愛理とリーリアを無理矢理に下がらせた、そして愛理と比べて力の弱いリーリアを先に仕留める為、彼女に斬りかかる。
「私の方が弱いとか思った?、確かにそうだけど、舐めないで!」
愛理に言われた通りに鍛え、小技の繋がりの良さが向上しているリーリアは、花月の剣速をあっさりと上回り、彼の刀を払うとガラ空きとなったは腹に左拳を喰い込ませ片膝を着かせた。
(師匠が言ってた通りだ、小技を出すスピードが上がれば、こうやって大技を当てる隙が出来る!)
「ホーリーソード!」
リーリアは光輝く斬撃を花月に当てた、強力な一撃をまともに喰らった彼は地面を転がる。
「お前もやるようだな、ならば俺も全力を見せようか!」
リーリアの攻撃を喰らい倒れていた花月は立ち上がり、闇の力を解放する。
「さぁ互いに小手調べは終わり、ここからが本番だよリーリア、準備は良い?」
「勿論」
「そっか、なら絶対に勝つよ!」
「はい!」
敵が全力ならば自分も全力だ、愛理は魔力バーストを切り、ゼロフォームに変身をした。
(師匠のゼロフォーム・・・、やっぱり凄い!、でも私だって負けないんだ!、いつか絶対師匠より強くなる!!)
リーリアの憧れの存在は愛理だ、そして憧れをいつか越えてみせると心に誓う少女は、憧れの存在と共に敵を見据える。
「どうだ?、これが俺の全力だ」
人間の姿であった花月は巨大な狐にへと変身した。
(確かに凄い、でも師匠の本当の全力に比べたら、全然怖くない!)
愛理は一度、リーリアに全力で魔力を解放した自分の姿を見せている、その理由は圧倒的な力を敢えて感じさせ恐怖させる事で、強い魔力を持つ者に出会ったとしても怯えて身が竦まないようにする為だ。
「それがどうしたって言うの?、全然怖くなんてないわ!」
剣に光を灯したリーリアは花月に向かって行く、圧倒的な力量差があるのにも関わらず勇気を出して花月に向かって行くリーリアを見た愛理は、弟子の成長を喜び微笑む。
「遅い!」
花月は向かって来るリーリアに向けて前足を振り下ろす、上から迫る前足、リーリアは背中から魔力をブースターとして放出し加速する事で、前足を使った攻撃を躱した、花月の腹の下に潜り込んだリーリアは剣を真上に突き出し、腹に剣を突き刺した。
「ぐぉぉ!?、小娘め!」
花月は真下にいるリーリアを押し潰そうとのし掛かり攻撃をする。
「よい・・・しょ!」
そうはさせまいと愛理は花月の体を蹴り上げ、蹴り上げられた花月は天井に激突する、その間にリーリアは退避し、左手に魔力を溜めた。
「ホーリーブラスター!」
「ぬぅぅ!?、はぁ!」
迫るブラスターを見た花月は口から炎を放つ、リーリアと花月により魔力と魔力の押し合いが始まった。
「はぁぁぁぁ!、魔力バースト、85パーセント!」
「そんなもので俺を押し切れるかぁぁ!」
「なら!100パーセント!」
「まだまだぁ!」
リーリアは徐々に力を上げて行く、それでも花月のパワーよりは下だ、このままでは勝てないそう察したリーリアは、体の事を考えずに魔力バーストを限界を越えて発動させた。
「200パーセント!」
「ぬぉぉ!?、ぐぁぁぁ!」
リーリアに力を上回られた花月はリーリアのホーリーブラスターに呑まれた、花月を呑み込み膨れ上がったホーリーブラスターは魔王城の上層を消し飛ばした。
「良くやったね、リーリア、流石は私の弟子だ」
リーリアがブラスターを止めると人の姿に戻りボロボロとなった花月が落ちて来て地面に倒れた、魔力バーストの反動で全身が痛みもう戦えないリーリアは、それでもフラフラと彼に近付いていく。
「私の勝ちね」
「あぁ・・・」
「悪さはもうしないって誓って、そうすれば命までは取らない」
「勝者はお前だ、敗者である俺はどんな条件でも飲むさ」
「あら意外と素直ね、あなた、イテテテテテ!」
花月との会話を終えたその瞬間、魔力バーストの更なる反動がやって来てリーリアは全身の痛みに苦しみ、地面に倒れもがく。
「あらら・・・、セラピー?、治してあげて?」
「はーい」
地面に倒れもがく弟子を見かねた愛理はセラピーを呼び、大ダメージを受けているリーリアの体を治してあげた。
「終わったね、さてリーリア、これからどうする?」
「そうねぇ、出来れば師匠ともっと一緒にいたいかな、もっともっと強くなりたいもの!」
「ふぅん、この世界はどうするの?」
「これまで迷惑をかけた分、花月が守るんだって、師匠のやり方を真似して、人と魔族が手を取り会えるように頑張るみたい、それでね?本当に緊急事態になった時は助けてくれってさ」
「そっか」
花月が己のやり方を真似し人と魔族が手を取り会えるように努力すると聞いた愛理は嬉しそうにする、こうして己のやり方に同調し手と手を取り合う為に努力をしてくれる同士が増えれば、世界からきっといつか争い事がなくなる筈だから。
そう信じている愛理は可愛い弟子をリーリアを抱きしめ、共に地球にへと帰って行った。
勇者君編(第四部五章)、完




