勇者君1
今回はボツになったお話の再構成再利用です。
魔王城
今日も今日とて様々な魔族や魔物が闊歩し一般人がその只中に叩き込まれたら縮こまってしまいそうな、平和な平和な魔王城にて、愛理が金色の尻尾を揺らしながらのんびりと歩いていた、その様子は化け物屋敷の中に湧いて出た一輪の花のようである。
「魔王様!」
「やぁタコ君」
「いやその、私の名前は・・・」
「タコ君」
「・・・」
タコ君は長年名前を言おうとしても聞いてくれない愛理に対し溜息を吐くと、とある紙を渡して来た。
「ボン様からです」
「なになに?、勇者襲来!、至急執務室へ!、えぇ・・・、タコ君、私人間界に攻め込んだりしてないよね?」
「はい、魔界の魔族達や魔物達も魔王様が立ち上げた、人間界へ向けた観光地企画のショッピングモールの建築や遊園地の建築に駆り出されており、人間界に攻め込む余裕などないはずです」
「だよねー、となると多重世界にいる魔族か魔物がやらかしたか・・・」
ともあれボンに話を聞くしかないので、愛理はタコ君に向けて手を振ると、のんびり尻尾を揺らしながら自身の執務室に向かって行く。
魔王の執務室
「それで?ボン、どこの馬鹿がやらかしたのかな?」
「第239世界の妖狐族の若い衆だ、その若い衆のリーダーが勝手に魔王と名乗っているようでな、今日魔界に現れた勇者は同じ妖狐族でしかも魔王であるお主と勝手に魔王と名乗っている妖狐族を勘違いしてこの魔界にやって来たらしい」
「これまた迷惑な・・・、あぁ私の魔王城お散歩企画が・・・」
「仕事から逃げているだけとも言う」
「うるさい」
ボンに本当の事を言われムカついた愛理がボンをポコポコと叩き床にめり込ませていると、ドーンと言う音と共に魔王城が揺れた、勇者がやって来たらしい。
「来たな」
「うん、勇者が来たとなれば魔王の伝統通りお相手をしなきゃなぁ」
愛理はそう言うとエプロンを机の上に置き、四代目となった魔王の正装を着込み、クロスギアを首にかけると一階に向かって行った。
魔王城一階
魔族や魔物達の喧嘩により度々吹っ飛ぶ大きな扉は今回は勇者により吹っ飛ばされていた、愛理は入り口に立っている勇者らしき少女に後で修理させてやると思いつつ、少女に問い掛ける。
「我が名は魔王!久城愛理!この魔界を統べる者である!、・・・どう言ったご用件でしょうか?」
「現れたわね!魔王!、あなたを倒しに来たわ!、あっ私の名はリーリアね」
「あっよろしく」
自己紹介をし合い互いにペコペコする魔王と勇者、その様子を見て面白い事になったぞと集まって来た周囲のギャラリーから微妙な雰囲気が漂った。
「な、なによ、とにかく私の世界を平和にする為にあなたの命を貰うわ!」
(この子話して聞くタイプじゃないな、仕方ない・・・)
「良いよ、かかって来なさい」
剣を構える勇者の目をしっかりと見据え、愛理はクロスギアに触れエクスカリバーを呼び出した、そして自身の基本姿勢である、剣を後ろに構え身を低くすると言うポーズを取り、一気に駆け出した。
(速い!?)
目の前から消えたとリーリアが思った瞬間、愛理の剣がリーリアに迫っていた、なんとか反応したリーリアは剣で愛理の剣を受け止めるが、その重すぎる斬撃により一撃で尻餅をついてしまった。
「はい、私の勝ち、ちょっとお話ししようか、勇者君」
(手も足も出ずに負けた・・・)
「え、ええ・・・」
ニッコリと微笑みリーリアの首に剣を突き付けながらお話ししようと言う魔王、一撃で敗北した勇者はコクコクと頷くことしか出来なかった。




