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金色の九尾lll  作者: ブレイブ
第一部、一章冒険の始まりと三尾
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三話

愛理の自宅、愛理の部屋


3日後明日奈と旅に出る事が決まっている愛理は、現在ベッドの中で夢の世界を旅している、部屋の中には明日奈がプレゼントした、愛理の愛剣である剛鉄製の剣が机の上に置かれている。


明日奈との修行により既に三尾となっている愛理の3本の尻尾は布団からはみ出し時折ピクピクと動いており、狐の耳は片方がピン!と立ち、もう片方はペタンと垂れている。


「もう食べれないー」


何やら寝言を言っている愛理は眠りながらニヤリと笑うと、右方向に転がりベッドから落ちた。


「ふにゃっ!?」


顔から落ちた愛理は目を覚まし涙目になりつつ、鼻を摩る、顔面から行ったので結構痛かったらしい。


「・・・ベッドから落ちるのなんていつ以来かなぁ、やっちゃった」


愛理の記憶によると最後にベッドから落ちたのは、恐らくは七年ほど前と記憶している。


「お婆ちゃんと冒険に行くのは楽しみだけど、やっぱり心の何処かでは不安なのかなぁ・・・」


愛理は明日奈との旅に出る事をワクワクドキドキと楽しみにしている、しかしここ数年する事がなかったミスを今してしまうと言う事は心の何処かで冒険の旅に出る事を不安に思っているのかもしれないと愛理は考える。


「お腹空いたし着替えてから、朝ご飯食べに行こっと」


立ち上がった愛理は一階に降りる前に服を着替える、鏡の前に立つと、金色の髪、青色の瞳、そして大体が金色で先っぽが白い狐の耳、フサフサとした先っぽが白い3本の狐の尻尾を持った、自分の姿が鏡に映った。


「良しっと」


赤いパーカーに中には黒いTシャツ、黄色いスカートを身に付けた愛理は、尻尾を揺らしながら一階に降りて行った。




一階リビング


尻尾を揺らしつつ愛理は部屋に入る、中に入ると母、明日葉がソファに座りコーヒーを飲んでいた。


「あら、おはよう、愛理」


「おはよ、お母さん」


愛理は母のおはようの挨拶に答え、挨拶を返し隣に座る。


「朝ごはん作ってあげる、何食べる?」


「食パンをバター付けて焼いて!」


「質素ね・・・あなた」


娘のオーダーを受けた明日葉は一度娘の髪を撫でてから立ち上がりキッチンに向かい、パンを焼く。


『今日のニュースです』


テレビでは今日のニュースをやっている、世界情勢がどうとか株価がどうとか、まだ15歳である愛理が見ていても余り面白い物ではない。


「お母さーん、チャンネル変えて良いー?」


「良いわよー」


「良し」


母にチャンネルを変えても良いとの許可を貰った愛理は、小さい頃から見ていた、アニメチャンネルに変える、現在放送しているアニメは猫がネズミを追いかけるアニメのようだ。


「ふふふ、これ好きなんだよねー」


愛理は楽しそうにアニメを見る、ブーンとかドカーンとか激しい効果音が部屋に響く。


「はい、出来たわよ」


「えへへ、ありがと」


アニメを楽しんで見ていると、明日葉が焼いたパンを持って来てくれた、愛理はそれを嬉しそうに受け取ると一口食べる、パンに適度に染みたパターの味が美味しい。


「それで?あなた今日はどうするの?」


「今日も冒険者ギルドに行ってくる」


愛理は明日奈から旅に出るまでは私に頼らず一人で冒険者の仕事をしてみなさいと言われている、その為現在は師の言葉に従い、毎日ギルドで仕事をしているのだ。


「あんまり危ない事はしちゃ駄目よ?お婆ちゃんも居ないのだから」


「うん、分かってる」


母の忠告を聞いて素直に頷いたパンを食べ終えた愛理は、立ち上がると剣を取りに二階に向かう、そして腰に剣を装備すると、グラン王都、明日奈が初めて旅した世界に向けて転移した。




グラン王都冒険者ギルド


グラン王国は数百年経った今でも特に変わっていない、どうやらファンタジーな世界は魔法で建物を簡単に修理できる為、建物の移り変わりは少ないようだ。


そんなグラン王都に転移して来た愛理は、途中、巾着に入れているゴールドを使い、鳥の串焼きを買い、食べながら冒険者ギルドに入った。


「今日はどれにしようかなぁ」


尻尾を上下に揺らす愛理は、クエストボードに貼られている依頼を眺める、ここ数年コツコツと冒険者としてのランクを上げて行っていた為、ギルドランクはB、そこそこ高報酬な依頼を受ける事が出来るようになっている。


「んー、これ!」


悩んでいても決まらないと判断した愛理は、ええいままよと、目を瞑り一枚の紙を取った、愛理は取った紙を見る、その内容は。


「ゴブリンの討伐かぁ、良しこれにしよっと」


愛理が適当に取った依頼の内容はゴブリンの討伐依頼、最近この近くの農園の近くにゴブリンが家を建て、そこに住むゴブリン達が家畜を襲い、盗んでいくと言う、家畜を盗まれ迷惑なので討伐して欲しいとの、内容だった。


「これにしまーす!」


「あら、愛理ちゃん今日も元気ね、はい、分かりました」


愛理と朝顔見知りの受け付けのお姉さんは愛理に笑いかけてくれた、それを見た愛理も笑顔を返す。


「はい、どうぞ、余り無茶はしないように」


「はーい」


愛理はそれさっきもお母さんに言われたなぁと思いつつも、キチンと返事をし、依頼許可書を鞄に仕舞うと、冒険者ギルドを出て、農園に向かう。




グラン王都、農園


ここはグラン王都の農園、沢山の家畜を飼い、牛乳や肉や鶏の卵を王都に届ける、グラン王都には欠かせない食料源だ、見た感じのどかな農園だが、ゴブリンに困らされているらしい。


「この依頼書によると、この農園の北西側の森の中にゴブリンの家があるって書いてあるね、そっちに行ってみよう」


依頼書の内容を改めて確認した愛理は、書かれている北西側の森に向かう、暫く歩いていると確かに森が見えて来て、森の中に煙が上がっているのが見える、恐らくはあの煙の下が、ゴブリンのお宅があるのだろう。


煙の場所を覚えた愛理は狐の耳を使い周囲の音を良く聞きながら森の中を進む、ゴブリンが周囲にいて、攻撃されるのを警戒しているのだ、しかしゴブリンはこの周囲には居ないようで、安全にゴブリンのお宅が見える位置まで来る事が出来た。


「木を切り倒して広い広場を作ってる、そして倒した木を使って家を建ててる、ふぅんゴブリンって結構凄いんだ」


木の後ろに隠れる愛理はゴブリンが行った作業を見て素直に感心する、自分では家を建てる事など出来ない、だから素直に家を建てているゴブリンを凄いと思った。


「折角作ったのにごめんね・・・でも、こっちも仕事なの」


ゴブリンの家の脇に何処から持って来たのか樽の爆弾があるのを見つけた愛理は、陰陽術の師、妖狐の白花から教えて貰った狐火を発動させ、爆弾に向けて放った。


愛理が放った狐火は爆弾に命中し、爆弾はドカーンと大爆発した、爆風は広場にポツンと建つゴブリンのお宅に引火し、ポツンと広場の真ん中に家が建っている為、周囲の森に火が引火する事は無かった。


「ギャー!ギャー!」


「ヤッタノハダレダ!」


燃え盛る家の中からゴブリン達が慌てた様子で飛び出して来る、三体いる彼等は爆弾を爆発させた犯人を探し辺りの捜索を始めた。


「いちにぃさんっと!」


音により自分が隠れている木とゴブリンの距離をはかっていた愛理は、木の陰から飛び出し斬り伏せるのに丁度良い距離に、一体のゴブリンが入った所で、陰から飛び出し、首を斬り裂き、一体のゴブリンを仕留めた。


「イタゾ!」


「ヤッタノハアイツダ!」


愛理と言う犯人を見付けたゴブリンは斧を振りかぶり、愛理に向けて迫って来る、愛理は剣を構え、それを迎え撃つ。


「よっと!」


愛理は先程放ったものより強い狐火をゴブリンに放つ、狐火を喰らった二体いるうちの一体は、燃え盛る炎に焼かれ苦しむ、もう一体は仲間が焼かれたのを気にせず、愛理に迫る。


「クラエ!」


「ふっ!」


愛理はゴブリンの横振りの斬撃をしゃがんで躱す、攻撃を躱した愛理は、自分の足をゴブリンに引っ掛け相手を倒す。


「ごめんね・・・」


愛理は剣をゴブリンの心臓に突き刺し、彼の命を奪った、その時身を焦がす狐火が鎮火した、最後の一匹が立ち上がった音を、狐の耳が捉える。


「ヨクモヤッタナ!キツネオンナ!」


愛理の後ろから迫るゴブリンは縦振りに斬撃を愛理に向けて放つ、その動きを音と気配で捉えていた愛理はその斬撃を横に動いて躱し、そのまま回転斬りを放つ。


「グエェ!ウデガ!」


明日奈の教えを受け研ぎ澄まされている愛理の斬撃はゴブリンの腕を斬り落とした、そして敵に甘さを見せるなと明日奈に教えられている愛理は、師の教えに従い、最後の一撃を放つ。


「ホーリーソード!」


光り輝く剣ホーリーソードは剣に強烈な斬れ味をもたらし、ゴブリンを真っ二つに斬り裂いた。


「ふぅ」


チンと音と共に剣を鞘に仕舞った愛理は目を閉じて再び周囲の音を探る、他のゴブリンが周囲に居ないか音で探っているのだ。


「居ない・・・か、なら帰ろう」


ゴブリンの討伐を終えたと判断した愛理は討伐の証拠品である角をゴブリンの死体から斬り出してから踵を返し、グラン王都に向けて帰って行った。



グラン王都


「おねーさん、おわったよー」


「はい、よく出来ました」


愛理は受け付けのお姉さんに討伐の証拠品の角を渡す、受け付けのお姉さんはそれを見て本物だと判断し、愛理に報酬を渡す、今回の報酬は8000ゴールドだった。


「ふふ、お疲れ様」


「うん、また来るねー」


報酬を貰い、無事依頼を完遂させた、愛理は地球に向けて転移した。




3日後


この日は愛理の旅立ちの日、愛理が15年間過ごした、この家を離れ、明日奈と共に旅に出る日だ。


「愛理、お婆ちゃんの言う事を必ず聞くんだぞ?」


「分かってる」


明日葉に作って貰った、バックパックを腰に付ける愛理は父の言葉に頷く。


「たまにはここに顔を見せに帰って来るのよ?」


「うん」


明日葉は旅立つ娘を最後に抱き締める、愛理も抱きしめ返した。


「それじゃ、行って来ます!」


愛理は、父と母の頬にキスをしてから振り返り、明日奈の家に向けて転移した。


「15年か、早いものだな」


「そうね、本当にあっという間だったわ」


愛理の両親は娘の旅の無事を天に祈る。





森の中の家


森の中の家の中、明日奈は椅子に座り旅に出る準備をしていた。


「お婆ちゃーん、まだー?」


「待ちなさい、もうすぐ終わるから」


明日奈はバックパックの中に沢山の思い出の品々を入れて行く、それは今は亡き友との思い出のメモリーだ。


「・・・」


明日奈は最後の写真、ウィリアムの写真を手に取り胸が熱くなる、今は亡き愛するあの人、また会える日は永遠にやって来ないだろう、しかしウィリアムとの幸せな思い出は今も明日奈の中で生き続けている。


だから明日奈はウィリアムの写真を一度抱き締め、もう一度眺めて、もう一度抱き締め、もう一度眺めて・・・


「お婆ちゃん!はーやーく!」


「はいはい」


愛理に急かされた明日奈はウィリアムの写真をもう一度抱き締めてから名残惜しげにバックパックの中に仕舞う。


「よっ!お姉ちゃん!」


そこにレビィがやって来た。


「久し振りね、レビィ、それじゃあ、暫くこの家の管理を任せるわね?」


「うん!了解です!」


明日奈は久しぶりに会った妹を抱き締め離れると、愛理の元に近付いていく。


「さぁ!行きましょうか!愛理!」


「うん!」


こうして久城愛理の果てない冒険が始まる。

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