七話
精霊界
「・・・左腕は使っていないからともかく・・・」
「慣れない義足でこの速さって・・・」
灯理とラフォリアは修行として明日奈との模擬戦を行なっていた、そして慣れない筈の義足で速い動きで動き翻弄して来る明日奈の実力に舌を巻く。
「でも、こっちは二人だ!」
灯理は両手に持つ剣で明日奈の攻撃をなんとか受け止め明日奈の動きを止めた、明日奈の動きが止まった隙を狙いラフォリアが突きを放つ。
「甘い」
明日奈はラフォリアの突きが自分の体に到達する前に灯理を力で押し切り尻餅を着かせると、回転しつつ移動しラフォリアの突きを躱すとそのままラフォリアの体に向けて斬撃を放つ、ラフォリアはギリギリ明日奈の斬撃を槍で防ぐ。
「ホーリーバーニングっ!ソード!」
明日奈の真後ろに回り込んだ灯理は光と焔を混ぜた斬撃を放つ。
「ていっ」
明日奈は地面を蹴り砂を灯理の目に喰らわせた、まともに砂を目に浴びて目潰しされた灯理は斬撃を外す、そして明日奈に背負い投げられた。
「さて、ここまでにしましょうか」
「はい・・・」
「うん・・・」
完膚なきまでに明日奈に負けた二人はシュンと下を向く。
「落ち込まないで?、あなた達の連携は息が合っているとは言えないけど、既にかなり質の良い物よ、その理由はラフォリア、あなたには分かるんじゃない?、私も同じ理由でラフォリアとは合わせやすいし」
「はい、灯ちゃんには愛ちゃんや明日奈さんと同じ血が流れている、ですからなんとなく何を考えてるのか分かるのです」
愛理と強い絆を結んでいたラフォリアはその祖先である明日奈や娘である灯理の考えもなんとなくだが察する事が出来る、その為ラフォリアから灯理の動きに合わせ、なんとか連携を取り持っている、しかし灯理はラフォリア達と知り合ったばかり、ラフォリアの事を理解し切っていない為、息を合わせられないのだ。
「今の愛理は相当に強い、その理由は私と比べても魔力量が桁違いに多く、様々な能力強化に魔力を贅沢に使えるからよ、今のあの子に出力で上回るのは難しい、だからこそ連携攻撃で打ち勝つの」
「その為には、私がリアちゃんの事を理解する事が必要なのね」
「そう言う事、それと灯理?、あなたに伝える事があるわ」
灯理に伝える事があると言った明日奈は灯理の手を取り目を閉じる、そしてやはりと言った様子で頷く。
「やはりね、時を渡った時に目覚めたのでしょうね、そして未来のお母さんもこの可能性に賭けていたのかもしれないわ、あなたには私の時の神の後を継ぐ資格がある」
「私が神様に?」
自分が時の神と慣れると聞いた灯理は自分が神様になるなどとは考えていなかった為、不思議そうな表情を見せる。
「そう、そして神と慣れば魔力量も身体能力も桁違いに上昇する、それでも今の愛理には大幅に劣るでしょうけど、ラフォリアや私との連携を極めれば、あの子を上回れる筈だわ」
「そっか、なら私はお母さんを取り戻す為にも神様になる!」
一度決めれば目標に一直線に突き進む灯理は明日奈の後を継ぎ時の神となると決めた。
「取り敢えず桜お婆ちゃんの所に行きましょう、神として覚醒する手っ取り早い方法を知っているかもしれないわ」
「うん!」
灯理と明日奈とラフォリアは転移し天上界に向かった。
勇者連合
麗羅は彼女が所属する機関、勇者連合に呼び出されていた。
「潜木麗羅よ、十二宮の勇者久城愛理正しい道に導けず、闇に落ちてしまった事に何か申し開きはあるか?」
「ありません・・・、よってどんな処分でも受け入れます」
麗羅の任務は勇者として覚醒する予定だった愛理に近付き、友人となり間違った道に行かないように導く事だった、しかしその任務は失敗としか言えない結果に終わってしまった、その為麗羅はどんな処分でも受けると進言した。
「ならば、お前に処分を与える、十二宮の勇者、いや、金の聖杯、久城愛理を正しい道に引き戻せ」
「!」
(流石と言った所かしら、愛理が金の聖杯だと知っている、でもどうやって?)
麗羅は勇者連合が愛理を金の聖杯だと何故知っているのか考える、ヴァレンシーナも自分達も愛理が金の聖杯だと知る者達も愛理が金の聖杯だとは公表していない、ならどうやって愛理が金の聖杯だと知った?、麗羅にはそれが分からなかった。
「分かりました」
(小さい頃から思ってたこの組織には何かあると、探ってみる必要があるかしら)
勇者連合に疑いを持った麗羅は一先ずは上司達に頭を下げ、この場を後にした。
ヴァレンシーナの部屋
ヴァレンシーナは愛理に新たな任務を与えようとしていた、愛理は主人の前で片膝を着いている。
「愛理、あなたに与える任務はあなたのデバイス、アルスの捜索よ、あの機体がどこから来てどこに帰るのかを突き止めなさい、あの機体を得る事が出来れば魔王軍は更に強くなれるわ」
「了解しました、ヴァレンシーナ様、必ずやアルスの所在を突き止めてみせます」
エクストールの量産型GHG-00Mアルスはその主人である愛理ですら、呼び出す事は出来ても、どこに保存されているのか知る事が出来ない、恐らくはアルスを自由に扱えるように慣れば悪しき者を打ち倒した後の人類が、その力を使い戦争を起こすと考えた金の聖杯の創造主が金の聖杯に与えたリミッターなのだろう、そのリミッターを悪しき者であるヴァレンシーナが打ち破ろうとしている。
「それと他のデバイスの捜索はアルファルドと菜乃葉がやってくれているわ、後でお礼を言っておきなさい」
「はい」
愛理は主人に受けた命を果たす為、エミリアと共にアルスが保存されている可能性が高いメルファファスタに向かった。




