五話
ヴァレンシーナの部屋
「お帰りなさい、愛理、ふふふ、不満そうね?」
「別に不満なんかじゃ・・・」
「別に怒ったりなんてしないのだから不満なら不満と言いなさいな、おいで」
カプセルの扉を開けたヴァレンシーナを愛理に側にくるように言う、愛理は嬉しそうな表情でヴァレンシーナの元に向かい、ヴァレンシーナは闇に堕ちた少女の頬に触れる。
「体が復活すれば、まずはあなたを抱きしめてあげる、楽しみにしていなさい」
「はい」
ヴァレンシーナの言葉を聞き愛理は彼女の顔を見て微笑んだ。
エクストールのコクピット
翌日、この日も任務はなく暇な愛理はエクストールのコクピットに座り機体の機能のチェックを行っていた。
「金の聖杯専用だから、エクスカリバーを置くスペースもあるんだよね」
シートの右側にはエクスカリバーを置くスペースがある、シートに座った時邪魔にならないようにとの設計者の気遣いだろう。
「にしても、周りが全部見えるのって不安になるな・・・」
エクストールのモニターは全天周囲モニターである、これにリニアシートを組み合わせる事で死角をほぼ無くしている、ただ慣れないと何も無い空間に浮かんでいるかのような感覚となる、それを防ぐ為か、視界に腕や足を映すようにする事も出来る、この場合は腕や足が映る分視界は悪くなる。
操縦桿は、左右マニピュレーターの五本指に対応したボタンが備えられており、これを押す事で物を持ったり離したり出来る。
フットペダルは二つあり、左右で機体右半分用と左半分用に割り振られている、右を踏めば右のスラスターが動き、左を踏めば右のスラスターが動くと言う訳だ。
「このタッチパネルちょっと遠いなぁ、近くならないかな?」
武器選択は左側のパネルを触って選択する、上下のスクロール式で表示されている武器を押すとエクストールが自動的に持ち替えてくれる、デフォルト状態ではエクスカリバーの表示は無かったが、現在では追加されている。
色々と触っているとタッチパネルの下部分にロックを見つけた、ロックを外すとタッチパネルの位置が前後に動き、愛理はシートから近めにタッチパネルの位置を調整した
「よしよし・・・」
ほぼ違和感なく操作出来る状態になったエクストールのコクピット、愛理は満足気に頷く、そうしていると明らかにメカニックと言った感じの大男が通路を歩いてこちらに近付いてくる。
「よう、嬢ちゃん」
「オダマ、機体の整備の仕方は分かった?」
この男の名はオダマ、優秀なメカニックであり、ヴァレンシーナからエクストールのメンテナンスを任せられている、愛理は主人が信用するのならとコクピット内にあった整備方法も載っているエクストールのマニュアルを渡している。
「大体はな、今、必要なもんを若い奴らに集めさせてるから、五日もあればこいつの完璧な整備が出来るようになるぜ、だから嬢ちゃんはこいつで好きなだけ暴れな」
「了解、好きなだけ暴れさせてもらうよ、後私も整備は手伝うからね、・・・良いよね?」
既にエクストールに愛着を持っている愛理は、自分の機体の整備を手伝ってもいいか、聞いた。
「良いぜ、ただトロトロすんじゃねーぞ」
「はぁい」
エクストールの整備の手伝いを許された愛理は嬉しそうな顔でエクストールから降り、自分の機体を見上げた。
数時間後
「部屋にいないという思ったら、こんな所で寝てやがるぜ」
「起こしましょ」
夕食のお誘いをする為、愛理の部屋に訪れた菜乃葉とエミリアは、部屋に愛理がいなかった為、あちこち歩いて探し、最後に訪れたこの場所で愛理を見つけた、菜乃葉が早速、愛理を起こしにかかる。
「ほら起きろ、飯の時間だぞ」
菜乃葉は愛理をグラグラと揺すって起こそうとする、あまりに強く揺らす為愛理はすぐに目を覚まし、コクピット内に置いてある剣を抜く。
「もうちょっと静かに起こそうか?、ねぇ?」
菜乃葉の起こし方にお怒りな愛理は彼女の首に剣を突き付ける。
「わ、悪かったって、今のお前がこういうことやると本気かふざけてるのか分かんねぇから、やめてくれよ・・・」
「ふざけてないよ、本気だよ」
本当に菜乃葉を斬るつもりの愛理の瞳から強い殺気が放たれた、背後で様子を見守っているエミリアが冷や汗を掻くほどのものである。
「どうもすみませんでした」
斬られても復活するとは言え斬られると痛いため菜乃葉は頭を下げて謝った、それを見た愛理は溜息を吐いてから剣を鞘に戻す。
「それじゃあ、行きましょ、お腹ペコペコなのよ」
「うん」
愛理とエミリア、そして愛理に怒られしょげている菜乃葉は食堂に向かって行った。




