十一話
ドリー島〜ベレー島間空域
愛理は襲われている飛空艇と黒の空賊団の飛空艇の間にビームを撃った。
「これでこっちに注意を向けてくれると良いんだけど」
黒の空賊団の飛空艇は愛理の思惑通りこちらに向けて回頭し、ミサイルを放って来た。
「良し!」
愛理はメサイヤの機首を真上に向けると真上に向けて移動した、そしてそのまま真上に向けて移動した後船を平行に戻し、黒の空賊団の飛空艇の後ろに回り込もうとする。
「チッ!」
しかし黒の空賊団も甘くは無い、メサイヤの進行方向にミサイルを網のように飛ばして来た、愛理はメサイヤを右に直角に回頭させてミサイルの網を躱すとそのまま右方向に進む。
「ミサイル発射!」
愛理は右方向に進みつつ、メサイヤの右側のミサイルを発射した、メサイヤのミサイルは黒の空賊団の飛空艇に命中した。
「良し!」
ミサイルが命中したのを確認した愛理は、更に追撃する、メサイヤの機首を敵の飛空艇の方に向けると、ビームを敵の飛空艇のエンジンに向けて発射する。
「やったぁ!」
愛理が放ったビームは見事にエンジンを貫き、手痛いダメージを喰らった、黒の空賊団の飛空艇は近くの島に向けて落ちて行く。
『勝ちましたね!愛理!』
「うん!」
愛理とラフォリアは黒の空賊団の飛空艇に勝利したと喜び合う。
『助かったよ、ありがとう』
愛理がラフォリアと喜び合っていると、黒の空賊団の飛空艇に襲われていた飛空艇から通信が入った。
「ううん、良いの、困ったらお互い様って奴だよ」
『はは!そうだな!』
初めての飛空艇同士の戦いに勝利した愛理は、傷付いた襲われていた飛空艇と共にドリー島船着場を目指す。
ドリー島船着場
9番ドックにメサイヤを着陸させた愛理はリビングに向かう。
「そう言えばお婆ちゃん、黒の空賊団の奴等あそこに放って来ちゃったけど良かったのかな?」
そう、愛理は落ちた黒の空賊団の飛空艇を浮島に放置したままこの船着場に来てしまった、本来なら捕まえて情報を探るべきなのに。
「良くはないけど今回は仕方ないわ、あちらさんの飛空艇が落ちてしまうかもしれない状況だもの」
「うーん・・・」
明日奈の言葉を聞いても愛理は釈然としない気持ちだが、次のチャンスは幾らでも巡って来るだろう、次は黒の空賊団を捕まえ、情報を得れば良いのだ。
「さぁ、町に向かいましょう愛理、お腹空きました」
「だね」
愛理達は共にメサイヤを降り、レストランに向かおうとする、すると愛理と同じような帽子を被った男が近付いてくる。
「やぁ!君がさっき助けてくれた子だな!ありがとう!」
「良いの良いの、それよりも船とか船員さんとか大丈夫だった?」
男は先ほど助けた飛空艇の船長だった、船長は愛理にお礼を言うと頭を下げる、怪我人がいないか心配な愛理は、彼に怪我人は居ないか聞いた。
「幸い居ない、君のおかげだ、本当にありがとう」
「そっか、よかったぁ」
怪我人は居ないと聞いた愛理はホッと息を吐く。
「それで突然で悪いが君の団の名前を教えてくれないか?」
「私の団はフォックステイルって言うの」
船長は愛理に団の名前を聞いて来た、愛理は快く彼に団の名前を教える。
「フォックステイルか、覚えておく、俺の団の名前は、ブルーセントラルだ、覚えておいてくれ、そして君達が困っている事が連絡して来てくれ、必ず助けに向かうよ!」
「うん!」
自分の団の名前を言った、ブルーセントラルの船長は愛理に連絡先を書いた紙を渡して来た、愛理はそれを嬉しそうに受け取り、ブルーセントラルの船長は愛理に手を振りながら自分の船の方に向けて歩いて行った、愛理は彼が見えなくなるまで手を振る。
「ふふふ、彼を助けて良かったわね、愛理」
「うん!」
騎空団ギルド
昼食を取りギルドにやって来た愛理達に一斉視線が集まる、視線を特に受ける愛理は首を傾げる。
「来た来た!君!こっちに来てくれ!」
愛理を呼ぶ人物、それはブルーセントラルの船長だった、呼ばれた愛理は明日奈の顔を見て、明日奈が行きなさいと頷いたのを見てから、彼と数人の人物が座る席に向かう。
「さっきは自己紹介を忘れていたな!俺の名はグラブだ、覚えておいてくれ」
「そう言えばそうだね、私の名前は愛理だよ」
先程は団の名前を言い合っただけで、お互いの名前を教え合うのを忘れていた、その為二人は今度は自分の名前を教え合った。
「ふぅん、こんな小娘がねぇ、あの黒の空賊団の飛空艇を落としたのかい?」
愛理を疑うかのように見つめる女性がいる、まるで女海賊のような外見をしている赤髪の彼女は、同じ女性である愛理から見ても綺麗だと思った。
「本当さ、レイリ、なんだって俺はさっきこの子に助けられたんだからな、嘘だって言うんなら島から飛び降りてやっても良いぜ?」
女性の名前はレイリと言うらしい、そしてグラブは愛理肩に手を置く。
「・・・そこまで言うなら信じてやろうじゃないか、お嬢ちゃん、アタシはレッドタイガーのレイリだ、よろしく」
疑うかのような目で愛理を見るのをやめたレイリは、愛理に向けて手を差し出す、愛理はその手を取った。
「それにしても若いねぇ、あんた歳は幾つだい?」
レイリは愛理の歳を聞いて来た。
「15だよ」
愛理は素直に自分の年齢を言った。
「ほっほう!これは驚いた!僅か15歳で黒の空賊団に打ち勝つとはな!これはかなり見込みがあるかもしれんのぅ!」
愛理の年齢を聞いて一人の老人が声を上げた、彼は軍服のような服を着た歴戦の戦士と言った外見で、片目は眼帯に隠れて見えない。
「そうだろ?シバの爺さん!この子はかなり見込みがある!」
どうやら老人の名前はシバと言うらしい。
「うむ、成長が楽しみじゃ!」
シバはそう言うとガッハッハと笑いながら酒を美味しそうに飲む。
「それでよぉ、愛理、うちの同盟に入らねぇか、ソリビカ王国同盟にさ」
「ソリビカ王国と言いましたか?」
椅子に座る愛理の後ろで和かに話を聞いていたラフォリアが、ソリビカ王国と聞いて話に割り入って来た。
「おう、言ったぜ、それがどうかしたか?お嬢ちゃん」
「い、いえ、なんでもありません」
グラブがラフォリアに言葉をかけるがラフォリアは首を振って、顔を赤くしつつ後ろに下がる。
(どうしたんだろ?ラフォリア、後で聞いてみなきゃ)
「ねぇグラブさん、ソリビカ王国同盟って何?」
ラフォリアの様子を見て愛理は後で彼女に質問してみようと思いつつ、ソリビカ王国同盟とは何か、グラブに質問する。
「ん?なんだしらねぇのか、なら教えてやろう、ソリビカ王国同盟ってのは、ここ周辺の空域を納めるソリビカ王国が大元の、大型同盟組合だ、入ると色々良い事が有るんだぜ?」
「まずは良い仕事を回して貰えるようになる、それにうちの同盟に入る事で信頼を得る事が出来る」
グラブの説明を聞いた愛理は良い話だと思った、今の自分達には信頼が無い、しかしこの同盟に入れば信頼を得る事が出来る、それはこれから騎空団としての仕事に多大な好影響を与えるだろう。
「一つだけ聞くわ、その同盟に参加する事によって、私達が軍と同じような扱いを受ける事はないのでしょうね?」
「あぁ無いよ、ソリビカ王国には王国軍があるからね、アタシ達ソリビカ同盟は奴等に地上の安全を守らせる代わりに空の安全を守ってやってんのさ」
明日奈の質問にレイリが答える、明日奈はレイリの答えを聞いて安心し、身を引く。
「それで愛理、どうするのじゃ?」
「うん、入る、このチャンスを逃しちゃ駄目だと思うから」
同盟に入る事によるデメリットは無く、メリットしかない状況、それならば愛理は同盟に入る選択をする。
「そうか!なら俺達は今日から仲間だ!上には俺が推薦しておくよ!」
「ありがとうございます」
推薦してくれると言うグラブの言葉を聞いた愛理はペコリと頭を下げる。
「ははっ!良いって事よ!なんだってお前は俺の命の恩人だからな!」
グラブは笑いながら愛理の背中をバンバン叩く、正直痛い。
「そうと決まれば、新しい仲間を祝福して宴会だ!オラ!アンタら!宴会するよ!盛り上げな!」
レイリはドンと机に靴を乗せると声を張り上げ宴会だと宣言した、それを聞いた他の同盟の者達は一斉に反応し騒ぎ始める、同盟に参加していない騎空団の者達も混ざっていたりする。
騒ぎ始めた騎空団の者達は何処からともなく酒を持ち込んで来て、愛理の前に置く、愛理は首を振ってまだ未成年だと断る、すると彼等は残念そうな顔をしつつ、愛理の前に仕方なさそうにジュースを置いた。
「おうおう!騒げ!飲め!今日は宴会じゃあ!」
既にかなり酔っているらしいシバは、銃を取り出すとバンバン撃つ。
「危ねぇ!やめろ!糞爺!」
「殺す気なの!?」
弾に当たりかけた男や女が文句を言うが、シバは気にせず撃っていた。
「それにしてもあんた中々良い体してるねぇ、触らせな」
レイリは明日奈に詰め寄り胸を触ろうとするが、明日奈は笑顔のままレイリを拘束する。
「なっ?はっ?」
一瞬で拘束されたレイリは混乱する、全く明日奈の動きが見えなかったのだ。
「ふふふ、舐めるんじゃないわよ?小娘が、逆に私が触りまくってやるわ!」
そして逆に明日奈がレイリの体を弄くり回す、男勝りなレイリが滅多に上げない女性らしい叫び声がギルドに響く。
「はっはっはっ!たのしいぜぇ!」
グラブは自身の団員や他の団員達と肩を組んで踊っている、彼も相当酔っているようである。
「ねっ?ラフォリア、こう言うのも悪くないね?」
「ふふふ、そうですね」
宴会の様子を見てまだジュースしか飲めない愛理とラフォリアは乾杯する、それを見たグラブとシバと、はぁはぁと息が絶え絶えになった、レイリがグラスを差し出してきた。
「乾杯!」
愛理は嬉しそうに彼等のグラスと乾杯した。
早朝、いつの間にか眠っていた愛理は目を覚まし周囲を見渡す、するとグラブやシバやレイリは眠っており、受け付けのおねーさんですら服を着崩し、床で眠っていた。
そんなギルドの様子を見て苦笑いを浮かべる、愛理の視線に窓際に座り外を見るラフォリアの姿が目に入る、それを見た愛理はラフォリアに近付いていき話しかける。
「ラフォリア、おはよ」
「おはようございます、愛理」
二人は挨拶し、愛理はラフォリアの前に回り、自分も外を眺める。
「気になっているのでしょう?私がソリビカ王国の名に反応した事を」
「あ、あり?分かっちゃう?」
「はい」
考えていた事がバレた愛理はバツが悪そうに頭を掻く。
「ソリビカ王国は滅んだ私の国の同盟国でした、そして黒の空賊団に私の国が襲われた際にも協力してくれた、私の大好きな国なのです」
「そうなんだ、だから・・・」
「はい、ついつい反応してしまいました」
ラフォリアは照れ臭そうに舌を出し笑う。
「愛理、いつかソリビカ王国本島に行きませんか?」
「うん良いよ、いつか行こう」
「ふふふ、約束ですよ?」
「うん」
愛理とラフォリアは約束だと拳を合わせ合う、そして二人でクスクスと笑い合った。




