十話
アメリカ、ワールドセイバー地球支部
愛理との模擬戦を終えた明日奈は愛理の予想通り地球のワールドセイバー地球支部に来ていた、アメリカのとある都市のとあるビル街に立つ、ワールドセイバー本部は外から見ると一見普通のビルだが、中は様々な種族がこの世界を守る為に働くワールドセイバーの支部となっている。
「おはよう、久城来羽はいる?」
地球支部の一階受け付けにやって来た明日奈は受け付けの女性に挨拶し、二人目の孫、来羽がいるかどうか聞いた。
「はい、いらっしゃりますよ」
「ありがと」
来羽がここにいると確認出来た明日奈は彼女の所属部署、技術部に向かう。
地球支部、53階技術部
ここはワールドセイバー地球支部の技術部、様々な世界の武器や防具を解析し、更に優れた武器や防具を開発する為の、他の支部にも存在する部署だ、ここに明日奈の孫来羽は主任として勤務しており、明日奈はたまにここにホワイトローズのメンテナンスを頼んでいる。
「おはよう、来羽」
何やら大きなゴーグルを付けて、両手に大きな機械を持って機械の接合を盛大に火花を散らしながら行なっている来羽に、明日奈は後ろから挨拶した。
「ん?あぁ、お婆ちゃんか、おはよ、どうしたの?ホワイトローズのメンテ?」
明日奈の娘、妖狐である未来の娘である来羽も母と同じく妖狐であり、尻尾の数は7本だ。
「ホワイトローズのメンテじゃなく、愛理の事なの」
「愛理がどうかしたの?」
明日奈の口から来羽の孫でもある愛理の事を聞いた来羽は、見事に食い付く。
「いやぁ、ちょっと模擬戦やってたら私もあの子も本気になり過ぎてね?私が愛理の剣を折っちゃったのよ」
「何してるのよ・・・お婆ちゃん・・・」
愛理の剣を熱くなり過ぎて明日奈が折ってしまったと聞いた来羽は、明日奈に呆れた視線を送る、その視線を受ける明日奈は頭の後ろを掻く。
「だから、あんたの所の良い武器分けてくれないかなぁて、あの子もそろそろ良い武器を持っても良い、実力と技術を身に付けて来てるからさ」
「そういう事ならタダであげるわ、なんだって可愛い孫の為ですもの、ちょっと待ってて」
明日奈の話を聞いた来羽は、この部屋の倉庫の方に歩いて行く。
「あっ、お婆ちゃん、愛理の武器って剣だっけ?」
倉庫に歩いて行く途中で立ち止まった来羽は振り返り、愛理が扱う武器について明日奈に聞いた。
「そうよ」
「分かった」
明日奈の返答を聞いた来羽は今度こそ、倉庫に入って行った、明日奈はその間に来羽の机の上を見る。
「・・・銃?」
「Yes」
来羽の机の上にはまだ組み立て中らしい、大き銃が置いてある、その形はスナイパーライフルのような形だ。
「触ってみる?」
「NO」
明日奈としては来羽が作った武器を触ってみたかったのだが、ホワイトローズにキッパリと止められたので諦める。
「それにしてもマスター、やはりここは、嫌な雰囲気を感じるのですが・・・」
「そう?」
ホワイトローズは感じている、ここにいるエージェント達が彼女に対して送って来る、興味津々と言った感じの視線を、隙さえあれば解析してやろうと言った視線を。
「・・・」
身の危険しか感じないホワイトローズは、明日奈の服の胸ポケットに隠れる、するとどこからかチッと舌打ちが聞こえたので明日奈が振り返ると、全員作業に集中しているようだ、一体誰が舌打ちをしたのか、これでは分からない。
「お婆ちゃん、私作の傑作を持って来たわよー」
明日奈がそんな彼等に対し首を傾げていると、来羽が五本の鞘に入った剣を手に持ち帰って来た、来羽が持つ武器は標準的な剣から、機械的な剣まで様々だ。
「うーん、どれがどんな剣?」
明日奈は来羽にどれがどんな剣なのか聞く、聞いた結果愛理に一番向いている剣を彼女に渡すつもりだ。
「まず1本目、これは斬ったら相手が消滅す・・・」
「却下」
(説明はちゃんと全部聞いて欲しいですマスター、興味深いです、聞きたいです)
得意げに剣の能力を説明する来羽、明日奈は相手が消滅と聞こえた時点で却下する、触れただけで正直する剣など危な過ぎる、そもそもこれからも模擬戦を行うのだ、下手したら明日奈も消滅する、正直そんな事で死にたくない。
「ええー、なら2本目、これは特殊な金属を用いて作った剣でね?斬ったら相手が跡形も無く爆破・・・」
「却下」
斬ったら爆発と言う事は、ちょっと地面に触れても爆発すると言う事、下手すれば愛理は自爆してしまう、その為これも許可出来ない。
「なら、これは?ガンブレイド、ちょっと調整不足で弾詰まり起こすけど・・・」
「・・・」
明日奈はそもそも未調整品を持って来るなと言った視線を来羽に送る、来羽は苦笑いしつつ、ガンブレイドを引っ込める。
「それじゃこれ!戦闘能力を10倍に上げる剣!これを使えばどんな人でも強くなれるの!」
「へー!良いじゃない!」
「その代わり、使うだけで、どんどん魔力が無くなるけどね!最終的には動けなくなるけどね!」
「却下」
明日奈は最初は人工的な身体強化みたいな物だろうと思い良い剣だと思った、しかし使用リスクが大きすぎるので、却下した、戦闘中に魔力切れで動けなくなるのは死に繋がる、そんな物を許可など出来ない。
「それじゃ、これかなぁ、最近発見された、剣にすれば物凄い強度と斬れ味を出すって言う、エルミアル鉱石で作った、エルミアルソード、刃を欠け難くする為に特殊コーティングもしてるわ」
何故かテンションを低くする来羽が最後に明日奈に見せた剣は、刃は黒く柄は赤い剣、エルミアルソード、特殊な鉱石で作っているらしく強度も斬れ味も高いようだ。
「ふぅん、貸して」
「はい」
来羽からエルミアルソードを受け取った明日奈は鞘から抜き、構えるそして振るった。
「良いわね」
エルミアルソードは明日奈が一度振るってみた感じ重さは丁度良い、長さも愛理が使っていた物と同じ、明日奈から見れば完璧だ。
「私から見ても、中々の逸品だと思います、私には劣りますが、数段劣りますが」
ホワイトローズもエルミアルソードを評価する、あくまで自分の方が優れていると胸を張りつつ。
「よし、これにするわ」
ホワイトローズの一押しもあり明日奈はエルミアルソードを持っていく事に決めた。
「ふふふ、分かりました、愛理によろしくね?お婆ちゃん」
「ええ、あっそうだ」
愛理に手渡す剣を決めた明日奈はもう一つ、来羽に注文をした。
湖の島
そして現在、水着を着た明日奈は尻尾の中に隠していたエルミアルソードを取り出し愛理に見せる。
「お婆ちゃん?これは?」
愛理は明日奈が手に持つ剣について明日奈に質問する。
「名前は、エルミアルソード、来羽が作ったあなたの新しい剣よ」
「来羽お婆ちゃんが?」
「ええ」
明日奈は愛理に近付くと剣を手渡す、剣を受け取った愛理は鞘から引き抜く。
「わぁ!かっこいい!」
「ふふ、でしょ?そう言って貰って来羽も喜んでるわ」
剣の外見を見て気に入った愛理は数回振ってみる、すると以前から使っていたかのように手に馴染みとても振りやすい、これなら以前の剣を使っていた頃よりも、更に良い斬撃を繰り出せそうだ。
「いつか地球に帰ったら来羽お婆ちゃんにお礼を言いに行かなきゃ」
「ええ、そうしなさい」
いつか来羽にお礼を言いに行くと言う愛理の頭を撫でてから明日奈はラフォリアに近付く。
「ラフォリア、あなたにもプレゼントよ、はい」
明日奈はもう一本今度は手に持っていた鞄から槍を取り出すとラフォリアに渡す、ラフォリアが受け取った槍は青い外見の槍で柄の部分は黒い。
「これは?」
「愛理の剣と同じ材質の素材を使ったエルミアルランス、仲間になった記念の私からのプレゼントよ」
「!、ありがとうございます!」
槍を明日奈から貰ったラフォリアは大きく頭を下げる。
「あなたもいつか愛理と一緒に来羽にお礼を言いに行きなさい」
「えへへ、良かったね?ラフォリア」
「はい!」
新しい槍を手に入れたラフォリアに愛理は良かったねと微笑みかける、ラフォリアはそれに答え微笑み返した。
「さーて、それじゃ遊びましょうか!」
「うん!」
「はい!」
そして愛理とラフォリアと明日奈は、湖に飛び込み、一緒に泳いで遊ぶのだった。
メサイヤ、コクピット
ここはメサイヤのコクピット、湖の島を後にした愛理達はドリー島に向けて進んでいる、ドリー島に戻り次の仕事を受ける為に。
「ん?あれなんだろ?」
メサイヤを操縦する愛理の視界の端に何かの影が見えた気がした、気になった愛理はそちらを見る。
『あれは!』
愛理の視界を映す魔導モニターから影の正体を見たラフォリアが声を上げる。
『黒の空賊団の飛空艇・・・』
そう黒の空賊団の飛空艇が別の飛空艇を襲っているのだ、襲われている飛空艇は煙を上げており、今にも落ちてしまいそうだ。
『愛理!』
「分かってる!助ける!」
愛理は襲われている飛空艇を助ける為に、メサイヤを戦闘空域に向けて進ませる。




