二十九話
クラフトデビルズ本拠地
愛理とノアが戦う頃、ティナも水月との戦闘に入っていた。
「銃火器を使う貴様の弱点は近接戦のはず、ならばこちらは積極的に距離を詰めさせてもらおうか!」
「ハン!、そんななまちょろ刀に迫られたとしても負けない!」
ティナと水月は煽り合いながら、互いに動く、水月は直線的にティナに接近し、ティナは十分に引き付けた所で横に飛び右手に召喚したハンドガンを撃つ。
「斬!」
水月は華麗な剣捌きで弾を斬りティナに近付いてくる、とことん距離を詰めてくるつもりらしい、それを見たティナはとある物が中に詰まったカプセルを水月の足元に投げる。
「チッ!、トリモチか!」
ティナが投げたのはトリモチ、地面に当たると同時にカプセルは炸裂し中からトリモチが飛び出した、飛び出したトリモチは水月の足に張り付き、水月と地面を固定した。
「卑怯者め!、これを外せ!」
「嫌よ」
ティナは水月を戦闘不能にする為利き手を撃ち抜こうとする、しかし水月はティナに撃たれる前に刀から水を噴き出させトリモチを無理矢理に引き剥がした。
「水か!」
「あぁそうだ、私の能力は水を自在に召喚し操る事だ」
水月は刀に水を纏わせると斬撃のように形成し撃ち出して来た、ティナは数発飛んで来る水の斬撃を後退しながら確実に躱し、召喚したマシンガンから弾を放つ、しかし・・・。
「水の壁か」
銃弾は中に激しい流れを確認出来る水の壁に阻まれた。
「これより貴様の銃弾は全てこの壁に阻まれる、さぁどうする?、銃使い!」
勝ちを確信した表情の水月は一気にティナに近付いてくる、水月に至近距離にまで迫られたティナは顔を狙い銃を撃つが至近距離でも水の壁に銃弾は阻まれる、ティナの銃弾が通らないと確信している水月はニヤリと笑いながら刀を振り下ろす。
「ッ!」
ティナはボディスーツの手甲の部分で刀を止め弾くと大きく後ろに飛んで水月との距離を取った。
(さぁどうする?、ティナ、私の武器とあいつの水の壁の相性は最悪、どうやってあの壁を突破する?)
最早、勝ちが決まった戦いだと確信している水月はティナに作戦を考える魔を与えずに再び一気に距離を詰めてくる、それを見てある事を試してみようと思ったティナもハンドガンを構えて前方に向けて走り出す。
「死にに来たか!」
「さぁどうでしょうね!」
首を斬り落とそうと横振りに振るわれる水月の刀、ティナは顔を引っ込めて斬撃を躱すと水月の懐に潜り込む。
「なっ!?」
「ねぇあなたのバリア、銃口が体に密着してたらどうなるのかしら?」
ティナは水月の腹に銃口を密着させるとトリガーを引いた、銃声が響いた後、水月は腹を押さえて数歩後ずさる、彼女の腹からは血が流れている。
「くっ・・・、まさか私が傷を負うとは、見事、しかし負けはしない!」
腹を撃ち抜かれもう機敏な動きは出来ない水月は連続して斬撃を飛ばしてくる、ティナはそれを躱しながら水月に近付き、彼女に抱き着いた。
「距離を詰めると言ったあなたが、距離を詰められて負けるなんて皮肉ね」
そして召喚したスタンガンを彼女の首筋に当てて感電させた、感電した水月は意識を失い地面に倒れる。
「ふぅぅ・・・、流石に疲れた・・・」
銃を使うティナにとって距離を詰められ続けるのはかなり神経を使う、疲れたティナはため息を吐きながら治療中の愛理に近付き、死んでしまっては困るので水月の治療をセラピーにしてもらってから彼女をワールドセイバーに送る。
怪我の治療が終わり復活した愛理とセシリアとティナ、そしてレアリとレイズは入り口の広場を抜け、狭い通路を進んでいた、目的はこの基地にいるはずのボスを捕まえる事だ。
「こっちはー、敵がいなくてー、平和だねー」
「うん、みんな入り口の戦闘に出ちゃってるんだろうね、その分こっちを調べ易くて助かるよ」
誰もいない通路を進み続けていると一番奥の部屋に辿り着いた、いかにも何かいそうなこの部屋がボスの部屋なのだろう、愛理達は頷き合ってから一気に扉を開けた。
「久しいな、久城愛理」
「あなたは!、アルファルド!」
革張りの立派な椅子の上には二年前に魔の者と化したアルファルドが座っていた、その片隅には無表情な男だ立っている。
「なんであなたがここに・・・、はっ、まさかAって・・・」
「そう、俺だ、俺がこの組織が作っていた黒いアーマーデバイスの研究に更なる技術力を与え完成させたのだ、お陰で我等も更なる力を得る事が出来たよ」
愛理はヴァレンシーナの軍が黒いアーマーデバイスを得て更に強くなったと聞き焦る、アルファルドは愛理の表情を見て満足気な表情を見せた。
「既にアーマーデバイスの製造は我が国でも可能とした、つまり俺としてはもうこの組織には用はないというわけだ、しかし貴様の命には用がある、さぁ人形よ、久城愛理を殺せ」
アルファルドは無表情で隣に立つ男に命令をした、すると無表情な男は顔を上げ服を脱いだ、その体には五つの黒いアーマーデバイスが埋め込まれていた。
「変・・身」
男は虚ろな声で変身と唱えるとその体はドス黒い魔力に包まれ、次の瞬間には巨大な堕天使のような姿に変わっていた、右手には巨大な剣を持っている。
「ククク、こいつは相当に強いぞ?勇者よ、貴様に勝てるかな?」
「勝てるか勝てないかじゃない!、勝つ!、そしてあんたを捕まえてやる!、みんな!行くよ!」
強い思いを口にした愛理は精霊王モードに変身しながら、堕天使に向けて斬りかかって行く。
「はい!」
「ええ!」
仲間達も愛理と共に敵に向かって行く。
「セシリア!、合わせて!」
「はい!」
愛理とセシリアは見事に息の合った連携で同時に堕天使に攻撃を放った、堕天使はその攻撃を軽く受け止めると剣を振るい二人を振り払う、そこにティナとレアリの攻撃が撃ち込まれるが、堕天使は左手で全て打ち消した。
「そぉりゃぁ!」
レイズが堕天使の顔に槍を突き付けるが堕天使の顔に槍は刺さらず、槍を掴まれレイズは攻撃を放つレアリとティナに向けてレイズを放り投げた。
「レイズー!」
「ありがと、レアリ、助かった」
投げられたレイズをレアリが受け止め、受け止めてもらったレイズはお礼を言う、レアリはレイズの礼を聞いて微笑みながら頷いた。
「うぉぉ!」
堕天使は叫ぶと剣を振り上げ殺せと命令されている愛理に迫って来る、愛理は剣を両手で構え迎え撃つがそれでも力負けし、堕天使の剣を受け止めた後、体が大きく後ろに仰け反った、堕天使は愛理のその隙を見逃さず、突きの攻撃を放って来る。
「させません!」
セシリアが巨大な剣を横からハンマーで叩き剣の行き先を逸らす、愛理はその間に堕天使に迫り体を斬りあげる。
「グォォ!」
堕天使は痛みに叫ぶ、レイズは愛理が斬り開いた傷に槍を突き刺し更に傷を広げ、広がった傷にレアリとティナが攻撃を撃ち込んだ、連続した攻撃によりダメージを喰らった、堕天使は後ろ向きに倒れる。
「ほぅ・・・、やるな、しかしこの程度では人形は負けんよ」
堕天使は立ち上がると顔が多くに裂けた、その中から砲塔のような物が迫り出して来ると、砲撃を放つ。
「くっ!?」
上に向けて放たれた砲撃は天井を跡形もなく吹っ飛ばした、愛理は今の威力を見て戦慄する、あれを喰らえば自分は今消えた壁と同じ運命となると確信出来たのだ。
「みんな、あれを撃たせたら私だけじゃなく、ワールドセイバーのみんなも死んじゃう!、撃たせないようにするよ!」
「おう!、任せな!」
堕天使は次弾を放とうとしている、愛理は次弾を撃たせない為に堕天使に接近する。




