三話
飛空船、デッキ
ドラゴンを見送った愛理は明日奈とラフォリアが船内に行った後も空を眺めていた。
「こうしてると思い出すなぁ、お婆ちゃんと初めて空を飛んだあの日のこと」
10年前、愛理は明日奈と共に空を飛んだ、その日見た光景、空を飛ぶ沢山のドラゴン達と果てしない空の姿を、愛理は今も鮮明に覚えている。
愛理は思う、自分はあの時からずっと空に憧れていたのだろうと、だからこそ。
「私は飛空艇を手に入れて、騎空団の団長になる!」
空を見て愛理に夢が出来た、果てしない空を自由に旅をすると言う夢が。
飛空艇ロビー
「た、高い・・・」
飛空艇を手に入れる為には資金が必要である、愛理は飛空船のロビーで見付けた飛空艇のカタログを読み、自分がこれから集める予算のおおよその目安を付けようとしていたのだが、一番安い飛空艇でも1000万ゴールドであり、買える気がしない。
「どうしたのですか?愛理」
明日奈と何やら話していたラフォリアが、愛理に近付いてきて話しかけて来た。
「私ね?騎空団を作ろうと思ったの、それで飛空艇の値段を見たんだけど、高過ぎて買えないよぉ〜」
「へぇ!騎空団を!どれどれ?見せて下さい!」
ラフォリアは愛理が手に持つ飛空艇のカタログを見て、愛理の顔を見て、もう一度カタログを見て、愛理の肩を叩いた。
「す、数年頑張ったらなんとかなりますよ!きょ、協力します!」
そして引きつった笑顔を見せ協力すると言ってくれた、しかしラフォリアの様子を見て自分の夢が無茶な夢だと認識出来てしまった愛理は、落ち込みながら、カタログを読み進める。
「んっ?これ・・・」
落ち込みながらカタログを読み進めていると、とある遺跡の記事が出て来た、気になった愛理は記事を読む。
「わっ!わっ!見て!ラフォリア!」
読み終わった愛理は興奮した様子でラフォリアに記事を見せる。
「なんですか?」
ラフォリアは愛理が見せて来た記事を読む。
「これは!これなら!」
「でしょ!?」
愛理とラフォリアが読んで興奮する記事、それは古代の飛空艇が眠る遺跡に関しての記述だ、なんでもこの世界の遠い昔にこの世界を救った英雄が残した飛空艇のようで、硬く閉ざされた扉の先に今も眠っているらしい。
何人もの冒険者や騎空団の団員が扉を開けようとしたが、開ける事が出来ず、今では誰も訪れ無くなった、遺跡にその飛空艇は眠っているようだ。
「それも丁度、次の島にあるみたいですね!」
「うん!行ってみようよ!」
「はい!」
こうして愛理達の次の島での目的が島に到着する前に決まった、その目的とは古代の飛空艇が眠る、遺跡探索、愛理の夢の第一歩である。
目的地をラフォリアと決めあった愛理は明日奈の元に向かい、遺跡に行きたいと明日奈に伝えた、明日奈は目をキラキラと光らせる愛理を見て、抱き締めつつそれを許可した。
夜、寝室
ここは愛理達が取った飛空船の客室、愛理は客室に備え付けられているベランダから、尻尾を揺らしながら月を眺めていた。
月は妖狐にとっては何故だか魅力的な物、夜になり空を見上げて月が目に入ると、ついつい長い間眺めてしまう妖狐は多い。
「愛理?そろそろ寝なさい?」
あくびをするホワイトローズを肩に乗せた明日奈が、愛理の側にやって来て、そろそろ寝なさいと言葉をかける。
「うん、でももう少しだけ」
明日も沢山歩く、早く寝ないとしんどいのは分かっているが、もう少しだけ愛理は月を見ていたかった、だから首を振る。
「そっ、なら付き合うわ」
愛理の言葉を聞いた明日奈は愛理の隣に座り、自分も月を眺める、愛理は明日奈の肩に頭を乗せた。
「ねっ、お婆ちゃん、私ね?夢が決まったよ?」
「そう、それはどんな夢?」
「飛空艇を手に入れて、私の騎空団を作る、それでね?この広い空を旅するんだ、素敵でしょ?」
「ええ、とっても素敵、だから必ず叶えてみせなさい」
明日奈は夢を語って聞かせてくれた愛理に拳を突き出した。
「うん」
愛理は明日奈の拳に自分の拳を合わせ、夢を必ず叶えると誓った。
(私はいつか貴女から離れる、でももう少し、もう少しだけ、貴女が成長する姿を見せてね?私の可愛い孫、愛理)
明日奈はいつの間にか眠っていた愛理を抱え部屋に入る、そして愛理をベッドに寝かせると自分も布団に入り、眠った。
朝、愛理が目を覚ます、うーんと体を伸ばしつつ体を起こした。
「二人共眠ってるんだ」
明日奈もラフォリアも眠っているのを確認した愛理は、音を立てないように着替え、音を立てないようにドアを開けて、部屋の外に出た、そして朝の空を見る為にデッキに向かう。
「わー!朝焼けが綺麗!」
デッキに出ると見事な朝焼けが愛理を出迎えてくれた。
「そうね、綺麗ね」
「ん?誰?」
愛理が尻尾を振って朝焼けを綺麗だと言うと、背後から同じ感想を持った人物が話しかけて来た、愛理は振り返りその人物の顔を見る。
「始めまして、久城愛理、未来の勇者さん?」
振り返るとそこには黒い髪に赤い瞳をした少女がいた、服も黒く全身黒づくめだ、そしてどう言うわけか愛理の事を知っているようだ、愛理にはこの世界の知り合いなど、ラフォリアやシリカ位しか居ないはずなのに。
「なんで、私の名を?」
「さぁ?なんででしょう?」
何故自分の名を知っているのかと疑問に思った愛理は少女にその理由を聞く、少女はそれを笑ってはぐらかし、トン、と地面を蹴り姿を消した、次の瞬間。
「貴女の命を狙う者と伝えておくわ」
愛理の背後を取り後ろから愛理を抱き締めるとその首に短剣を突き付けた。
「っ!?」(反応出来なかった!?)
首に短剣を突き付けられている事、そして少女の動きに反応出来ず見えなかった事に驚く愛理は、少女を敵だと判断し、真後ろに狐火を放つが少女は躱し、再び愛理の目の前に現れた。
「ふふふ、首を取られても対抗手段はある、か、中々良い教育を受けているのね?」
「あなた、何者?まさか黒の空賊団の・・・」
剣を持たない愛理は不慣れだが魔力による剣を創造しつつ、少女の正体を探る。
「ふふふ、黒の空賊団と私は関係無いわ」
「それなら、あなたはなに?」
「さぁ?なんでしょう?」
少女は愛理の質問を再び笑ってはぐらかし、短剣を構え、今度は愛理に見えるスピードで愛理に斬りかかってくる、愛理は仕方なく少女を迎え撃つ。




