十五話
宿
朝、愛理が目を覚ます、そして部屋の中を見渡すとティナが武器の整備をしていた。
「おはよう」
愛理はティナに声をかける、愛理の声に反応したティナは武器の整備をやめ振り返った。
「ええ、おはよう」
ティナは愛理に朝の挨拶を返す、愛理はそれに頷きながらティナの隣に立つ。
「沢山あるんだね、毎日これ全部を整備してるの?」
机の上にはティナが体中に装備している銃器が並べられている、主な種類はハンドガンにマシンガンにショットガン、それとミサイルランチャーにレーザーガンとレーザーライフルだ。
「ええ、銃器は信頼性が最も重視されるの、その信頼性を高める為に毎日の整備を怠るわけにはいかないのよ」
「へぇー、大変なんだねぇ」
愛理は彼女が毎日この様な作業をしていると聞き感心する、自分は腰に装着している魔道銃の整備やエクスカリバーの拭き作業程度しかしていない為、単純にティナの毎日の作業量に圧倒されてしまった。
「ねっ、手伝おっか?」
ティナが毎日大変な作業をしていると聞き手伝ってあげたくなった愛理は、ティナの銃の整備の手伝いを申し出た。
「・・・、まぁ良いわ、手順を教えるから一回で覚えて」
「うん!」
愛理はティナに彼女なりの銃の整備の方法を教えてもらいながら、彼女の銃の整備を手伝った。
街道153号線
この世界の道路は街道と呼ばれ街と同じく番号で呼ばれる、愛理達はティナがこの世界で所有している車に乗り別の街に向かっていた。
「ひーろーいーねー」
「でーすーねー」
愛理とセシリアは辺り一面に広がる乾いた大地を暇そうに眺めている、これで少しでも緑があれば自然を見る楽しみが出来るのだが、こうも何もないと暇でしかない。
「暇なのは分かるけど、煩い」
「はぁい」
ティナに煩いと言われた愛理とセシリアは黙る、賑やかな二人が黙り静かになった車は黙々と街道を進み、二十分程度経った頃、小さな町に到着した、ティナはパーキングで車を止めた。
「お腹減ってない?、ここで何か買いましょう」
次の大きな街まではまだ二時間ほどかかる為、ティナは昼食を買おうと二人に提案した。
「おっ、良いね」
「ハンバーガーが食べたいです、私」
丁度お腹が減って来た所である愛理は嬉しそうにティナの提案に乗る、セシリアはハンバーガーを食べたいようだ。
「ハンバーガー?、うーん・・・あったかしら?、まぁ見て探してみましょう」
三人は車から降りて昼食を買う為、町を歩く。
「・・・、変な服装の人が結構いるね」
「ええ、同じ世界出身だけどああいうファッションのどこが良いのか分からないわ」
町には肩には棘付きのパッド、頭はモヒカンと言った世紀末スタイルの者達が沢山いる、彼等はある者は自分のバイクを整備していたり、別のチームの者達と睨み合いをしたりしている、とにかく目を合わせない方が良さそうだ。
「あっハンバーガー屋ですよ!」
世紀末スタイルな彼等より自分のお腹が大切なセシリアがハンバーガー屋を見つけ、脇道から狙ったかのように飛び出して来た、世紀末スタイルなお兄さんにぶつかった。
「ウォォォ!?、イッテェ!折れた!、折れたぜぇ!」
セシリアとぶつかった世紀末スタイルなお兄さんは、地面に倒れると派手に痛がり地面を転がる、そんな彼の様子を見ているセシリアは目を点にしている。
「あーあー、これ折れちゃってるよ、どうしてくれんの?、ねーちゃん」
痛がる世紀末スタイルなお兄さんの元に別の世紀末スタイルなお兄さんが近付いて来て、セシリアにどうしてくれるのか聞いて来た、お決まりのパターンである。
「えっ?、いやそのあなたがいきなり飛び出して来ただけじゃないですか」
「あー!?、ぶつかったのは事実だろぉ?」
「た、たしかにそうですが・・・」
男の激しい口調に押されセシリアはオロオロし始める、あの様子じゃ押し切られ金を払わされるなと思った愛理はセシリアに近付いて行き助け舟を出す。
「ねっ、お兄さん、本当に折れてるんだよね?」
「なんだぁ?、疑ってんのかぁ!?」
「うん」
疑っているのかと聞かれた愛理は素直に疑っている事を肯定すると、未だに演技している世紀末スタイルなお兄さんに近付き、折れたらしい腕の反対の腕を掴む、ちょっと力を込めて。
「イテテテテ!、何すんだ!」
愛理に腕を掴まれた世紀末スタイルなお兄さんは腕を掴む愛理の力の強さに耐え兼ね折れたらしい方の腕で愛理を押した。
「あっ・・・」
そして世紀末スタイルなお兄さんは自分で自分が犯したミスに気付き顔を青くする。
「やっぱり、折れてないじゃん」
「くっ、くそぉぉ!」
嘘がバレた二人の世紀末スタイルなお兄さん達は、部が悪いと判断したのかそそくさと逃げて行った、愛理はそんな彼等を腰に両手を当てて呆れた様子で見送る。
「・・・、ありがとうございます、先輩」
「ふふっ、良いの、こう言うのも先輩の役目ってやつさ、さっお昼ご飯買おっか!」
「はい!」
二人の世紀末スタイルなお兄さんを退けた愛理とセシリアは嬉しそうな様子でハンバーガー屋に入って行く、ティナも慌てずゆっくりと二人に続いた。
「・・・?」
三人が車の近くでハンバーガーを食べているとブルンブルンと音を立てて、世紀末スタイルな方々が慌てた様子で逃げて行く、愛理達は何事かと顔を見合わせる。
「おいそこのべっぴんさん方!、大量の魔物が近付いてる!、さっさと逃げな!」
一人の世紀末スタイルなお兄さんが愛理達に大量の魔物が近付いていると教えてくれた、それを聞き愛理達は彼等が何故逃げているのかを理解する。
「どうします?、先輩、ティナさん」
「うーん、引き返すのは面倒ね・・・」
魔物達は大きな街には近付かない、その為魔物に町が襲われる前に大きな街に逃げ込むのがこの世界の常識だ、しかし任務途中な愛理達は引き返す時間すら惜しい。
「なら突破しますか!、セシリアは運転、ティナは車の中から砲撃、私は車の上に乗って近付く魔物を倒す、これで行こう!」
「あのー先輩、私、車の運転は正直自身がないです・・・」
「・・・、ダイジョーブ!、どうにかなる!」
「えー・・・」
愛理はセシリアが運転の自身がないと聞き一瞬硬直したがすぐに気を取り直しどうにかなると言った、セシリアはそんな愛理に呆れつつ仕方なく運転席に乗る、ティナはセシリアに同情しつつ助手席に乗り、愛理はサジタリウスモードに変身してから車の上に乗る。
「さぁ!、突破作戦の開始だよ!」
「「お、オー」」
ノリノリで作戦開始を宣言する愛理と、作戦が成功するのか不安でしかないセシリアとティナを乗せた車は、迫る大量の魔物へと突き進んで行く。




