四話
第22街
愛理はこの日だけの特例としてティナとコンビを組み、黒いアーマーデバイスを得たと言う組織を調べに来ていた、そしてこの第22街に来る前にこんなやり取りがあった。
「ええー!、先輩!、コンビなんですから私も連れて行って下さいよぉ!」
「ごめん、ほんとごめん・・・」
こんなやり取りを数十回繰り返した後何とかセシリアに納得して貰い愛理はティナの部屋にやって来たと言う訳だ。
「あの船?」
「ええ、移動する拠点ってワケ」
二人がこれから潜り込むのは巨大な潜水艦だ、潜水艦ならば海に潜れば居場所がバレにくい、まさにワールドセイバーなどの組織に追われる犯罪組織にとっては理想的な拠点と言えるのだろう。
「今は物資搬入中で地上に顔を出してるけど、それも数十分で終わるわ、急いで中に入りましょう」
「了解、あのコンテナの中に入り込もうか」
「ええ」
二人は丁度周囲に誰もいないコンテナの中に入り込み扉を閉めるとコンテナが運び出されるのを待つ、五分ほど待っているとコンテナが動き出し、二人は無事潜水艦の中への侵入を果たした。
潜水艦
ここは犯罪組織の潜水艦、愛理とティナは周囲に人の声が聞こえなくなった所でコンテナから外に出た。
「この格納庫の入り口近くに二人いるね」
愛理は音で格納庫の入り口近くに敵がいると察知した、それを今回の相棒であるティナに伝える。
「倒して来るから待っ・・・」
愛理が入り口近くの敵に向けて走り出そうとした所で、ティナが走り出して行った。
「なっ!?、貴様誰・・・」
そしてあっという間に体術で二人の敵を倒してしまう。
「終わったわ、行きましょ」
「う、うん」
敵を一瞬で倒したティナを見て愛理は、彼女は前日戦った時ですら本気ではなかったのではないかと疑いつつも何も言わず、彼女に着いて行く。
「黒いアーマーデバイスはこの船の研究室にあると、この組織の構成員を尋問して聞き出してるの、まずは研究室に行って見ましょう」
「・・・、うん」
二人は格納庫を出て、潜水艦内部にある研究室に向かった、格納庫から出ると通路、左右に伸びている。
「こっち」
格納庫から研究室への順路も尋問した構成員から聞き出していたのだろう、ティナは迷わず右に進む。
「敵が来るよ」
「分かってる」
愛理の優秀な狐の耳は敵の足音を捉える、ティナも察知していたようで、懐から球体の機械を取り出すと地面に放り投げ愛理を引っ張り近くの物陰に隠れた、数秒後、その場を通った敵は機械から放出された電撃に痺れ倒れる。
「便利だね、それ」
「でしょ?、・・・あげないわよ」
「むぅ」
電撃を発する球体の機械、何個か貰えれば今後の任務が楽になりそうだと思ったが、ティナはくれないらしい、愛理はその事に拗ねながら敵を物陰にへと隠す。
研究室
「何もしないわけにはいかないからね!」
事あるごとにティナが秘密道具を駆使し敵を倒して行く為、暇をしていた愛理は自分も活躍する為、研究室のドア近くにいた構成員に向かって行く。
「ハッ!!」
一人の構成員の腹に張り手を喰らわせ衝撃で彼の意識を奪うと、右から斬りかかって来る構成員の剣を魔力を纏わせた手で掴む。
「よいしょっ!」
彼の手から剣を奪い取ると、デコピンで額を叩き気絶させた。
「流石の動きね、接近戦なら手も足も出ないわ」
「ありがと」
愛理はティナの賛辞に返事をしつつ、二人の兵士を脇に抱え研究室の中に入る、研究室の内部にいた研究員達はいきなり入って来た見知らぬ二人に驚いた顔を見せる。
「動かないでね、ちょっとでも怪しい動きをしたら、容赦はしない」
「そこのあなた?、死にたくないのなら、何もしない事をオススメするわ」
二人は仲間を呼ばれないようにと、丁度何かのスイッチを押そうとしていた、研究員達を脅迫しておく、二人の脅迫を聞いたスイッチを押そうとしていた兵士は慌てて手を引いた。
「・・・」
研究員達を黙らせた二人は部屋の中を探り、ティナが黒いアーマーデバイスを見つけた、そしてとある記憶がフラッシュバックし暗い表情を見せる。
『君はこの多重世界初の・・・だ、誇るといい』
『君のお陰で、我々の実験は成功する!、実に素晴らしい!』
(チッ、思い出したくもない記憶を・・・)
ティナは頭を振りフラッシュバックした過去の記憶を振り払うと手袋をし、黒いアーマーデバイスを手に取った。
「お前達の思い通りにはさせない、その為にも破損してないこれをワールドセイバーに引き渡す」
ティナはワールドセイバーのエージェントである愛理に黒いアーマーデバイスを引き渡す為に振り返る、すると愛理は机の上に広がっている資料を漁っていた。
「何か情報はありそう?」
「一つだけ・・・、あなたが持つその黒いアーマーデバイスはAって人か組織が作ってるみたい」
「Aか・・・、勿論それだけじゃないのでしょうね、どう言う意味かしら」
ティナが言った通り、Aは人物名か組織名の頭文字だろう、しかしそれを示す情報は文字を見つけた資料には書いておらず、他の資料にも書いてなかった。
「さっ、目的の物は手に入れたし、帰りましょ」
「うん」
黒いアーマーデバイスを手に入れた愛理とティナは転移し、地球にへと向かった。
「・・・、アレを奪われただと?」
「申し訳ありません!」
数時間後、一つの組織が跡形も無く消え失せた、その原因を知る者はいない。
ティナの部屋
愛理は黒いアーマーデバイスを地球支部の来羽に渡した、若干マッドサイエンティストな彼女は受け取った瞬間に目を輝かせ速攻で解析を始めた、あの様子なら三日もすれば黒いアーマーデバイスの詳細が分かりそうだ。
「それで、頼みってなにかな?」
愛理は頼みがあると言うティナの話を聞く為、彼女の部屋に部屋にもう一度来ていた。
「私をワールドセイバーに推薦して欲しいの」
「良いよ」
愛理はワールドセイバーに推薦して欲しいと言う少女の頼みをあっさりと承諾した、その理由はティナの正体を近くで探る為だ。
「!、ありがとう!」
愛理の言葉を聞いたティナは嬉しそうに愛理に抱き着いた、この後愛理は明日奈にティナを推薦し、それを聞いた明日奈は上司に推薦状を書いて渡し、今回の功績もありティナは無事ワールドセイバー入りを果たした。




