三話
第42街
「!」
風を切る銃弾の音、その音を聞き付けた愛理はセシリアを突き飛ばし剣を抜くと振り返り様に剣を一閃、銃弾を斬り裂いた。
「狙撃!?、狙われてるのですか!?」
「みたいだね」
再び迫る銃弾、今度はセシリアが愛理をカバーし、物陰へと引き込んだ。
「どうします?、まだ撃って来てますよ、これしつこいタイプですよ?」
「うん、近くに行って話を聞くしかないみたい、ちょっと会いに行って来る、セシリアは待ってて」
「はーい」
セシリアは待っててと言われても周囲を伺い別の敵がいないか確認している、この様子なら一人残しても大丈夫だと判断すると物陰から身を乗り出しわざと姿を晒す、身を晒す事で分かりやすい的となり銃弾を撃たせて敵の位置を把握するつもりなのだ。
「来た!、そしてそこか!」
銃弾を横に飛んで躱し、ついでに敵の居場所も把握した愛理は、銃弾が放たれた場所に向けて駆け出した、数秒後再び弾が迫るが剣で叩き落としどんどんと狙撃手に向けて近付いていく。
「取っ、・・・た?」
狙撃場所にやって来た愛理は狙撃手を取り押さえる為に拳を強く握っていたが、すぐに緩める、敵がいないのだ。
「こっち」
狙撃手が声を発し愛理を呼ぶ、愛理が声がした方向を見た途端に銃弾を放つ。
「くっ!」
愛理はわざと仰向けに倒れ銃弾を避ける、更に次々と撃ち込まれる弾丸を転がって躱し、立ち上がると屋根の上の少女に向けて一気に距離を詰める。
「流石、強い」
「そっちこそ」
二人の少女は互いの頭と首にハンドガンと剣を突き付け止まっている、そしてこんな状況の中で互いの実力を評価し合った。
「何が目的なのか、話してくれないかな、この状態なら、トリガーを引けば私を殺せるあなたの方が有利、それをしないって事は、うーん・・・、私を試したって事?」
「そういう事、そしてあなたは合格、狙撃を躱し尽くされたのも、この距離に迫られて首に剣を突き付けられたのも初めてよ」
「それはどうも」
愛理は少女がこちらを殺すつもりはないと聞いて剣を引く、同時に少女もスナイパーライフルを背中に、ハンドガンを腰に戻した。
「私の名はティナ、手荒な試し方をしてごめん、手っ取り早くあなたの実力を把握したかったの」
「良いよ、私を試した理由を聞かせてくれない?」
「聞かせてあげるけど、誰もいない場所で話そう、ここでは誰かが聞いているかもしれない、付いて来て」
少女は誰にも話を気がれずに済む場所に愛理を案内するつもりのようだ、付いて来てと言って来た。
「分かった、でもちょっと待ってくれる?、あなたも見てたでしょうけど、仲間がいるの、どうせ二人きりで話したいんだろうし、支部に帰って貰う」
「ええ、待ってる」
愛理は少女に手を振ると、一度セシリアの元に戻り、彼女を地球支部に戻した。
第32街、ティナの部屋
「ようこそ、私の部屋へ」
「お邪魔します」
ティナは愛理を促し椅子に座らせた、椅子に座った愛理は部屋を見渡す、壁の棚に様々な種類の銃が置かれている光景は、とても自分と近い歳に見える少女の部屋には見えない。
「女らしくないって言いたそうな顔ね」
「べ、別に・・・」
正直、図星だった愛理はそっぽを向く、ティナはそんな愛理を見てクスリと笑うと、一枚の資料を愛理の前に置いた。
「これは・・・」
愛理は手渡された資料を手に取り読み進める、その内容は、とある組織が黒いアーマーデバイスを手に入れたと言う内容だった。
「その組織、調べたら何か出て来そうでしょ?、ほら、黒いアーマーデバイスについてとか、一緒に調べてみない?」
ティナは愛理を後ろから抱き締めると、愛理に資料に書かれている組織を調べようと持ちかけて来た。
「良いけど、こんな情報どこから?」
「秘密、でもいつか話してあげる」
愛理の疑問にティナは今は答えてくれないらしい、しかしいつかは話してくれるようなので、仕方なくなんとなくこの少女とは長い付き合いになりそうだと感じた愛理は、話してくれるのを待つ事にする。
「それで?、いつ実行?」
「明日」
「はやっ!、・・・まぁ良いけどさ」
ティナからの情報を伝えれば明日奈は、明日彼女と組織の調査を行う事を許してくれるだろう、その為にも一度、地球支部に戻る必要がある。
「明日、またここで落ち合うって事で、今日は一回、帰っても良いかな?」
「良いよ、ここであなたを待ってるわ」
「うん、それじゃまた明日」
愛理は手を振りながらティナの部屋から出て地球支部に戻った、そしてティナとの会話の内容を明日奈に伝え、翌日の黒いアーマーデバイスを入手した組織の調査の許可を得た。
愛理が居なくなった後、ベッドの眠るティナはうなされていた。
「やめて・・・、酷い事しないで・・・」
少女が見る夢は暗い過去の夢、幼い頃から一年ほど前の思い出したくもない記憶の夢だ。
「んっ・・・、またこの夢か・・・」
悪夢から覚めたティナは身を起こし痛む頭を抑える、数分も待てば痛みは引いて行き、再び横になる。
「・・・、私の復讐は始まったばかり、ふふ、久城愛理、あなたの力使わせて貰うわ」
暗い部屋の中で少女は歪みきった笑みを浮かべる。




