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金色の九尾lll  作者: ブレイブ
第二部一章、愛理とワールドセイバー
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十八話

ミドラーズ市


愛理とセシリアは最後の犯人候補である男の部屋の前にいた、そこでワールドセイバーの通信機が鳴り響く。


「お婆ちゃん?、どうしたの?」


「愛理!、あなたのいる街で毒ガス反応よ!、その街の中心地から、早く現場に向かって!」


「!、はい!」


どうやら最後の候補である男は犯人ではなかったようだ、街の中心地に真犯人がおり、既に毒ガスを散布したらしい、犯人はまだ現場にいるかもしれない、早急に確保に向かう。




二人は急ぎ街の中心地までやって来た、二人がそこで見た光景は、多数の人々が毒ガスを吸い倒れ、死亡していると言う光景だった、愛理はその光景を見て歯軋りをする、もっと自分が早く捜査をしていれば犯人を発見し、このような悲惨な光景を生み出す事はなかったはずなのだ。


「お嬢ちゃん!」


愛理が俯き自分の無能さを悔いていると、ガス博士が愛理に駆け寄って来た。


「お爺さん、このガス、消せる?」


「うむ、儂が発明した、この有毒ガス吸いとーるくん三号なら大丈夫じゃ」


「そっ、なら任せた!」


愛理はガスの中に走って行こうとする、しかしすぐにガス博士が引き止める。


「お嬢ちゃん、お主、もしかして馬鹿か?、何も身に付けずに毒ガスの中に入ろうとするとは、せめてこれを付けて行きなさい、十五分は持つ筈じゃ」


「・・・、ありがとう、セシリアは残って毒ガス除去の手伝いを、ガスマスクは一つしかないみたいだから」


「はい・・・」


愛理は老人に頭を下げ礼を言うと、ガスマスクを装着し、毒ガスの中に入り込んだ、先程から転移の魔法が使われた場所は把握していた、愛理はその場所に向けて一直線に走って行く。


「こんなに沢山の人を殺して・・・、絶対に許さない!」


愛理は犯人が転移した場所に辿り着く、その場所に立ち止まると胸に手を当てて、犯人が転移した先を逆探知する。


「良し、行ける」


犯人が転移した先は探知出来た、愛理は犯人が残した転移魔法を辿り、敵の本拠地にへと転移するのだった。



毒ガス犯のアジト


愛理は敵の本拠地にへと転移して来た、その瞬間後頭部に強い衝撃を感じ、前のめりに倒れる。


(待ち伏せだ!、くそっ)


後頭部を殴られ朦朧とする愛理は何とか意識を失わないように堪え立ち上がると振り返る、振り返った先そこには一人の男がいた。


「流石だねぇ、ワールドセイバーのエージェントは、今ので意識を失わないのかい」


「まぁね」


「フン、フラフラの癖に」


愛理の頭からは血が流れている、その為、犯人の男から見ても愛理が痩せ我慢をしているのはバレバレだ、しかしこの絶対的に優位に立っている状態でも犯人は愛理に何か油断出来ない物を感じており、油断はしないと心の中で決めた。


「・・・、一つ聞く、何故こんな事をしたの?、理由を聞かせて」


「何故って?、そりゃ僕が作った毒ガスを吸って人が死ぬ姿を見たいからさ、昨日も今日もたぁくさん、人が死んだねぇ、フヒヒ!、最高の光景だったよ!」


愛理は男の言葉を聞き、静かに怒りを燃やす、自分が見たいからと言って沢山の人を殺したこの男を愛理は絶対に許さない、絶対に逮捕する。


「あんたみたいな奴、私は絶対に許さない、絶対に捕まえて罪を償わせてやる!」


「ハハッ!、もっと楽しみたいんでねぇ!、絶対に捕まるものかぁ!」


愛理と毒ガス犯は同時に駆け出し、互いの剣をぶつけ合った。



(・・・、魔力操作が上手く出来ない・・・、スピリットフォームは使えないな・・・)


一撃振るい、そして攻撃を受け止める度に意識が飛びそうになる状態で愛理はスピリットフォームを使えるかどうか試してみたが、魔力操作が上手く出来ない、この状態では下手をすれば死んでしまう、スピリットフォームは使えない。


「ほらぁ!、毒ガスのプレゼントだ!」


愛理を剣で押し切り自分から引き離した男は毒ガスを放って来る、愛理は傷口から毒が入り込む可能性を考えガスを大きく避けて動き、男に近付く。


「ポイズンショット!」


男の魔法は毒の魔法、右手から毒の塊を愛理に向けて放って来た、愛理は躱そうとするがフラつきまともに毒の塊を喰らってしまう。


「ッー!」


左手に付着した毒は皮膚を溶かして行く、愛理は痛みに堪えながら左手で銃を構え撃つが男は余裕で躱す。


「ポイズンシャワー!」


男は今度は愛理の頭上から毒の雨を降らした、動きの鈍っている愛理は動けずまともに毒の雨を喰らってしまった。


「ッ、あ・・・」


毒の雨を浴び全身が焼ける感覚、頭を殴られた事により勝手にフラ付く体、愛理の体はこの短時間で一気にボロボロにされてしまった、限界を迎えた愛理は地面に倒れる。


「くっ、そ」


それでも愛理は何とか立ち上がろうとするが立てない、朦朧とする意識を立て直せないまま気絶してしまった。


「ふふ、ワールドセイバーのエージェントも僕にかかればこんなものか、それでは殺すとしよう」


男は気絶した愛理に迫ると剣を振り上げ振り下ろしたが、愛理の体は突然シールドに覆われ男の剣から守られた、男は慌ててシールドを張った者を探す、するとそこには一人の男が居た、その名は・・・?。


「この少女は私の将来の妻となる者だ、お前などに殺させたりはせん」


レベンだった、毒にやられ倒れた愛理を見たレベンは男を睨み付けると大量の魔法を叩き込み男を気絶させた、そして慌てて愛理に駆け寄る。


「すぐに治す、我慢しろ」


レベンは愛理に治療と解毒の魔法をかけ、傷を癒し毒を除去した、傷が癒えた愛理の表情は安らかな物となり、先程まで見せていた辛そうな表情ではなくなった。


「・・・、これで大丈夫だな、全く君はいつも心配させてくれるな・・・、麗羅に渡されたこれがなかったらどうなっていたか・・・」


レベンは愛理と別れた後、麗羅に彼氏なんだから持ってなさいよと言われ渡された、愛理も持つ対の札を持っていた、そしてその札に愛理の危険を知らせる文字が浮かんだ為、慌ててこの場所に転移して来たのだ。


「・・・、それではな愛理、また会おう」


愛理とは後半年は会わない約束だ、レベンは少し寂しそうな表情で、愛理の頬に触れると転移しこの場から去って行った。




「んっ」


数分後、愛理は目覚め立ち上がる、最初に体の確認をし、キズが癒えているのに気付く、そして男が倒れているのを見た、愛理はそれを見てこの場に誰かが来て、男を倒し自分の傷を治してくれたのだと判断する。


「・・・、分かるよ、レベンさん、私を守ってくれたんだ・・・」


愛理は周囲の魔力にレベンの物の魔力を感じレベンが自身を守ってくれたのだと思い、胸に手を当てて大好きな彼に感謝する。


「えへへ、やっぱり大好きだなぁ」


頬を染めニヤける愛理、側から見れば不気味である、不気味な愛理は気絶した男に近付くと手錠をかけてワールドセイバーに送った。


「・・・」


男を送った愛理は今回の件で自分の未熟さを痛感した、毒ガス犯には犯行を実行させてしまい、そして戦闘では負けた、そしてレベンに助けられた、駄目駄目である。


「まだまだだな、私」


自身の実力不足を痛感した愛理は、転移しセシリアの元に戻るのであった。



ミドラーズ市共同墓地


数日後、愛理は今回の犠牲者の墓の前に訪れ手を合わせていた、これが、これだけが自分が守れなかった人々の為に愛理が出来るせめてもの償いだった。


「あなた方の名前、私は絶対に忘れません、だからどうか安らかに眠って下さい・・・」


愛理は天に祈る、自分が守れなかった人々の冥福を。

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