九話
チーム72
「はーい今日も元気に、朝のワールドセイバー体操!」
と放送が流れ愛理とセシリアと明日奈は呑気に朝の体操を行なっている、この日もトレーニングをやっているので体操をしても意味がない気もするが気にせず愛理とセシリアは体操をする。
「いっち、にっ!、さん!、しっ!」
この体操、ホワイトローズが何故かやたらと気合を入れて行なっている、そんな聖剣の様子を不思議に思った愛理は何故あんなに気合が入っているのか明日奈に聞いてみることにした。
「ねっ、ホワイトローズはどうしたの?」
「んっ?、あぁ、最近お菓子を食べ過ぎて太って来たみたいなの、だから真面目に運動中、ほら、あの子用のちっさなルームランナーもあるのよ?」
明日奈は鞄から小さな妖精用のルームランナーを取り出す、愛理がスイッチを押してみると動き始めた、確かに本物のようだ。
「おお!、ちょうどいいです!、走ります!」
ホワイトローズは妖精用ルームランナーに乗ると走り始める、膨らんで来たお腹を引っ込める為に。
「と言うか、剣の精霊って太るのですね・・・」
「あら?、知らない?、最近自堕落な妖精が増えて、妖精のメタボ問題が深刻なのよ?、ワールドセイバーが、わざわざ彼女達を運動させる為に機械を送ったりしてるんだから」
「へ、へぇ」
明日奈が買った訳ではなく、ワールドセイバーの備品から拝借して来ただけのルームランナーの上で走るホワイトローズは気持ちの良い汗を流す。
妖精の里
「噂をすればなんとやらだね、私達が、妖精達に物資を渡す仕事を任されるんだもん」
「ですよねー」
妖精は森の恵みに深く関わっており、彼女らが働かなくなれば、森は枯れ果ててしまう、それはそれで世界の危機なのでワールドセイバーは自堕落になった妖精の精神を叩き直す為運動器具を送っているのだ。
自堕落になっても妖精は妖精、与えられた物に深く興味を示し、やがて運動にハマり痩せ、仕事をまた真面目にするようになるそうで、自堕落の妖精は徐々に減ってはいるが森が枯れ果てない程度にまだまだ沢山いる。
「はーい、みんな〜、良いもの持って来たよー、これで運動しよー」
まるで司会のお姉さんのような口振りで、そこら辺で寝転がり、菓子を食う妖精達に愛理は呼び掛ける、するとデブった妖精達は愛理達に興味を示し、のっそりとこちらに向けて飛んで来る。
「それなぁに?」
「あなた達の物だよ、ほらやってみて」
周りに集まって来た妖精達に愛理はトレーニング器具を見せ地面に広げる、妖精達は皆器具に興味を示し、セシリアが使い方を教えると早速ダ・・・、トレーニングを始めた。
「見たくない光景だ・・・」
「そうですね・・・」
デブった妖精達が腹を揺らし、汗を流しながら走る光景は酷い物だ、妖精とは可愛らしいものと言うイメージが染み付いている愛理とセシリアは今の妖精達の姿を見て夢が壊された気がして落ち込む。
「あそこの子達は大丈夫かなぁ・・・」
あそことは精霊界の事で、愛理が心配しているのは精霊界に住む妖精の事だ。
「その口振り、他の場所の妖精と会った事があるのですか?」
「まぁね、ちょっと心配になったから、見に行ってみるよ」
「ふふっ、太ってないと良いですね」
愛理とセシリアはここの妖精達のダ・・・、トレーニングを暫く見守った後、職場に帰って行った。
精霊界
愛理は精霊界にやって来た、巨大な木の根元に人影を探してみるがいない、愛奈はここにはいないようだ。
「あっ太ってない・・・」
精霊界の妖精達は太っていなかった、いつもと変わらぬ姿でふわふわと飛んでいる。
やがて彼女らは愛理の周りに集まって来て顔の周りをふわふわ楽しそうに飛び回る。
「みんな、他の場所に住む子達が太っちゃってるから、太らないようにしてね?」
愛理はふわふわ飛ぶ妖精達に太らないように警告しておく、それを聞いた妖精達は、太るー?、なんでー?、などと言っている、正直聞いてるのか聞いてないのか分からない。
「この子達は実際に経験してみないと分からないのよ、愛理」
愛理が理解してくれない妖精達に困っていると、愛奈が現れ、愛理に妖精達が理解してくれない理由を教えてくれた。
「そうなんだ・・・」
「そうなの、だから放っておいてあげなさい」
「はぁい・・・」
愛奈の説明を聞き、妖精達に太らないように理解させるのを諦めた愛理は愛奈の方を向く。
「久し振り、愛理、また大きくなったわね」
(・・・、そこ胸じゃないかなぁ・・・)
「うん、久し振りだね、愛奈さん」
愛理は愛奈の視線の先について気になりつつも挨拶を返す。
「あなたを見てると若い頃のあいつを思い出すわぁ、ほんとそっくりね、あんた達」
「あはは、よく言われます」
愛奈が言うあいつとは明日奈の事である。
「ふふふ、だからポニーテールにしてるの?、あなたの髪綺麗なんだから、下ろしてた方が良いのに」
愛理に近付いた愛奈は愛理のポニーテールを解くと櫛を取り出し髪をとかし始める、愛理の髪は愛奈が触る度に心地の良いシャンプーの香りがした。
「うーん、これは気分かなぁ、お婆ちゃんに似てるって言われてもあんまり気にならないし」
「あらそうなの?」
「うん」
アテが外れた愛奈は意外そうにしつつ、愛理の髪を触る、彼女が良く知る明日奈なら絶対に気にする事も愛理はあんまり気にしないようだ、愛奈はそんな些細な差も愛おしく感じ微笑む。
「はい、終わり」
「えへへ、ありがと」
愛奈の愛理の髪の手入れが終わり、手入れして貰った愛理は嬉しそうに愛奈に微笑みかける、愛奈は愛情がこもった表情で愛理を見つめ、その頬に触れる。
「愛理?、明日奈が全然来てくれないのよ、だからたまにはここに来るように言っておいてくれる?」
「分かった言っておく」
「うふふ、ありがとう」
この後、精霊界を後にし明日奈の家に向かった愛理は明日奈にたまには精霊界の愛奈に会いに行くように伝えたのだった。




