十二話
クーラの町、上空
明日奈は空を行く、空に浮かぶ飛空艇に向けて。
『マスター、敵飛空艇の砲門がこちらを向きました、迫る私達に気付いたようです、回避運動を推奨』
プラチナローズは明日奈が砲撃にさらされる前に回避運動を推奨した。
「いいえ、突っ込むわ」
しかし明日奈はプラチナローズの案を却下した。
『・・・分かっています、砲撃を躱し、あの飛空艇の後ろに回り込み、飛空艇のスラスターを破壊するつもりなのですね?ホント相変わらず無茶ばっかりです、マスターは』
「ふふふ、ごめんね?苦労かけちゃって」
明日奈がプラチナローズに苦笑いをしつつ謝った所で飛空艇の砲撃が始まった。
「プラチナローズ!モードブラスター!」
『Yes、モードブラスター』
ブラスターモード、又の名を高火力砲撃モード、プラチナモードの砲撃形態の一つである、明日奈はこのモードを使い視界に入った邪魔な砲弾を撃ち抜き、駆け抜けるつもりなのである。
「全速力で駆け抜けるわ!サポートお願いね!プラチナローズ!」
『Yes進路シミュレーション開始』
プラチナローズがシミュレーションを開始した途端、明日奈の網膜に理想的な砲撃回避の進路が表示された、今、プラチナローズはリアルタイムで砲弾を解析し、明日奈に理想的なルートを教えているのだ。
ジグザグとプラチナローズが示すルートを飛び砲弾を躱しながら進む明日奈、邪魔な砲弾は赤く表示され、明日奈は大型の銃となったブラスターモードのプラチナローズの銃口から銃弾を撃ち出し、邪魔な砲弾を破壊する。
「あぁ!怖い!」
『この行動を選んだのはマスターです、我慢して下さい』
明日奈は若干涙目になりつつ砲撃の雨を掻い潜り、遂に飛空艇の後ろに回り込んだ。
『飛空艇、スラスターをマルチロック、プラチナブラスター散弾モード、準備完了』
「了解!プラチナブラスター!発射!」
明日奈はトリガーを引きプラチナブラスター散弾モードを発射した、銃口から飛び立つ白金のレーザーはいくつもの光の筋に分かれ、飛空艇のスラスターに殺到し、全弾命中する。
推進機関を失った飛空艇は町の東の草原に向けて落ちて行き不時着した、明日奈は不時着した飛空艇の操舵室のガラスと上に降り立つ。
「さて、死にたく無いのなら投降しなさい」
明日奈は銃口に光を溜めつつ降伏しろと、飛空艇の乗組員達に勧告した、もし降伏しない場合はもう一度プラチナブラスターを撃ち、飛空艇を破壊する。
『わ、分かった!降伏する!』
「よろしい」
黒の空賊団は一人であっという間に飛空艇を落とした明日奈の圧倒的な強さに恐れをなしたのか、あっさりと降伏した、これで空の脅威は無くなったと言えるだろう。
「さぁ、後はあなた達よ、愛理、ラフォリア、あなた達の力を私に見せてみなさい」
明日奈は一筋の光の弾を出して、空に向けて放つ、光の弾は上空高くに行くと大爆発をした。
「これ、残して行くわ、変な事をしたら死ぬわよ?じゃあね」
変な事をしたら死ぬぞと黒の空賊団に見せつけた明日奈は、もう一つ光の弾を作り操舵室の前に浮かべて置くと、愛理とラフォリアの戦いを見る為に町に戻る。
クーラの町、南
「驚きました、あれがあなたのお姉さんの力・・・」
「えへへ、強いでしょ?おば・・・お姉ちゃん」
「はい!」
明日奈の力を見たラフォリアは思う、あの力を貸して貰えば、奴を殺せると。
(待っていて下さい、お父様、お母様、もうすぐ仇を取れます)
「良し!抜けた!後はあいつを倒すだけだね!ラフォリア!」
「はい」
愛理とラフォリアは戦闘を避け赤いラインが入った服を着た男に向けて走っていた、そして遂に空賊団の団員達の包囲網を抜け、赤いラインの男の前に辿り着いた。
「ほう、抜けてくるとはなぁ?お前ら何もんだぁ?」
「私は愛理」
「私はラフォリアです」
何者だと聞かれた愛理とラフォリアは名乗り武器を構える。
「ハン!俺と戦おうってのか!良いぜ!やってやんよ!このベルガ様の剣に斬り刻まれやがれ!」
赤いラインの男、ベルガは愛理とラフォリアに向けて迫って来る、愛理とラフォリアは二人でベルガの武器を受け止めると、彼を同時に蹴り付けた。
「チッ!コンビネーションはバッチリてかぁ?それなら崩してやるだけだ!」
ベルガは銃を取り出すと、乱射した、愛理とラフォリアは走ってそれを躱す。
「ストライクシールド!」
ラフォリアがストライクシールドを全面だけに張り、ベルガに向けて迫る。
「ハァァ!」
そして槍を突き出す、しかしベルガは剣でラフォリアの槍を逸らし躱した。
「セェイ!」
愛理はベルガの真後ろから剣に光を灯し下から振り上げる、ベルガは一歩前に出て躱し振り返りざまに斬撃を放つ。
愛理はベルガの横振りの斬撃をしゃがんで躱し足払いする、ベルガは足払いを足に力を入れる事で受け止めると、愛理に突きを放った。
「愛理!」
ラフォリアがベルガの剣を下から斬り上げた、斬り上げられたベルガの腕が跳ね上がり、隙が出来た。
「今だ!イフリート!」
愛理は前に飛び出しイフリートの名を呼びつつ隙が出来たベルガの懐に飛び込む、イフリートは愛理の呼び掛けに答え、愛理の剣に炎の力を授けた。
「紅き巨人の一撃!」
愛理は上から炎の一撃を放つ、既に躱せる距離では無かったベルガは体に手痛い一撃を喰らい、片膝を着く。
「やってくれたぜ、ガキども、このまま帰れると思うなよ?」
ベルガは怒りを込めた視線を愛理とラフォリアに送るベルガは魔力を解放した、その瞬間、愛理とラフォリアの体に震えが走る程の魔力が周囲に発せられた。
「ベルガ、やめておけ、ここは引くんだ」
その時だ、一人の男の声がした、愛理とラフォリアは、声がした方向を見る、そこには金色の髪をした男が立っていた、その顔を見たラフォリアは俯き震え始めた。
「あぁ?この傷はどう落とし前付けるんだよぉ?アルファルド!」
「良いから引け」
「チッ!わかったよ」
アルファルドに命令されたベルガは愛理とラフォリアに向けて舌打ちをしてから、引いて行った、地上部隊を指揮していたベルガが簡単に言う事を聞いたと言う事は、アルファルドと言う男は黒の空賊団の中でも相当な地位に属する人物なのだろう。
「ラフォリア?」
ベルガの恐ろしいほどまでの魔力を感じ勝てないだろうと判断していた愛理はため息を吐き、ラフォリアの方を見たが、ラフォリアが震えているのを見て彼女に声をかける。
「貴様ぁ!」
愛理が声を掛けた瞬間、遂に怒りを抑え切れなくなったラフォリアが、アルファルドに向けて飛びかかる。
「ククク、久し振りだね、今は無きグリメィス王国の姫、ラフォリア・グリメィス姫」
アルファルドはラフォリアの攻撃を剣も抜かずに素手で受け止めると、ラフォリアを姫と呼んだ。




