五話
ソリビカ王都近く、平原
聖遺物を手に入れたのなら完璧に戦力とする為変身は使えるようになった方が良い、その為愛理と麗蘭とホワイトローズは、変身の練習をする為、ソリビカ王都近くの平原にいた。
「それでは、麗蘭、その刀と意思を通わせてみて下さい、声が聴こえる筈です」
今回も、ホワイトローズが変身のコーチをする、付き添いとして二人に着いて来た愛理は、手頃な岩を椅子にして、麗蘭の練習の様子を見守る。
「意思を通わせる、こうかしら?」
麗蘭は村正に意識を集中させ声を聞いてみようとする、すると声が聞こえて来た。
『拙者村正!、ようやく話せたな、麗蘭殿!』
「え、ええ」
村正の意思は武士風の喋り方をする、しかし麗蘭は忍者である。
『早速、変身をしようぞ!、麗蘭殿!、拙者の変身名は、夜桜でござる!』
「わ、分かったわ、夜桜!」
変身名を村正から聞いた麗蘭は早速夜桜と唱え変身する、次の瞬間、麗蘭はモード夜桜へと変身していた、その姿は江戸時代の武士が着ていたような着物を動きやすい形に改造した物を見に纏い、腰に村正が装備されている、その姿はやはり武士である、しかし麗蘭は忍者である。
『うむよく似合っている!、これから拙者と共に立派な武士を目指そうぞ!』
「いやいや!、私、忍者だから!、武士じゃないから!」
忍者な麗蘭は村正の言葉についに我慢出来なくなり、村正にツッコミを入れる、しかしその姿はどう見ても武士である。
「あのね?、麗ちゃん、今の麗ちゃんどう見ても武士なの、忍者だとはどう頑張っても言えないと思うの」
「私も同意見です」
「うう、それでも私には一族の誇りがぁ!」
この後、愛理が変身する時だけでも武士だと認めよ?と説得し、麗蘭は涙目になりつつも変身している間は武士になると認めた。
ソリビカ王都
愛理は村正に一族の誇りをボロボロにされた麗蘭を慰める為、自宅近くのお隣さんに聞いた、美味しいスイーツを売っている店にやって来ていた。
「ほら、麗ちゃん、何にする?」
麗蘭と手を繋ぎ店の前に立つ愛理は、麗蘭に何を注文するか聞く、店はアイスクリーム屋である。
「愛理っ!愛理っ!、私はチョコアイスを所望します!」
「はいはい、私と一緒に食べよーね、それで?、麗ちゃんは?」
フワフワとメニューの前を飛んで食べたいアイスを選んだホワイトローズは愛理にチョコアイスを所望した、愛理はそれをやんわりと許可しつつ、麗蘭に何を頼むか聞く、すると麗蘭は俯いたまま、イチゴアイスを指差した。
「了解、買ってくるねー」
麗蘭が食べたいアイスを聞いた愛理は、チョコアイスと、イチゴアイスを買う為に列に並ぶ、麗蘭と麗蘭の頭の上に乗るホワイトローズは、嬉しそうに尻尾を揺らしながら列に並ぶ愛理を眺める。
「おいしー!」
「はい!、これは美味です!」
チョコアイスを食べる愛理は頬に手を当ててアイスの味に感動する、ホワイトローズも満足気だ。
「私も、欲しいぞ」
「はいどーぞ」
人型になったエクスカリバーもアイスを所望する、それを聞いた愛理はカップから多めに取ってスプーンを差し出す、エクスカリバーはパクリとスプーンを口に含み、食べ終わると満足したのか愛理の腰に戻る。
「麗ちゃん?、おいしー?」
「うん、美味しいわ、奢ってくれてありがとね?、愛ちゃん」
「えへへ、うん」
幼馴染な二人は甘いアイスをパクパクと食べて行く、余りの美味しさにアイスはあっという間になくなってしまった。
「懐かしいわねぇ、愛ちゃんとは、たまに会う度にこうして美味しい物を一緒に食べていたわ」
(そうだっけ?)「だ、だねー」
「・・・」
自分の話を聞いて明らかに怪しい反応をした愛理を麗蘭はジーと見る、愛理は口笛を吹きながら、そっぽを向く。
「嘘が下手ねぇ、あなた」
「う、嘘じゃないもん!」
「なら、言ってみなさいよ、十年前のパーティで何を食べた?、ほら言ってみて」
「昔すぎるよぉ〜」
十年前のパーティ、確かに麗蘭と遊んだ記憶はある、しかし何を食べたかなど覚えていない。
「ぷっ、ふふふ、まぁ良いわ、これで許したげる」
意地悪そうに笑う麗蘭は愛理の頬を抓る。
「痛いです」
「嘘つきなあなたにお仕置き」
「嘘ついてないもーん」
「ふふふ、つ・い・か」
まだ嘘を付いてないと言い張る愛理、麗蘭は笑いながらもう一方の手で愛理の柔らかい頬を抓る。
「ほらほらー、意地を張ってると痛くなるわよぉ〜」
「我慢するもーん」
この後、愛理は涙目になりつつも意地を張り続け、麗蘭が涙目になりつつも頑張る愛理を見て、笑いを堪え切れなくなり折れた。
浴室
夜、蒼狐が作った夕食を美味しく食べ、暫く仲間達と楽しく話した後、愛理はお風呂に入っている、ホワイトローズも一緒である。
「愛ちゃん、入るわよー」
「はーい」
浴槽で泳ぐホワイトローズを眺めていると、麗蘭が入って来た、愛理は浴室に入って来た幼馴染の胸部装甲を早速チェックする。
「・・・」
「な、何よ?」
麗蘭の胸部装甲は十五歳と言う歳の割に大きな愛理の胸部装甲より大きかった、胸部装甲の大きさで負けた愛理はガックリと肩を落とし、お湯の中に消えて行く。
「愛ちゃん、どうしたのかしら?」
「愛理はあなたにある意味女の戦いで負けたのです」
「?」
麗蘭は首を傾げながら体を洗い始める、浴槽の中でブクブクしていた愛理はお湯の中から出て来ると、浴槽から上がる。
「ふぅん、やっぱりあなた綺麗な足してるわね」
「そう?」
「ええ取っても綺麗」
「そうかなぁ?、じゃっ私、上がるねー」
「うん」
愛理は体を拭くと脱衣所を出て、自室である事務所に向かう。
事務所
事務所に入ると、先に風呂に入っていたラフォリアが既にベットの上でスタンばっていた、ポンポンとベットを叩き早く寝ようと催促している。
「髪乾いてないからだぁめ、尻尾の手入れもしなきゃ」
「手伝います」
お眠なラフォリアはブラシを手に取ると愛理の尻尾の毛の手入れを始める、愛理は彼女が尻尾を触っても怒らない、その理由は彼女がかけがえのない親友だからだ。
「あら、良いわね、愛ちゃんの尻尾の手入れをしてるの?、私にもやらせなさい」
そこに麗蘭がやって来て彼女もブラシを手に取り、愛理の尻尾の手入れを始めた、愛理はこちらも怒らない、こちらはそもそも小さい頃から堂々と触られて来た為、怒る気がないのだ。
「今手入れしていて思ったんだけど、レベンさんには触らせたりしてるの?」
「うんしてるよ」
「あらあら、お熱い事で」
愛理はレベンにも尻尾の手入れをして貰っている、彼は丁寧に優しくブラッシングしてくれて気持ちいい為、愛理は最近は彼にブラッシングをして貰うことが多い。
「ほら、終わったわよ」
数分後、愛理の尻尾の手入れは終わった、ラフォリアと麗蘭が手入れをした愛理の九本の尻尾の毛はつやつやとしており、とても美しい毛並みをしている。
「えへへ、ありがと〜」
二人に尻尾の手入れをして貰った愛理は嬉しそうに微笑みつつ、二人に感謝する。
「良いのです、髪の毛も乾いたようですし、寝ましょうか」
サッと愛理のベッドの上に寝転び、再びポンポンとしているラフォリアは、寝ようと誘う。
「はいはい」
愛理はラフォリアに返事を返しながら、彼女の隣に寝転ぶ、ホワイトローズは愛理が作ってあげたハンモックの上で既に眠っている。
「今日は、私も混ぜて貰うわ、良いわよね?」
「どうぞー」
「良いですよー」
「それじゃお邪魔するわ」
最近は毎日二人一緒に眠る愛理とラフォリアと、その中に新たに加わった麗蘭は、暫くベッドの上に寝転びながら話をする、そしていつの間にか三人共夢の世界にへと旅立っていた。




