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醜い悪魔の子  作者: トントン拍子
白い世界と醜い悪魔
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エピソード1  神木と呼ばれた木

この世界で、千年以上生き続ける、神木と呼ばれる木があった。

その木は豊穣の森と呼ばれる深く広い密林の中央に立っていた。

しかし、その神木と呼ばれる木も、千年前はどこにでも生えている小さな1本の木だった。


千年前の豊穣の森は、手入れされた木でいっぱいの森だった。

半径が5kmという広大な土地だったが、全ての木は人の手が入っており、成長した木は、生活の一部とするために切り倒しされていた。


神木と呼ばれた木も、最初は豊穣の森のちょうどど真ん中に生えた、ただの木であった。

新たに芽生えたその木も、普通に成長し大きく育てば、人間の手によって切り倒されていたかもしれない、そんな普通の存在だった。


そんな普通の木が普通じゃないと人間たちに認識されるようになったのは、ある夏の日のことだった。


いつものように人間たちは、丁寧に手入れしてきた木を伐採するため、ちょうど神木の近くまで作業に来ていた。

いつものようによきとのこぎりを使って伐採を始めていく。

この時神木は、2歳を迎えていた。

作業をしている人間の一人が、可愛らしく育ったその神木を見つけ、近くまで寄り添い、それを眺めた。


2歳の木にしては立派に育ち始めているその神木を見て、その人間はその神木が将来いい木材になりそうだなと思った。そしてそれはその場にいる全員が思っていたことである。

そして思ったことを素直に言葉に表して、言ってしまうのも仕方がない。

親睦を眺めていた人間は、その時の素直な気持ちを、こう言葉にしたのだ。


「こないにすくすく育つ木なら、きっといい普請の材料になるだべな。しっかり手入れして、上手に伐採してやらんと」


神木の将来を見越しての当然の言葉。しかし、その言葉を皆が聞いた直後、事件が起きた。


なんと、伐採途中の木が勝手に倒れだしたのだ。それも、本来倒れるはずのない方向へ、まるで無理やりに、なにかの力がはいいったかのように倒れだしたのだ。

倒れた木が向かう先は……、先ほど神木を眺めていた人間のところだった。

その人間は倒れてきた木を避けることもできず、そのまま下敷きとなってしまった。


そして、さらに驚くべき事態が続けておきた。

人もろとも倒木の下敷きになった神木が、急に成長し始めたのだ。

上にある倒木と人間を、巻き込むようにして。



神木は障害物をすべて吸収し、急激な成長を遂げ始めた。

下敷きになっていた人間からは、血の一滴も流れてこない。すべて神木が吸収しているようだ。

その光景はまるで命そのものを取り込んでいるような光景だった。そしてそれは不遜なことを発言した人間への警告であるかのようだった。


ほどなくしてその木には、時の王の手によってしめ縄が巻かれ、神木として崇められたが、人々はたたりを恐れ、その神木には近づかなくなった。そののち、豊穣の森全域が、人間の立ち入る場所ではないとして、人々は森から手を引いたのであった。


その後、神木がどのように育ち、どのような姿をしているのか。それは誰も知らないことだった。

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