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醜い悪魔の子  作者: トントン拍子
白い世界と醜い悪魔
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プロローグ

はじめまして。トントン拍子です。初めてのなろう投稿なので、誤字、脱字やシナリオの至らない点など数多くあるとは思いますが、最後まで見ていただけたら嬉しいです。個人的には、200話くらいまで続けるつもりなので、読者の皆様には飽きられないように最大限努力する所存です。投稿は不定期になるとは思いますが、どうか温かい目で最後まで付き合っていただけたら幸いです。

プロローグ


人里離れた森の中。自然の流れに身を任せ、自由に育った木々が生い茂る。

枝は所狭しとその芽を伸ばしている。


上を見れば枝と葉っぱで空はおおわれ、昼なのにその森は木々が織り成す影で暗くなっている。

わずかにさしこむ木漏れ日が自分の居場所を照らし出す。


この場所は、僕の安らぎの場所だ。

季節は春。少し暖かくて、気持ちのいい時期である。


ここ、豊穣の森は昔から神聖な場所として崇められている。

人間はこの森には決して入ってこない。

つまりこの場所は、僕が誰にも邪魔をされずに一人だけの時間を楽しめる。そういう場所なのだ。


何故、この森が神聖だと崇められているのか。

その理由は、、森の中央にそびえ立つ1本の大きな老木にある。

樹齢千年を超えるとされるその木は神木と呼ばれ、まだこの木が幼木だったときから人々はこの木を特別な存在として崇め、しめ縄を付けてこの木を祀った後は、人間の王様がこの森を立ち入り禁止の神聖な場所にしたらしい。


僕はその神木の前に立っていた。

神木だからといって、別段不思議な力を感じたりはしない。ただの普通の木だ。


普通に触れるし何の問題もない。僕から見れば、ただ大きく成長しただけの木である。


唯一ぼくが神木らしいと思うのはひとつ。個としての強さだ。

千年も生きてきた木としての強さがそうしているのかは分からないが、このあたりの天と地のめぐみは全てこの木が吸い取っているのだろう、周りには木どころか草の一本も生えていない。


そう、まさしくその木だけが天地の恵みを独占していた。


ああ、この木のように強くあれたらな、と僕はふと思った。

僕は家族の中でお払い箱だった。何をしても蔑まされる。罵られる。


愛する子供として接してくれたことなんてただの一度もない。

理由は単純。僕が醜いから。ただそれだけ。それだけの理由で僕は周りから避けられた。


生まれた時から今までずっと蔑まされてきた。僕には味方なんていなかった。ただの一人も。

そんなことを考えてこの木の前に立つと気分が憂うつになる。

それは僕が弱いから。


僕もこの木のように、一人でも、強い力を持てたらいいのに。そう考えてしまう。


ああ、嫌なことを考えてしまったな。

これじゃ何のためにここにいるのかわからない。

心安らぐ場所が、自分という存在の小ささに気づかされる場所になってしまう。


こんな気分になったらおしまいだと、僕はこの場を離れようとした。

その時、後ろからこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。


僕は慌てて身を隠した。

聴こえてくる足音は、2足歩行の生物のものだ。


この森には自分以外の誰かが入ってきたことなんて一度もない。

僕の家族やほかのみんなも、こんな暗くて気味が悪いところになんか、誰も寄り付かないのだ。


だこからこそ僕はこの場所を一人になれる場所として好み、誰も寄り付かないからこそこんな場所にいられるのだ。

それが今、崩れ去りそうになっている。


見知らぬ誰かの足音が、誰かが近づいて来るという事実が、僕の平穏を奪おうとしている。

神木の周りには、ほかの木はもちろん、草だって一本も生えていない。つまり身を隠す場所がない。


神木の半径20m以内に入るということは、つまりそれは周りに隠れている生物に姿を晒すということだ。


僕は木の後ろに隠れ、足音のする方をじっと見た。

息を殺し、音を立てずに、こちらに向かってくる足音の方を、ただじっと見つめていた。


だがそんな僕の警戒とは裏腹に、近づいて来る足音はまるで警戒心など全くないような、そんな足取りでぐんぐんとこちらに近づいてくる。


そして足音が大きくなり、その侵入者の顔を見たとき、僕は唖然とした。


そう、それは人間だったのだ。それも、まだ10歳前後の、女の子だった。


僕は目の前の状況に驚きを隠せなかった。

確かに聞こえてきた足音とそこから想像される生物の大きさとは一致している。


それでも、なぜ人間がここにいるのか?

ここは豊穣の森。人間が立ち入ってはならない神聖な森なのだ。


なのにこの年端もいかないいかにも純粋そうな女の子は、そんなことなど知らんと言わんばかりに当然のようにこの森に入ってきた。


いや、そうでもなかった。ここが開けた場所だからか、多少なりと周りを気にしているフシがある。

どうしよう。僕は迷った。


ここに人間が入ってきたということは、人間は禁忌を犯したということだ。つまり、他の人間もこの森に入ってきている可能性がある。


こうしてはいられない。人は群れる生き物だ。あんな小さな子供がひとりで森の中に入ってくる訳がない。


そう考えた僕は、急いでこの場を離れようとした。

ただ急ぐことだけを考えて行動した。

だから、冷静さを失っていた。

足元に小さな木の枝が落ちていて、僕はそれに気づかずに踏んでしまう。


パキっ    と、小さな音が響いた。


刹那、女の子が振り向き、僕を凝視した。

「だれっ!?」

これが、僕と彼女の最初の出会いだった。

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