1-6「選択肢は一択のみ」
「まぁいろいろ納得しかねますが、死んでしまったのは理解しました。それで、俺はどうなるんでしょう? 生まれ変わるんですか?」
「そこなんじゃが、本来なら三通りある選択肢の内、お主には選択肢が一つしか用意出来なんだ。その点に関しても、すまぬの」
「なんですか、その一択って?」
「まず順を追って説明させ貰おうかの。本来、お主のようなケース――まぁ、そもそもこんなケース自体が滅多にあるものではないがの。ともあれ、この場合、選択肢は三つ示せる。『蘇生』、『輪廻』、そして『転生』の三つじゃ。じゃが、お主の場合はその内『転生』しか選択肢が用意出来なかった」
「……え? 死んでからの蘇生もあり得たんですか?」
「うむ。寿命を待たずして予期せず死亡した魂に限られるがの」
「なんで、俺の場合は駄目なんです? 手違いなんですよね?」
「なんと言うか、やろうと思えば出来なくはないが、決して薦められたものではないと言うか……。その、先刻言ったように、今現在、お主の葬儀が進められておるわけで…」
かなり言いずらそうに言いよどむ女神様。
「…? ……あっ! もしかして、そうゆう事ですか?」
既に火葬済みで、もう俺の身体がない、的な?
「より正確には、現在進行形で火葬中じゃよ。燃え尽きてないから蘇生出来ぬ事もないが、やりたくなかろ?」
現実は思った以上に切実だった!
それって蘇生した途端、火達磨じゃん!?
生き返って、即行でここにリターンだよ!?
そりゃ選択肢から消えるよね!
意味ないもん!
「……ってか輪廻も不可なんですか?」
「それに関しては、予期せぬ死亡だった故に魂を輪廻の流れに加える余地がなくての」
定員オーバーで、あぶれた感じっぽい。
「ホントに選択肢がないっぽいですね。では、その転生について教えてください」
「転生とは、一言で言えばこことは違う別の世界に行って貰うという事じゃ。巷で言う所の異世界転生というやつじゃな」
「……異世界、転生…」
漫画やライトノベルをよく読む俺にとって、その言葉自体は馴染深い。
よくある剣と魔法のファンタジーって奴。
物語としては好きな部類だし、馴染深いのだが――――
「あまり、気が進みませんね…。もしかして、魔物とか居ません?」
「うっ…!」
図星というか痛い所を付かれて、女神様が軽く仰け反る。
この反応を見るに、相応に厳しい環境の世界なのだろう。
「やっぱり魔物とかも居る世界なんですね。……ちなみに、拒否権はないんですよね?」
「脅す意図はないんじゃが、『蘇生』、『輪廻』が不可、『転生』を拒否となると、魂魄消滅しか道がなくなるぞ?」
――魂魄、消滅?
「簡単に言うと、お主の存在を魂ごと、きれいさっぱり消滅させる。魂をどっちつかずに放置すると、悪性化――いわゆる悪霊とでも言うか、そうゆうモノへと変化し、最悪、邪神が生まれる原因になり兼ねん。悪いとは思うが、『転生』が嫌ならこの場で消えて貰う」
否応なしに、俺の進路は『転生』に決まった。