1-5「つまり銀髪(以下略)がやらかした、と」
「詳しい説明を求めます」
教師に質問する生徒よろしく、軽く右手を挙げて説明を求める。
「うむ。まず、儂ら神の役目から説明しようかの。と言っても、説明自体はそう難しくもない。世界を管理して潤滑に運営する事。無論、管理と言ってもいろいろとメンド…ううん! 大変な作業もあるが、言葉で言えばそれだけじゃ」
今、絶対、面倒って言おうとしたよな?
まぁ管理なんてのはどんな職種でも大変なモンだろうし、わざわざ突っ込まないよ、俺は。
――いちいち突っ込むのが面倒になったわけじゃないよ?
「して、その世界の管理に含まれるのが、生命体の、さらに突き詰めると霊魂の管理。輪廻転生という言葉を知っておるか?」
死んだ魂が巡り巡って再び肉体を得る、みたいな意味だったかな?
「左様。それが円滑に行われるようにするのも、儂らの重要な仕事という訳じゃ。平たく言うと、生き死にの管理ってところじゃな。誰が何時死亡し、何時、何処で、誰として生まれるかを定めておる」
おぉー、すげぇ神様っぽい。
「っぽいのではない。儂は正真正銘の神じゃ。まぁ、ともかく。そういった仕事の一部を、天使達に振り分けて、私らは幾つもある世界を掛け持ちで運営としておるわけだ。儂の身一つでは、十も百もある世界の全てを管理し切る事なぞ、出来やしないからの」
つまり、『世界』という企業を、社長たる女神様を陣頭に、社員となる天使と協力して運営している感じなのだろう。
「そんなわけで、霊魂の管理業務をアズエルに任せたんじゃが……」
あぁ、嫌な予感がする。
「よりによって、こやつ居眠りをした挙句、寝入った拍子にバランス崩して管理盤をひっくり返しおったのじゃ!? おかげで、お主のように死ぬ予定のない者達が大勢ポックリ逝く事態となり、その挙句、こやつめ、それを巧妙に隠しおってからに!」ゴチン!
つまり、仕事中に居眠りした上に、盛大なミスをやらかし、それを隠して誤魔化そうとした、と。
さ・い・あ・く! じゃねぇか!?
アズエル改め、銀髪(以下略)よ!?
「程なく発覚したが、既に大分手遅れでの。被害を被った世界が多岐に渡った事で照合が間に合わず、お主の場合、完全に後手に回ってしまったというわけじゃ。本当に、申し訳ないことをした」
そう言い、女神様は頭を下げた。
ちなみに、元凶たる銀髪(以下略)はと言うと、あからさまに目を逸らしてヒューヒューと下手くそな口笛を吹いている。
――拳骨の追加を喰らったのは言うまでもない。