表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/97

1-2「拳骨は素晴らしいフォームで」

 曰くユートピアなる新天地へ連れて行こうとする銀髪の美人さんに対して叱責の怒声と拳骨が脳天に降り注いだ。


 堪らず、美人さんが頭を押さえてのた打ち回る。

 恥も外聞もなくゴロゴロとその場に転がりながら悶えている様から察するに、相当痛かったと見える。


 ク〇ヨン〇んちゃんばりのゴツンという擬音が聞こえてきそうな素晴らしいフォームの拳骨だったしね。

 それこそ、素手で大砲でも撃てそうなくらいに。


 まぁ、それはともかく。


「ほっとかないで~、へるぷみ~~」


 ――――なにやら幻聴が聞こえる。

 無視しておこう。

 拳骨喰らって悶絶してる残念美人なんて居ないのだ。居る訳がない。居て堪るか!


「すまんな。まずはこのアホに謝罪させてから説明しようと思うてたんだが、説明すっ飛ばして処理しようとするとは思わなんだ」


 拳骨を放った人物が、本当に申し訳なさそうに言いつつ、目頭を押さえる。


 何だろう。ものすごい気苦労に気苦労を重ねたような哀愁が漂ってくる。


「ええと、お気になさらず。まだ、何もされてませんから」


 とりあえず、可能な限りフォローは入れておこう。実際、まだ何もされていないし。


「そう言って貰えると、ありがたい。アレには苦労掛けられっぱなしでな…」

「あ~……アレとは、コレですか?」

「人をアレとかコレとか酷くないですか!? …って言うか、頭がカチ割れるかと思いましたよ~」


 未だに痛みが尾を引いているのか頭を抱える足元の残念美女が、涙目で俺ともう一人を一まとめに睨んでくる。


「自業自得じゃろうが、戯け」ゴチン!


「痛ッ~~ッ!? 追い打ち掛けなくても良くないですか!? 死体蹴りは反則なんですよ!?」


「お主は死体でもなんでもないじゃろ!? 訳の分からん言い訳するでないわ!」ゴチン!


「パワハラが留まるところを知らない~~ッ!?」


 状況はよく飲み込めないけど、多分、普段からこの二人は似たようなやり取りをしてるんじゃなかろうか。

 漫才のボケとツッコミのような職人芸的な自然さで、片や頭をぶん殴り、片や涙目で文句を返している。


 ――――。

 俺、帰って駄目かな? 帰してくんないかな? 誰か、帰り道教えて~。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ