颯太の理想
小学校の隣にあるブランコと砂場しかない小さな公園。
遊びに来る子どもは、滅多にいない。子ども達は皆、小学校から少し離れているが遊具が充実した大きな公園へ行く。
しかし、毎週木曜日の午後五時前は、必ず魔女と小学生が砂場で会話をしていた。
六月の一周目の木曜日。梅雨入りし、雨の日が続いている。
時刻は午後四時五十分。今日も雨。
「先週、球技大会だったの」
結由子は水色の傘をさしている。
「あんた、球技大会とか役立たずそうだな」
颯太は真っ黒な傘をさしている。
「それがね〜私のおかげで優勝!」
「それは意外だ」
「魔法を使えば、私は無敵だからね」
「おいおい、それは反則だろ?」
「そうなの!だから他クラスの女子が、魔法使ったことをチクって、失格になって優勝取り消しになったのよね……」
「じゃあ結局、優勝してないのか?」
「そう……私のおかげで優勝したのに、私のせいで優勝取り消しよ。折角、クラスの皆といい感じになれたのに!」
「あんたは永久ボッチだな」
「うるさーい!てか、颯太くんはどうなのよ!もしかしてボッチー?」
「いやいや、ありえないから。舎弟いるくらいだし」
「舎弟って……ヤクザかよ!」
「違うから……ヤクザとかなったら、父さんに殺される」
「厳しいの?」
「まあね、検事だし」
「やっぱりお金持ち?」
「その話はノーコメント、他の話でお願いします」
「んーじゃあ……今日は恋愛について話したいわ、ラブトーク」
「うわー、ラブトークとか苦手なんだけど」
「えー彼女いるの?好きな人とかいるの?」
「俺の話、聞いてるか?てかどっちもノーだから」
「えーー、可愛い顔なのに勿体無いわ」
「……俺の理想は高いんだよ」
「あら!教えてよ理想」
「……顔は可愛いより綺麗が似合う感じで、肌は白くて、手足は細くて……髪は長めで栗色がいい。身長は低めで、服装は可愛い系かな」
途中、音楽が流れた。
「あ、性格は優しくてドジだけど……少し厳しい的な。勉強は数学以外出来て、体育は全然ダメで……」
「ちょっと、音楽鳴ってるんだけどー」
「え、じゃあ……また今度」
結由子が、颯太の理想を聞くことは二度となかった。
今回は、午後四時五十分からなので短め。
次回は夏休み編です。