11、交戦する月(その3)「観客たち」
「テロだと!?こんな田舎町でか」
町の中心部にある警察署の署員たちに対して緊急出動の命令が下ったのはその日の午後2時を回った頃であった。
予兆はあった。
遡る事二時間以上前に、怪しげな東洋人たちを山で降ろしたというタクシー運転手からの通報があったのだ。
数日前から町を騒がせている少女たちの連続失踪事件に警戒を強めていた警察は念の為、捜査員を丘の上の古城に向かう山道に派遣したばかりの事だった。
その直後、警察署に市民たちからの悲鳴のような通報が相次いだ。
「爆発が起きている」
「兵隊のような連中が銃を射っている」
「飛行機が爆弾を落とした」
普段ならイタズラと一笑に付すべき通報も、それが積み重なれば話は別だ。そして現地に派遣した捜査官からの無線もそれを裏づけた。
「正体不明の連中が銃火器を用いて暴れている。至急、武装した部隊の救援を請う」
平穏な田舎町で突如起きた騒ぎに警察官たちは面食らいながらも彼らの上級組織である州警察及び連邦警察局の機動隊に救援要請を行うと共に、自らも騒ぎの起こる古城近くの丘を目指してパトカーを走らせた。
「あの丘といえば、例の金持ちの日本人どもが棲み付いたっていう城があったな?」
サイレンを鳴らして急行するパトカーの車内で警部が唸る。
「えぇ、なんでも若い女性が二人で住んでいるとかで……例の失踪事件のガイシャたちと接触していたという目撃例も出ています」
「まったく、疫病神みたいな連中だな。だから余所者の外人は嫌なんだ」
丘までは車で飛ばせば幾許もかからない。
不意に、目に飛び込んできた光景を見て警部は絶句した。
「なんだぁ、こりゃあ」
思わず、停車したパトカーの車内で警部は呆然と目を剥いた。
「おい、俺たちはクルスクにでもタイムスリップしちまったのか?」
彼らが目にしたのは紛れもない戦場だった。
戦闘服姿の兵士たちが大砲を射ち、ライフルを手に走り回っている。
時折飛来する時代錯誤の軍用機が爆弾を落とし、互いに相手の後ろを取ろうと飛び回っていた。
「し……信じられません。なんですか、これは」
運転手も茫然自失の態で呟く。
「と、とにかく本部に連絡だ」
警部は無線機に手を伸ばし、そして再び言葉を失った。無線が混信して使えなくなり、外部との連絡がつかない。
上層部からの指示を仰ぐこともできず、パトカーで戦場に乗り入れることもかなわず、彼らは傍観する他に手の施しようがなかった。




