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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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開けては行けない箱

作者: yume
掲載日:2026/07/23

庭の隅に、見覚えのない箱が三つ置かれていた。


誰が運んできたのかも分からない。

宅配の伝票もなく、ただ古びた段ボールが静かに並んでいる。


「邪魔だな。」


父がそう言いながら、一番近い箱を持ち上げようとした。


思ったより重い。


「中身だけ確認してから動かすか。」


父がガムテープを剥がし始める。


その瞬間だった。


胸の奥が冷たくなった。


嫌な予感ではない。


本能が叫んでいた。


開けるな。


それなのに、目が離せない。


「……やめよう。」


そう言おうとした。


口は動かなかった。


父も何も言わない。


まるで何かに引かれるように、箱の蓋はゆっくりと開いていく。


中には写真が何百枚も詰め込まれていた。


知らない家族。


知らない子ども。


知らない老人。


どの写真にも共通していることが一つだけあった。


全員、こちらを見ていた。


写真の下には古びた人形、錆びた鍵、黒ずんだ数珠、焼け焦げた手紙。


どれも見覚えはない。


それでも触れた瞬間に理解してしまう。


これは、人が持っていてはいけない物だ。


背中を汗が伝う。


息が浅くなる。


「……これ、死ぬやつだ。」


理由は分からない。


でも確信だけがあった。


見てしまった。


関わってしまった。


もう遅い。


俺は箱を抱え、その場から走り出した。


捨てれば終わる。


遠くへ持っていけば終わる。


そう信じて走り続けた。


住宅街を抜ける。


公園の前を通る。


遊んでいた子どもたちが、一斉に俺を見た。


次の瞬間。


誰一人笑っていなかった。


一人が泣き出す。


それにつられるように、もう一人。


また一人。


最後には公園中の子どもが声を上げて泣き始めた。


母親たちは何が起きたのか分からず戸惑っている。


子どもたちは、俺ではなく——


俺が抱えている箱だけを見つめていた。


その時だった。


腕の中で。


ガサッ。


箱の中から音がした。


俺は走るのをやめた。


ゆっくりと視線を落とす。


閉じたはずの蓋が、数センチだけ開いていた。


暗い隙間から。


誰かと目が合った。


そこで目が覚めた。


夢だった。


そう思った瞬間、胸が苦しくなった。


頭が割れるように痛い。


そして、庭の方から。


段ボールを引きずるような音が、一度だけ聞こえた。

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