表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱ですが、ボスキャラのあなたを倒します  作者: すっとぼけん太
第一章 ブリザック城の決戦
4/54

 第二話

ニュルンベルグの負傷兵たちが、肩を貸されながら後方へ撤退してくる。


「弱い! 弱すぎるっ!」

ドンジョロが二メートル超えの金棒を振り回し、怒声を上げた。


そのとき、隣のギャザバーン兵が吹き飛ぶ。


「ん?」

顔を向けると、斧を担いだ巨漢が、ただ一人、砂煙の中を悠然と歩いてくる。


ドンジョロは男が目前まで来るのを待って、にやりと笑った。

「なるほど、お前が龍神鬼リュウジンキか」


戦場の中央で対峙する二人。

背丈は互角――だが、ドンジョロは太く丸く、龍神鬼は岩のように重い。


「俺は前勇者、ドン。だが、お前の兵は雑魚ばかりだな」

金棒を肩に乗せ、ドンジョロが見下ろす。


龍神鬼は無言のまま、微動だにしない。


「今、俺は運命を感じている。最強の四天王、お前を潰して、歴史に名を残す」


「あはははっ」

「……何がおかしい!?」


低く響く声が、戦場の空気を震わせた。


「最強の意味、分かってんのか?」


ドンジョロは鼻を鳴らして胸を張る。

「この金棒で、どれだけ敵を沈めてきたと思ってやがる!」


龍神鬼がわずかに口角を上げる。

「斧に張り付く肉片に、歴史なんか作れねぇーよ」


ドンジョロの頬がピクリと痙攣した。


「……てめぇ、言ったな」


「忙しいんだ。そろそろ終わらせようぜ」

龍神鬼が首を左右に傾け、骨がボキボキと鳴る。


「口だけは達者な奴だ。せめて、一分は立ってろよ!」


怒号と共に、ドンジョロが跳ねた。

金棒が雷鳴のように振り下ろされる。


「ぞぉりゃあああ! 粉砕っ!!」


百二十キロの鋼鉄が唸りを上げる。

空気を裂き、砂を巻き上げ、誰もが避けきれぬと確信した、その瞬間――


――ガツンッ!


地鳴りのような鈍音。

龍神鬼は右肩を引き、左肩を突き出していた。

その左腕一本で、ドンジョロの全体重を乗せた一撃を受け止めていた。


「なっ……!?」

ドンジョロの目が見開かれる。


龍神鬼の鉄甲をはめた左手が、ぎりぎりと金棒を押し返す。

踏み込んだ鉄靴が地にめり込み、地面には亀裂。

だが、その巨体は一歩も退かない。


「終わりだ」


右手の斧が音もなく走る。

ドンジョロが気づいた時にはもう、斧が脇腹に深々と食い込んでいた。


「ぐあ……っ!」


巨体が横薙ぎに吹き飛ばされ、十数メートル先へ転がる。


泡を吹き、白目を剥き、ドンジョロ――戦死。


龍神鬼は斧を肩に担ぎ直し、ぽつりと呟いた。


「手加減したつもりなんだがな……死んでねぇよな」


誰に言うでもなく投げたその一言に、周囲のギャザバーン兵たちは凍りつく。


龍神鬼は歩き出す。

砂煙の中を、大斧を担ぎ、誰にも止められることなく。


――ギャザバーン軍左翼、壊滅。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ