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最弱ですが、ボスキャラのあなたを倒します  作者: すっとぼけん太
プロローグ(仲間との出逢いは青空の下)
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 第一話

―――アデン領・グルーディオ城下にて。


挿絵(By みてみん)

目を覚ますと、湿った土と青草の匂い。

起き上がる気力もないまま、空を見上げてぼんやりと思う。


……ああ、今日もまた地面と情熱的にハグしてたらしい。

やがて億劫に半身を起こすと、遠くにグルーディオ城の外壁が見えた。


「……いてて。マジでアバラ逝ったか?」


アバラを押さえながら、俺――レイジはため息をついた。


ここは《《リムリア・オンライン》》。

かつてはゲームだった。だが今は、ただの現実だ。

ログアウトもなければ、再挑戦もない。

死ねば終わり、痛みは本物。

笑えねぇ“仮想世界ごっこ”が、現実になっちまった。


文明はとうに崩壊し、法律は意味を失った。

今のこの世界で生き抜く術は、二つだけ。


――モンスターを狩るか、誰かを叩き潰してその上に立つか。


すべては、《レベル》と《装備グレード》。

それが、この世界の“絶対ルール”だ。



「で、昨日はって言うと、またアホみたいなことをだな――」


狩場で、新米丸出しのエルフ娘がEランクモンスター・バジリスクに追いかけられてた。

もう絵に描いたようなドジっ子で、転ぶわ石につまづくわ、それでも必死に「だ、大丈夫!」って自分に言い聞かせてる。


見てられなくなって、俺は正義の味方ムーブをかました。


「これが最弱流・正義の一閃だぁっ!」


片手剣を振り抜いて、キメ顔ターン――のはずが。


「ふはっ!? 横からはズルいだろぉぉ!」


二体目のバジリスク。アバラがバキバキに砕ける、実に見事な空中回転を披露した。


地面に落ちたまま振り返れば、エルフ娘が泣きそうな顔でファイヤーボールを構えてる。


「ちょっ、まっ――そこ俺の尻だぁぁ!」


――ドカン!


「ぎゃあああ! 尻がっ、俺の尻がああぁぁぁ!」


尻をパンパン叩きながら地獄の痛みにのたうつ間にも、バジリスクの追撃。

そして、またしても地面と再会。


「それやめてぇぇぇっ!」


泣きそうな顔で、さらにファイヤーボールを構える彼女を、ギリギリで制止した。


そして俺は、這いつくばりながらバジリスクの足を切り裂いた。ズルいが勝ちだ。これでも盟主だ。 


「す、すみませんっ! わたし、ちゃんと助けるつもりで……」


声は震えてるのに、必死で真っ直ぐな瞳だった。


「大丈夫、大丈夫。これぐらい、日常茶飯事だ」


とびきりのヘラヘラ顔で笑ってみせた。


すると、彼女はポーチから小さな丸包みを大事そうに取り出し――


「これ、大したものじゃないんですけど……」


ぎゅっと俺の手に押し付けてきたのは、貴重なファイヤーボール玉だった。


「いや、それ、今の状況で渡したらヤバいだろ?」


「大丈夫ですっ!」


そう言い残すと、見事に転びかけながらも走り去っていった。


「……まったく。あれ、セシリアの真剣なときの顔にそっくりだな」


副盟主セシリア。あの一生懸命なドジ女王も、あれぐらい素直なら少しは……いや、ないか。


アバラ、マジで痛ぇ。


この世界で傷を癒すには、ヒール魔法かポーション――でもそれは応急処置にすぎない。

完全治癒には、《《宿屋での静養(眠り)》》が必要。

ただし、金がいる。もちろん、俺にそんなもんはない。

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