表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヒューマンドラマ・恋愛・童話・ハイファンタジー・SF等

春は忙しい

作者: みこと
掲載日:2025/02/13


本作は、本羽 香那様ご主催の「一足先の春の詩歌企画」参加作品です。

「忙しい…」


 私、志望する大学に合格したのは嬉しいけど、とにかく忙しい。


「何で?」


 学食のテーブルの前に居るのは、私の親友。彼女(親友)も学科は違うが、学部は同じだ。


「だって、履修科目は多いし、授業内容も難しいし」

「何言ってるのよ、貴女理系なのに入学した時、下手くそな短歌を詠んでたじゃない」


 そう。私は詩歌は知識も才もなく、とても下手なのに、時々短歌などを詠んで彼女に笑われる。

 まぁ、いわゆる「下手の横好き」というやつだ。


「えっと『サクラサク 大きな夢を 抱きつつ 潜った門に 心躍らせ』だっけ。その時は張り切ってたじゃない」


 何で覚えているのよ!


「そうなんだけどさぁ。その、あるじゃない。気楽な学生生活とか優雅なキャンパスライフとか」

「まだ入学して間もないじゃない。これから実験とかレポートとかもっと忙しくなるわよ」

「え〜」


 確かに、まだ入学して半月だ。


「しかし、あれには笑ったわね」

「え?」

「お花見」


 あああっ!

 私の黒歴史だ。


 先週末の休日。私は彼女からお花見に誘われた。

 近くに八重桜などの遅咲きの桜の並木道がある。

 その時、ちょうど見頃の時期だった。


 その桜の並木道の先には川沿いの遊歩道があり、この時期だけ屋台が並び、名前はないがお祭りのようになる。

 今まで受験、卒業、入学と何かと忙しかったので行くことにした。



 ◆



 二人で桜を観ながらブラブラ歩き、遊歩道で屋台を冷やかしていると、偶然に彼女(親友)のお兄さん達と出会った。


 そして、そのお兄さんの友達と思われる彼を見た時、私は心を奪われた。

 そう。一目惚れである。


 その後、暫く4人で行動する事になったのだが、私は心ここにあらず、という感じだった。


『蒲公英の 綿毛のように ふわふわと 風に漂う 私の気持ち』


 声には出さなかったが、この短歌が浮かんだ。


 そして、彼女(親友)のお兄さんと達と別れたあと、私の変化に気づいたのか「どうしたの?」と(彼女(親友)に)聞かれたが「何でもない」とごまかした。


 二人でベンチに座って、たこ焼きを食べながら、上の空であった私は、つい声に出してしまった。


「『お花見で 出会った彼に 一目惚れ 舞い降りてきた 春の訪れ』」


 それを聞いた彼女(親友)は大爆笑。


 失敗し(シクっ)た。


「やっぱ惚れちゃったんだ」と揶揄われた。


 自白したので認めるしかなかった。


「『舞い降りてきた 春の訪れ』って何なの?」

「いや、(恋に)ストンと落ちたわけじゃなくて、桜の花びらがひらひらという感じで……」

「春の季節に春が来たかぁ」

「いや、結句の「春」は季語じゃないし、そもそも短歌だから季語は特に必要ないし────」


 焦って意味不明な言い訳になってしまった。


 そして、不毛な争いは続いた。



 ◆



 と、いうことがあったのだ。


「コクったら?」

「はあぁぁあ?」


 いきなり何ていう事を言うんだコイツ(親友)は。


「実はね────」


 あれから、私の気持ちを知って家に帰った彼女(親友)は、お兄さんに彼の事を根掘り葉掘り聞いたそうだ。

 そして、彼に彼女はいない事。優しく、誠実な人物である事を聞き出し、それならと私に紹介しよう、という事だった。


 彼女(親友)には、既に彼氏が居るので、Wデートしたいだけ、だと思うのだが……。


「大丈夫。ちゃんとセッティングやフォローするから」

「えっと…」


 まぁ、親友である彼女とそのお兄さんの推薦だし、悪い人ではないのだろう。


 そこまで言うならと、「告る」のは約束出来ないが、(彼女(親友)に)従う事にした。



「はぁ」とため息をついた私はポツリと呟いた。



「これから、勉強や恋愛や、益々忙しくなるのかなぁ」







 おわり

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


親友(左)と、主人公(右)です。

挿絵(By みてみん)

自作AIイラストです♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
親友ちゃん、ナイスアシスト! 主人公ちゃんのぽろりとこぼれた短歌がまたいいですね。 そりゃあバレちゃうよ……笑。 かわいらしいお話にほっこり癒されました。 みことさん、ありがとうございました。
 暖かくも慌ただしい時期の恋模様が優しく描かれていて、みことさんらしい物語だなあ、と思いました。  主人公がなんとも可愛らしいです。短歌がいいですねえ。  イラスト含めて素敵なお話でした。  あ…
受験から卒業、入学、そして履修の始まりと、慌しくも充実した春の様子が、とても生き生きと伝わってきました。  短歌は短い文字数で気持ちや情景を表そうとする分、想いが凝縮されて、それで親友も覚えていてく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ