ゲームを楽しむ事
奇々怪々
一応はやってみる価値のある案を宮司にもらえたのは助かった。これを試して駄目ならまた考えるしかない。
牧場に行き、犬童さんに話を聞くが、わっしにはわかりませんと藤堂さんを連れてきた。
「カラスが嫌がる煙ですか。う~ん。聞いたことが有りませんが、藁を湿らせて煙が多く出る様にすることはしなくてはいけないかと思います。また、村人が村にいるなら刺激物は少なくした方が良いでしょう。」
あ~、村人居たな。積極的に助けたいとも思わないんだがな。見捨てられたし。ま、1人の為に全員巻き込むのも違う気はするが。どうするか。
「煙はいいとして、カラスが嫌がらないと離れてはくれんだろうしな。何かいい案はないだろうか。」
藤堂さんは考え込み、犬童さんが
「あの、ワサビを藁に塗ってみたらどうですか。ワサビは人には無害ですし。」
おお、犬童さん、それいただきます。
「ですね、刺激が強すぎる事はないでしょうが、嫌がるとは思います。効果が無い場合は違うものを試してみましょう。」
藤堂さんが明るく言ってくるので、藁の用意が出来るか聞くと、出来ると言われたので、任せる事にした。
準備に一日欲しいと言われたので今日はここまででログアウトする事にした。
現実に戻ってきて、リビングに行くと、そこには、ぶー垂れた娘がいた。
「パパ、一体どこでプレイしてるの。私が一緒にプレイしてあげるって言ってるのに。」
突然怒られた。いや、一緒にはしないと言っただろうに。
「神楽耶、あのな、一緒にはしないし、情報も出さないし、ゲームの話もしないで良ければ、ゲームを買ってやるって約束だったはずだが。」
静かに、恐る恐るいうと
「そんなのつまんないじゃん。せっかくパパと遊べるのに、一緒にしたい、一緒にしたい、一緒にしたいの~~~~~~。」
いや、3歳児か。
「そう言ってくれて嬉しいが、俺は他の奴とプレイしているし、そこに娘が合流するとか考えてもないぞ。自分で探し当てて、勝手についてくるくらいのガッツを見せられれば考えんでもないが。」
あ、甘い事を言ったしまったか?ニヤリと笑う我が子の顔が怖いんです。
「言ったね。言ったからね。パパ。名前はだいたい予想がついたから。」
な、なんだと名前がバレた、明菜か?いや、違うな、きっとファミリーネーム全員同じになったという事か。しまった。自分の名前はひねればよかったか・・・
「どうせ、なまえは、あいだ とらとかでしょ。パパの事だもん。」
ぐうの音も出ない。
「沈黙は肯定だよ。昔パパが良く言ってたよね。それだけ分かれば、パパの思考を読んで行けば良いだけだし、だいたいあたりはつけてるから、直ぐに見つけれると思うし。」
桜花達にこの爆弾娘を引き合わせたらどうなってしまうのか・・・背中に冷たい物が流れる。
「じゃあ、私、今から帰ってプレイするから、パパは待っててね。」
言うだけ言って娘は嵐の様に去っていった。
「あなた、どうするの。」
ヒィィィィ、突然後ろから嫁が声を掛けてくる。
「あ、明菜居たのか。というかいつから居たんだ。」
「名前はだいたい予想がつくってあたりからね。あの子、あなたの事だとほぼ100%把握してるから、見つかるのも時間の問題よ。」
首を振りながら言う。なんであんな風育ったしまったんだか。と小声が聞こえてくる。
「合流したら血の雨が降るかもしれん。その時はそっとしておいてくれ・・・」
諦め80%、何とか見つかりませんようにとの希望が20%くらいだな。
「明菜こそ日和と合流するのか?」
「ゲームの話はしませんからね。私もこのゲームが楽しくなってきたから。あなたが敵になった時に情報が筒抜けじゃダメでしょ。」
おぉ、嫁が俺がづっと言い続けてきたことを理解してくれたようだ
「そういう事だ。もし、合流できればゲームの話を家でする事は解禁になるんだろうが、その前に神楽耶がやらかしそうでな・・・」
「その時は家族会議ね。買い与えたあなたが、甘かったのよ。私を含めてね。」
そうですね。明菜、お前の分は強制だっただろとは言わない。言えない、言っちゃなんねぇ。
「仕方ないな。神楽耶がやらかした時は本当に家族会議をして、方向性を併せるしかないな。」
「へんに深刻な話になってるわね。たかがゲームでしょ。真剣になる方がどうかしてるわよ。」
確かにそうなんだが、違うんだよ。明菜たちが思っているゲームの本性は違うんだよ。
「ま、そうだな。先の事は分からんからな。とりあえず今日はインするなと俺のカンピューターが言っているから、飯食ったら寝るわ。」
「あら、いい御身分ね、分かったわ。すきになさい。」
布団の中で俺は頭を抱えるのだった。
仕事も終わり、家での用事(家事の食器洗い)もすべて終わせてログインする。隣は既に稼働中だった。
藤堂さんの所に行き、藁を受け取る。かなりの量になるからと、運びやすい様に荷台に乗せておいてくれた。このまま燃やせばいいですよと言われ、荷台を引いて、かの村へ向かう。
村はカラスに覆われ、黒い山の様になっている。カァカァギャーギャーとカラスの鳴き声だけがこだましている。はっきり言ってかなり不気味だ。風上に移動し、藁に火をつける。中々煙が出てこなかったが煙が出始めるとどんどん煙が出てきた。
なぜか火薬の臭いも混ざっている気がしたが、ワサビの強烈なにおいが鼻につき涙が出そうになる。
煙が村の方に流れていき、村が煙に包まれる。それまで動きのなかったカラスたちがギャーキャーと騒ぎ出し、一斉に村から離れる。村の上空をカラスが旋回するあの悪夢のような光景が再び目の前に。
カラスは煙の元のこちらに来るかと思ったが、まったくこちらに来ることはなく、ただ村の上空を飛び続けるだけだった。
見ている方は不思議というか、異常な光景に思えてならない。散っていくわけでもなく、煙が晴れれば村を襲うのだろう事が自然ではないなと。
そうこうしていると、村人がゴホゴホ言いながら建物から出てきて、村の外に出てくる。しかしカラスは村人を襲うことなく。ただ上空を旋回しているだけだった。
「あの煙はあなたが?」
長老風の年配の方が声を掛けてくる
「依頼を受けた者です。この状況は俺が作り出したことは間違いありません。伝えずに申し訳なかったです。」
「とんでもないです。私たちはカラスに閉じ込められ、あのままでは飢え死にするか、カラスに襲われて死ぬしかなかったのです。」
ほっとしたように話をする。
「村を捨てるおつもりで?」
「あの状況では・・・」
悔しそうにつぶやく
「一旦城下町に避難だけしておいてください。依頼が達成できれば、村に帰る事も出来るでしょうから。」
俺がそう言うと、長老風の方は、そうします。と村人を纏めて城下町の方へ行こうとした、その時
「やっと、でてきおったか。」
声のする方を見ると、そこには黒いボロボロの服を着ている小さいおっさんがいた。
「わが恨みを思い知るが言い。何もしていない我を、お前たちは石に封印したのだ。」
えっと、村人全員がポカーンとしてます。
「な、なんじゃ、その態度は!忘れたとは言わさんぞ!我に見覚えが有ろう!」
あ、察した
「あ~、横から悪いが、多分お前を封印したのはこの人達じゃないと思うぞ。」
「何をぬかす。こ奴等でなければどこのどいつが我を封印したと言うのじゃ。」
凄い形相で近づいてくる。
「おまえ、封印されているようには見えないし、元気いっぱいに見えるんだが?」
「我は隠形となって恨みを晴らしに来たのよ。こやつらに騙され、封印された無念が我を隠形に変えたのじゃ。」
おや、聞いた話と違うようなんだが・・・
「騙されたとは穏やかじゃないな。一体何が有ったんだ?」
「カラスに農作物を荒らされ、困っていると言うから我の術でカラスを追い払ってほしいと願われたのよ。そしてカラスどもを封印石に封印させた後に、こ奴等は事もあろうに我を封印石押し付けて我も一緒に封印しおった。
報酬が惜しくなったのであろうよ。」
そりゃひどい話だな。
「そりゃ酷いな。報酬って何だったんだ。」
「報酬は村娘一人を我によこせと言っただけじゃ。」
相変わらず鬼気迫る表情で吠える様に言ってくる。
「ふむ。一人だけか。その娘って村長の娘だったりするのか?」
「いや、誰の娘など指定はしておらんわ!ただ、我は伴侶を用意して欲しい。そして、出来れば村で生活させて欲しいと願っただけじゃ。何が悪い。カラスを封印した。しっかり依頼は達成させたのじゃ。なのに、こ奴等は事もあろうに我を封印したのじゃ。」
なんか、寂しい話になって来たな。こいつを討伐するのが気の毒になって来たぞ
「それな、もう誰も覚えていない程昔の話だぞ。しかも、違う話になって伝わっている。」
ま、村人が自分たちの都合のいい様にした話が伝わっているんだろうがな。
「な、なんと!こ奴等はあの村人の子孫という事か。」
あ、それも違うな
「いや、多分その村はもうなくなっているぞ。この村は出来てまだ間もないみたいだしな。」
「なぜそんなことが分かるのじゃ。お前も我を騙すつもりであろう。問答はもうやめじゃ!まずは貴様から屠ってくれる。」
鬼気迫る顔のまま俺の方へ突っ込んでくる。だが、従動物達が一斉に襲い掛かり手足に噛みつき、黒いボロボロの服をはぎ取ってしまう。
服の下からはやせ細ったからだが見える。目だけがランランと輝き、口でブツブツ何かを唱えている。
「ハッ!」
と多いな声を出した後、男の体が大きくなり、筋肉が隆起した立派な体躯に変わる。従動物達は手足を振っただけで振り払われてしまった。
これは討伐するには骨が折れそうだな。俺は刀を抜き、男に対峙する。男は拳を振り上げ俺の頭を狙い振り下ろす。遅い。そんなものには当たらないと左へひょいとよけると、よけた先に足が飛んでくる。
もろに蹴りをくらい吹っ飛ばされる。蹴られたのは分かるが、振り下ろした拳をよけた直後に蹴りとか読めかった。ダメージは体力ゲージの四分の一を削り取ていた。あと三回蹴りが入れば終わる。拳の攻撃もきっと同じくらいだろう。まずい、レベルが違いすぎるんじゃないか、これ。
「ぐぅ、効いた。今度はこっちの番だ。」
あれ、思考と言葉が合ってないぞ、しかも体も勝手に動いてないか?俺の体を誰かが操っているのか、俺では出来ないような動きで、男に切り込んでいく。
刀で切り付けているのに、男はそれを普通に腕や足で防御している。刀が通らない。嘘だろ、硬すぎるだろ、こいつの体。一体どうなっているんだ。従動物達も爪を立てたり、噛みついたりしているが全く聞いている様子が無い。
俺の体の主導権を誰かに奪われているのか勝手に動いている。切っては弾かれ、相手の攻撃をよける。よける時に連続で攻撃が来ないか確認してよけていく。
段々と思考と、体の動きがシンクロし始める。
刀を横に凪、体を刀に振り回されないようにして、蹴りを出してくる相手に対して蹴り足の上に乗るように動く。
蹴り足に乗り、男との間合いを詰め、刃を目に突き立てる。どれだけ硬かろうと目玉は柔らかいだろ。
男の目に刃が吸い込まれる。大きな悲鳴が上がり、男の体がしぼんでいく。
「なんじゃ、その刀は、我に、我の体にある力を飲み込んでいる。やめろ、我の負けじゃ、刀を抜いてくれ。頼む、このままでは冥府に落ちてしまう。」
男は叫びに似た声を上げる。
「後生じゃ、我はまだ冥府に行きとうない。」
「人を殺そうとしておいて、自分は死にたくないってのは都合が良すぎないか。諦めて土に帰りな。」
そう言って俺は刀を更に押し込む。
その時、そこまで。っと声がかかる。は?なんだ?と声の主を見つけ、俺は大人しく刀を引き抜いた。
「宮司さん、あなた、なんでこんな所に居るんですか。」
俺が疑惑の目を向ける。
「申し訳あ有ません。この者は私の弟子でして。」
男が宮司さんを見た瞬間に、全力土下座をしているではありませんか。もう、何が何だか訳が分からない。はい。情報処理能力の限界に達しました。
その後、宮司さんの話になり、実は宮司さん神らしい。神と言っても下級の神らしくそこまでの力はないらしい。修験者なんかの最終目標が神になる事だと説明された。うん。ゲームだ。現実じゃない。設定だ、設定。と小声で呪文のように繰り返す。
この男の名前は八田と言うらしく、神になる修業がつらく、還俗したいと言っていたらしい。で、件の村の依頼を聞いて、自分は還俗しますと勝手に出て行ってしまったらしい。出て行った後の事は宮司さんが言っていたように伝わって、悪さをしたのならと放置したそうだ。
しかし、俺達の話していたのを聞き、流石に弟子が可哀そうになり出てきたんだとか。
大神に仕え、八田君の事も忘れていたが、俺が現れた事で思い出したらしい。ひどい話だ。
で、最終的に、八田君は邪気にまみれているが、神の反対側に限りなく近い状態らしく、これから修業をして神にさせるそうだ。さらっと、とんでもない事を言ったぞ、この神。七人岬みたいなものにでもなっていたら目も当てられないぞ、マジで。
「こんなお願いをするのも何なんですが、ここにお宮を作っていただけませんか。谷田を祭っていただけると、それだけ谷田が神になれる日も早まると言うものです。私の神社に鳥居と、社務所を作っていただかなくていいので、お願いできませんか。」
腰がえらく低い神だな。約束やぶれるかよ
「いえ、鳥居も社務所も約束通りに建立します。ここに谷田神社を作って祭らせてもらいますよ。そうですね、カラスの神様って事にしましょう。そうして、カラスにこの村を守ってもらうのはどうでしょうか。」
「いやはや、なんとも。私もあなたの行いに対して何かしらのお返しをしないといけませんね。何か考えておきますので楽しみにしていてください。
谷田、お前は相田様が言ったようにカラスの神となり、この村だけでなく、相田様の領地を守って差し上げなさい。」
あれ、カラスの神様って他に居たような・・・ヤタガラスだ。ん、谷田・・・ネタか?これ。
「村人には大変ご迷惑を掛けましたが、そういう事なので、ぜひお参りをしていただければ。」
いや、いい笑顔で村人に有無を言わせぬ圧を掛けるのやめましょうね。てか、これ神話になるんじゃないの、人沢山集まってくる奴じゃないの?でかい町が出来る未来がチラッと見えた気がするんですが、もう色々手遅れですね。
大団円とは程遠い解決になってしまったな。こんなんばっかりだな、俺の依頼って。おかしいだろ・・・
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