ゲームの・・・
家でのお話からの国盗り
早晩寒さが厳しくなり、妻の目線も最近冷たいものになっている事に気が付く。ゲームで何かあったのだろうが、家ではゲームの話をする事を禁止している。情報は守り通すつもりだ。味方になればとも思うが、ゲーム内でも尻にひかれたくはない。子供たちもゲームを始めているようだが、連絡を取っていないから何処にいるのかさえ知らない。これは妻も一緒なのだが。
ただ、息子は何となくだが妻と合流してゲームをするんじゃないかと思っている。妻が見ていても分かるくらいには息子離れしていないと思うのだ。そういう俺は娘離れをしていないが、ゲームで一緒になると甘やかしまくる自信しかないので、一緒にプレイは出来ない。いや、してもいいのだが、常清達に見られたくはない。
今日も妻は仕事に行きがけに
「あなた、ゲームの事少しでも話をしちゃだめ?私の話を少しでもいいから聞いて欲しいんだけど。」
かなり弱っているのが分かる。会社経営をいてプレッシャーへの強さや起きた事のリカバリー能力はピカイチだと思っている。
「ゲームの進行やその他の情報に触れない事なら少しは聞くが、どうした?お前らしくもない。
帰ったら待っててくれ、話を聞くから。」
そう言うと目を輝かせて
「約束よ。行ってきます。」
元気になって出て行った。うん。さっきのは必殺弱ったふりだな。むぅ、また引っかかってしまった。少しくらいの話なら聞いてやろう。何なら少しくらい・・・いや、駄目だな。あ、息子と娘のプレーヤーネームくらいは聞いておこう。
会社も終わり、今日も安定の定時退社。役職が有ろうが構わずに退社しておる。仕事は迅速に、時間内に終わらせるのが社会人。という先輩の教えをしっかり守っているのだ。
郊外の家に帰ると妻は居間でくつろいでいた。
「今日は早いのね。私の為に早く帰ってきてくれたのかしら。」
いつもこうなら一緒にプレイもできるものを・・・
「そうだな。で、話とはなんだ。」
言いながら今のソファーに腰を下ろし、背広を脱ぎ、ネクタイを緩め、靴下をポイッと投げる。
「いつも言ってるでしょ、背広はハンガーにかけて、ネクタイはしわにならないように直ぐにネクタイ掛けに、靴下も脱ぎ散らかさないで洗面所の籠に入れってって言ってるでしょ。」
・・・俺は子供じゃない。
「何回言っても治らないんだから。」
と言いながらも妻は、背広をかけ、ネクタイを奪ってかけ、脱ぎ散らかした靴下はそのままにしている。
しかなく、靴下だけは自分で籠の中に入れに行く。ついでに着替えもしてしまえと、ズボンを脱いでそのまま放置。
「着替えてきたのね。で、ズボンはどこですか?」
あ、はい。自分で掛けます。目が怖くなってきた。
そんなこんなして話を始める。
「私がいた傭兵団から首になっちゃって。」
え?勝利の女神とか言われてなかったか?情報収集を行い、検証。そして最適解を導き出し勝利に貢献していたんじゃなかったか?
「悪い、いま、なんて言った。すまん理解が追い付かないんだが。」
妻も理解できないわ。と両手を挙げてお手上げのポーズをする。
「ちょっと私が気付いた事があったんだけど、最近傭兵団に加入した子と用事を済ませていたらね、その子が町人を馬鹿にした態度を取ったから、やめなさいってたしなめて、傭兵団の団長にもそのことを伝えたの。」
うん、当たり前のことだな。町人は情報収集に役立ったり、個別の依頼をだしてくれるからな。しかも当たればいい報酬を手に入れることだってできる。
「それで、その団長はどんな見解を示したんだ。」
妻が下を向き寂しそうにポツポツ話をし始める。
「団長が言うにはNPCなんてプログラムでしかないんだから、どんな対応をしても一緒だ。プレイヤーと同じように扱う必要はない。って言うのよ。わたしは個別に話をしたことがあったから、プログラムなんかじゃなく、感情もあるんじゃないかって思ってたのよ。
それで、その事を言うと、馬鹿にされて、今まで私が作戦の立案や細かい事を言ってきた事が、段々気に入らなくなって来ていたそうなの。
団長は自分なんだから余計な口は出すなって怒り始めちゃってね。私は皆の為になるならって頑張っていたのに、その言い方はないんじゃないか?って言ったら、そんなことは頼んでないし、あんたが勝手にやった事だろ。もう傭兵団も大きくなって、あんたが居なくても大丈夫なんだよ。それ以上何か言うなら出て行ってくれて構わない。って。私あきれちゃって。」
あ、なんとなくわかった。顔に出てしまったんだろうな。馬鹿にした目で見つめるアレを・・・
「あぁ、なんとなく理解した。明菜があきれ顔をしたとたんに怒りだして首にされた。って事だろ。」
妻はびっくりして俺を見て
「なんで分かったの。そうなのよ。いきなりクビだっていわれて、その場で傭兵団から解雇されたのよ。」
はい、しっかり情報を漏らしました。傭兵団は団長が相手の了承を得ずに解雇が可能っと。
「明菜。しっかりゲーム上の情報を一つ漏らしたからな。だからあまり話をしたくはなかったんだが、それはもういい。そいつの名前を教えろ。切り刻んで海に捨てて魚の餌にしてやる。」
俺の女を悪く言っていいのは俺だけだ。ガキが・・・いかんいかん冷静になれ、俺が情報を吐き出してしまいそうになる。
「あなた、嬉しいけど、領土や領地、大名の事は言っちゃいけないんでしょ?」
「そうだったな、悪いな。ちょっと感情的になった。で、明菜はこれからどうするんだ?多分だが、日和と一緒にプレイするつもりなんだろ。」
「よくわかったわね。私の情報は日和に伝えてるわ。そのうち連絡してくれるでしょ。」
あいつが最初から連絡するとは思わないがな。
「日和の事だ。ゲーム内で明菜、いや生駒を探し回っているんじゃないか。」
明菜の顔が、ああっとなる
「確かにあの子はそういうところがあるわね。」
なぜあんな考えなしになってしまったのか・・・
「考えるよりも先に体が動くタイプだからな。いま仲間の一人に親近感を覚えていた事に納得したな。」
「へぇ、あなた仲間がいるのね。」
明菜は特に変わった様子もなく言っている。が、女だとバレたらどうなる事やら。と、いうかうっかり情報を流しているじゃないか。ただし、配下になっているとは思わないだろう。少し桜花の事を離しても良いか。ゲーム上の情報には注意して話をしよう。
「ああ。最初の仲間だな。日和と同じで考えるよりも先に体が動くタイプだな。見ていると、息子を見ている気分になるんだよな。似ても居ないのにな。不思議だよ。」
よし、情報は漏らしてないぞ。
「そうなのね。私は人を見る目が無かったのね。」
少ししょげている明菜が小さな声でつぶやく
「プレイヤーは顔が見えないからな。昔の掲示板の様に自分の発言がどうなるとかはないから、ゲーム内ではどうしても、そんなやつも出てくるんだろうな。犬に噛まれたくらいに思って良いと思うぞ。
俺は見つけ次第切り刻むけどな。」
明菜が嬉しそうに
「あなた。うれしいけど、あの傭兵団の人数凄い事になっているから、返り討ちにされちゃうわよ。私が鍛え上げた子も他にもいるんだから。」
機嫌が直ってきたな。
「明菜が鍛えたのか。そりゃ強敵だ。」
二人で笑い合い、ゲームタイムへ突入だ。何だか、怒りが収まらないのは何故なんだろうか。尻にひかれているのにな。不思議だわ。
ログインをする。今日は全員がインしてはいないようだ。常清は安定の欠席。今野君も仕事だと言っていたな。
「玄~。早くこっちこっち。」
桜花が手を振り駆け寄ってくる。
「そんなに慌ててどうしたんだ。」
不思議そうに桜花を見ていると。
「出来たんだよ。わたし達の城。出来たんだよ。」
大きな声とオーバーアクションではしゃいでいる。うん。息子と違って子供っぽさ全開だったわ。すまん息子よ。
「ほう。出来たか。で、何が変わったんだ。」
桜花がガクッと体を崩す
「玄、もう少し何かないの。冷静すぎだよ。テンション上げて行こうよ。」
そうは言ってもな、間もなく出来上がると聞いていたからな。そこまでテンションは上がらないわな。
桜花と城の外へ向かう。
すいませんテンション爆上がりでした。何が凄いって、振り返ると城がデーンと建っているんだよ。そして、城の周りを掘りが囲み舟遊びが出来るんじゃないかって感じになってるし、俺の屋敷もなくなっていると言うか、景観が変わってしまっている。さすがゲームってところか。城下町も形になって来ているようだが、城からは少し離れている。昨日まで見ていた風景とは全然違うな。
どうすればいいんだ、これ。あまりの変わりようについていけないぞ。本気で今日妻と話した内容なんてどっかに飛んでしまっているぞ。
しかし、おかしい。部屋を出て振り返ると城があった。俺は一体どこにいたんだか。城門前にログインすることになるのか、これ。
桜花が袖を引っ張り、中を見ようと城の中へ連れて行こうとする。
「まて、待ってくれ。少し落ち着け。城の中にいきなり入ったら迷いかねんぞ。これ。」
桜花がジト目こっちを見て
「誰が設計図書いたと思ってるのかな。わたしがこの城の中で迷うわけないじゃない。と、いう事で行くよ。」
元気いっぱいに走っている。早く早くと何度も振り返っては手招きをしている。仕方ないなと半分やれやれと苦笑いをしながら城内へ入るのだった。
はい。迷いました。桜花がワタワタしながら、あれ、ここはあれで、こっちはなにでとブツブツ言うてます。デンとそびえる城は当初の計画よりも大きくなっていると思った俺が間違っていなかったようだ。
「案内図作らないと迷っちゃうよ。」
「あのな、案内図なんて作ったら敵が攻めてきた時に一直線に俺の所に来ちゃうだろ。却下。」
涙目になって口をパクパクさせる桜花。何か言いたいんだろうが言葉にならないようだ。仕方ないどうせ迷っているんだ。全部の部屋をのぞいていくとしようか。
感想。役所だな完全に。一階は奉行所等が入っているテナントって感じだったが、二階からはザ・仕事部屋って感じになっていた。二階に上がる階段は一階に入って目に入る場所にあったが、三階に上がる階段を見つけるのに苦労した。迷路とは言わないがソコソコ複雑な感じだな。四階に上がると、6畳程の部屋から20畳は有るかって部屋があり、その先には広間があった。ここはあれだな。時代劇でよく見る、殿さまのおな~り~。とかいう所だわ。一段高く俺が座るであろう場所が用意されているし。って、よく見ると、三段になってるなこれ。なんでだろうなと思いながら、上えの階段を探す。階段が無い。なぜだ。俺の部屋はどこにあるんだ。
一通り見て回ったが見当たらない。そんなこんなしていると、またもや後ろから気配なく
「ご主人様。上えの階段はこちらになります。」
ヒイイイイイ怖いから。ほんとやめて。桜花なんか腰ぬかしかけてるし。気を取り直してアカネさんの後ろをついていく。
突き当りには部屋があるさっきも来た場所だったが、アカネさんがおもむろに廊下の壁を触り、何かすると壁が扉になっていたようでそこに階段があり上がれるようになっていた。
忍者屋敷かよ。
「そうです。忍者屋敷を参考に作らせていただきました。桜花様の図面を基にしていますが、部屋の配置などを少し変えています。」
アカネさん最近こちらの思った事を見透かすと言うか読むと言うか、時々恐怖を感じる事があるんだよな。気にしたら負けだと思い
「凄いですね。忍者屋敷って事は他にも仕掛けが有りそうですね。気に入りました。」
平静を装い声かける
「喜んでいただいて恐縮です。桜花様、勝手に図面を変更したことをお詫びします。あのままですと、敵がもし城内に入ってきた時にやすやすと辿り着けてしまいますので。また、草の者への警戒も含んでいます。」
「アカネさん、最初からわかってるなら助言してくれてもよかったんじゃない。後から知るって結構区分悪いよ。」
プンスカ怒っている。だが、アカネさんはアカネさんでした。
「さぷらいずでございます。」
なんだか色々台無しだよ・・・
精神的にやられてしまったから、アカネさんに他の人が来たら案内をしてとお願いし、桜花に疲れた。とだけつげてログアウトするのだった。
後ろの方で、サプライズとは違うよ、サプライズってのはねってアカネさんに何かを教えている桜花の声が聞こえ、不安な気持ちが増大したのは仕方がない事だと思う。
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