ゲームを楽しもう
時には留まる事も必要だ
俺たちは今後について話をする事にした。なにせゲームスタートからまだ3日で手に負えないような事が次々と起こっているのだ。もう俺だけの判断で物事を決めるのはどうかとも思うしな。
「今から少し話をしようと思うが時間は大丈夫か。」
「わたしは平気だよ。玄。」
「僕も大丈夫。」
「私ももう少しなら平気ですよ。」
どこから何を話すか。
「まだこのゲームがスタートして4日しか経っていないのに、俺たちが他のプレーヤーとは進み方が違っている気がするんだ。」
「一度今までの事を整理するのは良い事だと思います。ほとんど玄のやらかしが原因だとしてもです。」
常清は肩をすくめながら言う。
「わたしは何がどうなっているのか分からないから先ずは話を聞いてから考えたいな。」
「僕は皆と楽しくゲームが出来ればそれでいいからね。」
俺は頭の中で整理しながら話を進めていく。
「初めにこうなったのは俺の補償から始まっていると思う。配下NPCが16人がいる状態からスタートと、領地が他のプレーヤーよりも広かった事。そして、桜花、常清、武蔵との出会いがあり、普通だったらパーティーを組むことからスタートするところを色々ぶっ飛ばして配下(家臣)になった事、領地の統合が発生した事がトリガーとなっていると思う。」
3人はうんうんと話を聞いてくれている。
「恐らくだが、ここまでだったらゲームの進行に少しは影響が出たかもしれんが、まだ少し他のプレーヤーよりも先に進んでいる程度だったと思う。」
「それは僕も思います。パーティー組んで誰かの領地に行けばイベントは発生したと思うしね。ただ、そのイベントの発生自体が領地の広さに関係しているんだとしたら僕たちは本当にラッキーだったと思うね。」
ラッキーだったと言う武蔵。俺はラッキーなんて考えられないんだが。
「私は若干チート過ぎかなとも思わなくは有りませんが、いずれどのプレーヤーも配下になったりしたとは思いますよ。それこそ大名からスタートしている人も居るようですし。」
「わたしが配下になっちゃたからかな。」
桜花は少しまずったというような顔をする。
「そこなんだよな。配下にしただけでこんなに進むとは思えんのだ。武蔵が言ったように領地の広さがトリガーになったと考えると納得できるんだが。」
「僕が不思議に思ったのは領地の統合がされた事で出来る事が増えるはずなのに、領地に関しては全く情報が無いって事。」
「それについては又後から話をするから待ってくれ。」
「わたしはこのゲームが異様だと少し思っています。移動範囲が広すぎるんです。領地から町に出るまで時間がかかりすぎます。町に拠点を作れと言わんばかりで、領地はただのホーム的な扱いになっている様に見せている事です。ここまで進んだわたしだからこその違和感だとも思いますが。」
「気にしすぎてもとは思うけど、こんなに早く領地が大きくなるなんて運営も想定してなかったんじゃないかな。僕だってこの状況がおかしいって思ってるし。」
「俺のやらかしに加速をつけるような事が重なった事で起きた事故みたいなものと考えるか、裏ストーリーが用意されていて、俺たちがそれに乗っかてしまったかとも考えているんだ。もしストーリーが開始されていたとしたらどうすればいいんだ。となっている。」
「そこまで深刻にならなくていいんじゃないかな。もしストーリーが始まっていて失敗してもまだ開始からそんなに時間たってないし、リカバリーは割と簡単にできるんじゃないかな。
それよりもこれだけのアドバンテージがあるんだから、やってみたいことを色々試したらどうかな。」
おっと、突撃娘のくせに一番いい事を言ったか。
「それ、何もかんがえてないでしょ。僕もそうすればいいとも思うけど、このゲーム他のゲームに比べて結構シビアだと思うよ。まだ僕ら死に戻りも経験してないんだよ。」
「ばれた。だって考えるの苦手なんだもん。」
やはり突撃娘だったか。
「ここまでは私たちも分かっている内容ではありますね。私たちが領地を目指して試練を受けているときに、玄がどんなやらかしをやったかが気になりますね。」
そう、本題はそこにあるんだよな
「まず、全員で受けた指名依頼からの生態調査で得た金が普通じゃないって事がよく分かった。4つ依頼を受けたんだが、それで得られた報酬はたったの13匁500文だ。そして奉行所を領地に開設するのに10両かかるのを簡単だと錯覚していた。盗賊の持ち物を拾ってくればもう少し稼げるのかもしれんが。」
本当に金銭を稼ぐのが大変なゲームだと思ったと付け足す。
「それはどのゲームにも言える事でしょ。最初からガンガンレベルが上がって、金稼ぎが出来て装備の新調ができるなんてありえないよ。ただ、僕たちがいる地点はニューピーのそれとは違ってきているって感じかな。もう中盤に差し掛かって小金をもって、色々とやることが増えてこの先どうキャラを育成していくか、とか新人を連れまわしてレクチャーしたりだとかの時期にいきなり居るようなもんだとおもうね。」
そうか、普通に考えればそうだな。武蔵が言うようにゲーム中盤に投げ込まれたような状態だと思えば今の状況がしっくりくるな。
「ここから俺が得た情報になるんだが、領地に建物を建設する事が可能だ。」
3人が、え、ってなる。
「実に簡単な事だったが、運営の底意地悪さもなかなかだぞ。領地にある立て札に領地の空白地がHEXで表示されるんだよ。そしてタップしていくと建設できる条件が出てくるわけだ。家だといくらとか、人数がとか表示される。それで金は何とかなると思ったが、人数。そう人が居ないと建設できないとなっている。
そうすると普通、人を領地に住まわせてと考えるだろ。配下NPCも領地には居るわけだしな。その職種にあったNPCが必要になるってな。
所がだ、領地に建物を建てるのに奉行所に依頼を出せば、どこからともなく大工が必要人数来て建物を建てるという事になっているんだよ。」
「いやいやいや、それおかしいでしょ。だって立て札に表示されてるんでしょ、建物を作る条件が。普通に人を雇うのも自分でやると思うじゃないか。どうやってその情報を手に入れたのさ。これ、掲示板なんかに乗せた日には祭りになっちゃうよ。あ、今の僕らの状態もそうか。」
最後にトーンダウンしたな。そして掲示板なんぞに書いたところでガセネタ扱いされておわりだ。ここまで進めている奴なんていないだろうからな。大名でプレイしてる奴なんてコマンド一つで終了だろうしな。
「情報を手に入れたのは、賊につかまっていた少女を助けて連れ帰ったからだ。人買いに売れと受付嬢にいわれてな。出来るかって言ったら、自分の領地に連れていけばいい。と簡単に言われて、家もないのに連れていけるか。という会話の流れで、依頼出してくれれば家くらいすぐに建つと言われた。金持ってるのも知ってるしな。つまり報酬内で家が建つことは確定したって事だ。」
3人が何も言わない。そりゃな、真っ白になるよな。
「つまり情報はゲーム内でどれだけNPC達と関係をもって会話して有用な情報を手に入れられるかっていう事だと俺は思う。」
フリーズしたまま動かない3人。
「でだ、今回連れ帰った豪族の元当主に姫2人。これ、田原氏と話をするときっと、豪族との戦に発展する未来しか見えないんだよ。」
ジト目でこちらを見る3人。
「私はてっきり初めて人を連れ帰ったと思っていたんですが、さすがに想定の斜め上ですね。そして1回連れ帰っていたからあんなに自然に連れ帰ったんですね。ずっとなぜNPC、それも敵だった者達を連れ帰るのだろうと思っていたんですよ。きっと連れ帰っても殺されるだけだと思ってましたから。」
「僕も思ったんだよね。なぜ玄はあそこで3人を逃がさなかったのかなって。盗賊やってたんだよ。正確には盗賊のねぐらを乗っ取ただけかもしんないけど、それでも連れ帰れば死罪は確定だと思ったし。報酬を吊り上げる気なんだろうなまで考えちゃったじゃないか。」
あ、そんなことかんがえてたんだな悪い。
「玄がわたしたちのいない間にホントに色々やらかして、次につながるんじゃないかって心配したのも分かったよ。じゃあ、これからどうしようと思ってるの。」
いや、それを相談したいんだがな。
「提案なんだが、まず盗賊関係でうちの領地に来た5人の住む家を建てる事と奉行所を領地に作ったらどうかと思うんだが。」
「奉行所は賛成ですが、立てた後にどんなことになるか予想が出来ないのが恐ろしいですね。」
「僕は良いと思うよ。5人が地面で寝てるってのもかわいそうだし、もしかしたら領地の何かがまたわかるかもしれないしね。ただ奉行所はどうかなぁ。」
「最悪町の宿屋を拠点にして依頼をこなしていくのも有りだとは思っているが、領地には当分戻れないかもしれないと思うとな、何か領地関係のトリガーも引いてしまったんじゃないかと勘繰っててな。」
3人、いや2人は真剣に悩み始めたが、1人は手遊びを始めている。
「桜花はどうしたい。」
話を振ると桜花はあっけらかんと
「もうここまで来たら馬鹿の考え休むにってやつじゃない。わたし考えるの苦手って言ったでしょ。もう、わたしのキャパは限界を超えました。」
投げたな。やり投げ世界一だわ。
「僕も、もう考えても仕方ないって思い始めたよ。ただ、僕らはレベルが引くほど低い。それは皆自覚してると思うけど、このまま進むと自爆の未来しかないんじゃないかなと思うよ。」
「私はちょっと違う意見ですね。やはり城下町に行くまでに時間がかかりすぎます。下手な依頼なら往復の時間で済ませられると思います。リスクがあるかもしれませんが、レベルを上げるにも、金銭を稼ぐにも費用効果を考えると、奉行所の開設は有用だと思います。」
三者三様とはよく言ったものだ。どの意見も間違ってはいない。正解がない問題なだけに皆迷っていると感じる。
「玄、聞くけど、奉行所建てたら何ができるの。」
3人がハッとする。そういえば建てれることは分かったが、建てた後の事を失念していた。テンパっているときはこんな事に気づかない様になるとは、まったくお恥ずかしい。
「町に行って受付嬢に聞いてみるか。」
「町の宿屋を拠点にして、3日に一度領地に戻るとかはダメなの。玄、極端だと思うよ。力抜いてゆっくり行こうよ。先は長いんだしさ。」
3人の男が、少女(見た目)をじっと見て、そうだな。そうですね。うん。と納得する。
何も焦る必要はないか。俺は何におびえて焦っていたんだろうか。そうだ、ゆっくりでいいんだよ。ゲーム攻略を必死こいてするわけでもなし。楽しんだもの勝ちだな。
「みんな悪い。俺は焦っていたみたいだ。ゆっくりみんなで強くなって下剋上を楽しもう。」
だよ。ですね。そうだね。と3人笑顔で答えてくれる。ま、奉行所にいって話を聞くのはしないとな。うまみがあれば奉行所を建てるのも悪くはない。あ、5人の家が先か。
今日はここまでと全員ログアウトしたのだった。
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