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異世界少女の勇者とペットな魔王さま~勇者の使い魔になった関西弁魔王があまりにも不憫すぎる件〜  作者: 夜色シアン


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最終話/改めて

 逃げてからどれくらいたったか。魔王の身一つで生きられると思っていたグリフェノルだったが、エルフの里の前で野垂れ死んでいた。


 正確に言うと死んではいないが、とにもかくにも空腹で気が狂いそうになっているのは事実でもあった。


「あら、なんでこんな所でシャネアのところのペット……もとい魔王が倒れてるわけ?」


「そ、その声は……くそエルフの、シトゥネ……やないか……た、頼む……何か食べ物……を」


「あらまぁ声も死にそうだこと。まぁ私としてはあなたがどうなろうが知ったことではないのだけれど。あの勇者生意気すぎで嫌だし」


「な、なんでもいいから……食べ物……腹減って、死にそうなんや……」


「ならさっさと勇者のところに戻りなさいよ。私はどっかの誰かさんのせいで魔法の研究しないとだし……流石にあんなこと言われたら、エルフとしてのプライドが許さないのよ」


「んなこと……知らへん……から……腹がぁぁ……」


「あーもう! 仕方ないわね! 帰る気ない上にあいつらが来るまでそのままで、死なれたら目覚めが悪くなるから助けるだけなんだから! ……空間転移対象指定、場所は……どこでもいい!?」


「いい、からぁぁぁ……」


「あっそう! じゃあ場所はすぐそこの食堂!」


 最初こそ、可愛げのない勇者の連れというだけで冷たくあしらっていたシトゥネ。その場で倒れられては困ると、自分が魔王を見過ごせないことに怒りを出しながらも魔王と自身を近くの食事処へと転移させる。


「シトゥネさん……店に入るなら普通に……ってこの見知らぬ少女は? 魔力的になんかめちゃくちゃヤバいやつって感じなんですけど」


「あー、みなまで言わないで、この子がお腹いっぱいになるくらい料理を出してくれない? お代は……はぁ、まぁ私がだすから。それとこの子がここに来たのはみんなには内緒ね?」


「えぇ……まぁ、事情があるみたいですし、わかりました」


 出た場所はまだ開店前の食堂。よくお忍びでここに来るほどにはシトゥネの置き入りの場所で、料理の仕込み中だった店主に軽く事情を説明して席に座った。


「それで、なんであんなところで倒れていたのか説明してもらえる?」

 

 ――――――――


 一方、シャネア達は未だ森を探していた。グリフェノルの事だから後先考えず逃げることはあれど、近くで様子を伺っているんじゃないかと思ってのことだった。


「この周辺にいないということは、エルフのところ……くそエルフの貴女的にはどう思います?」 


「シルルセスタな。と言ってもだな……あの魔王、ちゃんと探してもらえないようにめちゃくちゃ魔力を抑えてるんだよ、探知魔法に引っかからないし……足跡こそあるけどあいつのとは限らないし……それにあいつが一人でエルフの里に行けるはずはない。なんならさっきは私たちが居たから通れたようなものだろう? もしエルフの里にいたら腕を切ってもいい。そのくらい可能性は低いはずだからな」


「なるほど、それではシャネア様は何か情報があったりしますか?」


「固有魔法の繋がりはまだある。だから近いはず、でもここら辺の森にいないなら来た道を戻ってくの方が濃厚」


「お前の固有魔法特殊だもんな……それでわかるならって、そうだ! シャネアは今、魔王の固有魔法【魔変化(イリュージョン)】を使えるんだよな? ならそれで探せないか?」


「天才、やってみる。【魔変化(イリュージョン)】……匂いと魔力で探せる……フェンリル」

 

 刹那にして肉を断ち、骨を砕くような生々しい音を奏で、みるみるうちに魔獣フェンリルの姿へと変貌した。


 その姿はシャネアが想像した巨大な狼。大体木の半分ほどの大きさで、魔力を纏う毛並みは煌びやかでされど妖しく、風も吹いてないのに靡いている。


 フェンリルはどの物語でも伝説級やら神やらと言われるだけあってか、シャネアが居るこの世界でもその姿は稀有。【魔変化(イリュージョン)】した姿とはいえ、シールとエレノアは口を開いて呆然としていた。


「その姿は……フェンリル……か? いや、文献に載っているのとは随分と違うが……しかし、その巨体の狼に、魔力を纏った毛並みはまるでそれなんだよな……でも確かにそれなら、薄い魔力と匂いで辿っていけそうだな」


「まかせろり。でも、大事なことに気づいた」


「……あまり聞きたくはないが、なんだ?」


「探さないといけない魔力、今の私のと同じ。つまり魔力を辿れない……から匂いで探す……こっち」


 シャネアの固有魔法【契約の鎖(コントラクトチェーン)】により、契約を結ぶとシャネアの魔力は契約相手の魔力と同じ性質を持つ。そのことを今の今まで忘れていたシャネアだったが、敏感な嗅覚は彼女の力となり魔王への道のりを匂いが示した。


 それを辿るように案内する狼の姿をした少女。幸いにも森の木々の間は広く、不便なく匂いを辿っていく。


 やがて辿り着いたのはエルフの里の入口。匂いはそこで途絶えていた。しかし、まだ匂いも新しく、それは間違いなくエルフの里にいることを暗示していた。


「まさか本当にエルフの里にいるとは……」


「あら、くそエルフは確か、ここにいたら腕を切るとおっしゃっていましたよね。これは有言実行なさらないとプライドが許さないのでは?」


「あんなの冗談に決まっているだろ!? ともあれあと少しだ、里の中を探すぞ。……ただ、ここで魔法を使用した形跡があるから、どこかに身を隠してる可能性が大きいな。他にもなにか手がかりがあればいいんだが……」


 やっと掴み取ったのに、肝心の魔王がおらず落胆する三人。そこに剣を携えたエルフが目の前に現れ。

 

「あぁ、先日の来客者か、ちょうどいい。シトゥネ様を見なかったか?」


「え、いや。今来たとこだからな。どうかしたのか?」


「それがまた仕事を放って街の中にいるようなのだ。全く、何度仕事を放ってしまえば気が済むのやら……ところで、先日はその獣はいなかったと記憶しているが……」


「こちらも連れを探しててな。ここら辺で情報が途絶えたんだが……」


 お互いの情報を交換していると、彼女達の間の空間が歪み、シトゥネと少女の姿をしたグリフェノルが出てきた。


「いたぁぁぁぁぁあ!」


 シール達が一斉にそう叫び、シトゥネとグリフェノルは身体を跳ねらせて、この場所に戻ってきたことを後悔した。


 それから、シトゥネは酷く剣を携えたエルフにこっぴどく叱られていた。帰るころにはひどく落ち込んでいた様子だったが、こうなったのはシャネア達のせいだと最後に言い捨てていった。


 「――さてと、無事にグリフェノルも見つかったことだし、旅の続きと行きたいところだが……なんだ、その、すまなかったな」


 自分たちのせいというのはまさに間違っておらず、シトゥネ(他者)に迷惑をかけていたことから、更に事の重大さを知ったシールは今までのことを頭を下げて謝罪をする。ノエルも謝罪はしていたが、どうにも上司とは認めたくはないらしく苦虫をかみ潰した顔を浮かべて魔王の名を呼んでいた。


 しかし、謝罪を受けた魔王、グリフェノルは。


「我も悪かったと思っとるよ……まあ皆あたり強いのは堪えたけども、一人になって何もできんかったしな……勝手に抜け出して悪かった」


「ん。次からは一言言ってからどこかに行くように」


「我は子供かっ! いやお前みたいな容姿になっとるから子供っぽいかもしれんけど!」

 

「失礼な。私は大人。ぴっちぴちの二十代」


「そうは見えんのが何とも……初めて会ったあんときも子供かと思うたし。まあ勇者だから手加減なんてせんかったけど」


「なのに私に契約させられる弱さ」


「うっさいわ! ともかく、別にいつも通りでええよ。改めて考えたら、変に気を使われる方がなんか嫌やし。あ、でもあんまりぞんざいに扱われるのは嫌やで? 我魔王やし、人権ならぬ魔権があるんやで? ペットちゃうんやで?」


 最初こそ今までの扱いが嫌になり逃げだした魔王だったが、腹を満たすうちに色々と吹っ切れたのか自分が何に怒りを表していたのかどうでもよくなり、いつも通りでいいと、しかし扱いに関しては釘をさした。


「まあそこらへんは本当に悪かったと思ってる」


「本当やろうなあ? まあええや。んで、次はどこに行くん?」


 頬を掻き、再び謝るシールを不審がるグリフェノル。だが小さく息を吐いてシャネアに行く先を尋ねた。


「次行くのは……はじまりの街。魔族に支配されてると思うけど、この目で見たいから」


「ちゅーことや。行くぞノエル、シール」


 先日のことを忘れたように、機嫌を取り戻したグリフェノル。その様子に鬱屈感を抱くシールたちだったが、もう何も言わず、しかしため息を吐いてシャネアについていくことにした。


ここまでお読みいただきありがとうございました。ちょっと無理やりではありましたが「異世界少女の勇者とペットな魔王さま」はこれにて完結となります。


以前お知らせした通り、カクヨムでメイン活動を始めたため、なろうではたまにしか投稿しなくなります。

なので、夜色シアンの作品をもっと読みたい!という方はぜひこちらからどうぞ。

https://kakuyomu.jp/users/haru1524


改めて今まで応援して下さり本当にありがとうございました。

また、感想等もお待ちしております。

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