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異世界少女の勇者とペットな魔王さま~勇者の使い魔になった関西弁魔王があまりにも不憫すぎる件〜  作者: 夜色シアン


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22/24

22/元の世界に戻る方法

 森の中を進み続けると、大樹が幾つも実った場所にたどり着く。その大樹に沿うようにして橋もかかっており高いところに建つウッドハウスにも足を運べそうだ。


 だが近くのエルフにシトゥネの場所を聞こうにも、見知らぬ人と魔王の存在に警戒をしており、道を尋ねられる雰囲気ではなかった。


「エルフは基本的に外の者と交流することを嫌う。まぁ警戒されるのも無理は無いな」


 嘆息吐いて言ったのはシール。ダークエルフ故殆ど森に入ることは無いが以前何度か赴いた事があり、迷うことなく足を動かす。


 他三人はシールがここの事に詳しいことを知らず、歩き始めた彼女の背中を見て固まる。いきなりどこへ行こうというのかと、疑問の視線。


 そこに踵を返したシールは、何度かここに来たことがある旨を言い、続けて。


「さっさと行くぞ。来ないなら置いて行くからな」


「いや、置いて行くなや……」


 先導するシールの背中を追うこと数分他よりも大きな大樹に埋め込まれた部屋にたどり着く。


「シトゥネ。来たぞ」


「……だから様をつけなさいって……待っていたわ、シャネア……いえ、()()()()()()ではこういうのかしら。サシャ・アマネ」


 シールの一声で部屋の奥からふわりとシルバーブロンドの長髪をはためかせて歩いてきたのは、エルフの長老シトゥネ。長老と言う割にはあまりにも()()()()()姿()で、シャネアと大差のない体つきだ。


 その若さはエルフならではの特徴でもあるが、実の所シトゥネはエルフの種族の中でも若い部類に入る。シールが様をつけないのも納得だ。


 そんな若き長老である彼女がシャネアを一瞥するとシャネアの本名を唐突に口に出す。


「その名前は嫌い」


「親に名付けてもらった名前でしょうに……というか気になるところそこなのね。普通なんで名前知ってるか気にならない?」

 

「ん、確かに」


「ほんっとうにズレてるわねこの子……とりあえず確認なのだけれどここに来たってことは帰る方法を知りたいってことでいいのね?」


「もちのろん。まあまだここにいたい気持ちはあるけど帰られる方法を知っておくのもありだし、気持ち的に楽になる気がするから」


 シャネアの真名、サシャ・アマネという名で改めてシャネアが転生者であると実感が湧くが、今までその本名を聞いたことはなく魔王もシールも、ノエルすらも驚きを隠せられていない。


 しかし驚くのも無理はない。シャネア自身、自分の名にコンプレックスを感じており自身の名を言わない代わりに、名をもじってシャネアと名乗っているのだ。


 だがそれよりも気になるのは、なぜ転生者でも、シャネアの転生前の知り合いでもないシトゥネが彼女の名を知っているのか。シャネアはまるで興味を持ってはいないが、仲間は気にしている様子。それを察したのかシトゥネが言う。


「私は世界を夢で観測できる。まあ観測できるといっても夢の中だから干渉はできないし、全てを知ることはできないがけどね。その証拠に鯨というものを私は知らないし。まあそうねあなたの世界でいうところの……予知夢ってやつね」


「なるほどストーカーなのか、しらこは」


「誰がしらこよ。あんな虫じゃないわよ私」


「それはしらみ」


「浅い知識に付け込んでこの私に恥を……蹴り飛ばしていいかしら?」


「できるものなら。私には秘儀ゆうしゃすてっぷがある」

 

「なによゆうしゃすてっぷって……あのねぇ、私がさっきあなたにこめかみをぐりぐりしたの忘れたのかしら? 私は遠慮なんてしないわよ?」


 他の三人のことを差し置いて自分たちだけでわかる話をして、シャネアはシトゥネをおちょくり、それに対して眉間に皺を寄せて険悪な表情を見せるシトゥネ。傍からするとどうでもいいやりとりばかりで、ここに来た本来の目的を忘れているように感じる。


「おい、シトゥネ。じゃれあうのはもうやめて本題に入ってくれないか……おまえらの話が全く理解できなさ過ぎて、皆困惑してる」


「その愚痴はシャネアに言うべきじゃない? まあいいけど、このままだと切りなさそうだし。それで元の世界に戻る方法、だったわね。方法としてはあなたの中にある瘴気を浄化した上で仮死状態になること。これが唯一の方法よ」


「え? 浄化したら菓子になるん? こいつ美味しく食べられるん!?」


「無知でバカなアホ魔王は黙りなさい。そもそも、かし、違いね。仮に死ぬ仮死よ」


「そんな侮辱せんでも!? て、ていうかそのくらいわかっとったわ!」

 

 魔王としての威厳もあり、間違えたことをごまかそうと試みるが、明らかに仮死と菓子を間違えているのは目に見えていた。指摘された魔王の可愛らしい顔に紅葉を散らしているのが何よりの証拠だ。


 プライドを保つためとはいえ、嘘を付いたことに冷たい目線を送ったがもうかまうことをやめて話を続ける。


 「もとよりシャネアは前の世界で死にそうになっていたはずなの。その精神状態を極限まで同期させる。そうすることであちらとこちらが繋がる可能性があるのよ。召喚魔法も似たような原理だから」


「それだと辻褄合わない。ここに来た時ピンピンしてた」


「いい所に気づいたわね。それが似たような原理という理由なの。召喚、転生は元の状態は引き継がず、その時の精神状態によって勇者の力を得ることが出来る。これだけ聞けばメリットでしかないけれど、問題は元の世界に戻る方法は仮死状態になること。つまりは死ぬことになるわけね。当然そんなこと言ったら誰もが魔王のところになんて行かないから召喚者転生者にはその事実が伏せられるってわけ。ちなみに瘴気を浄化せずにこれだけをすると、さっき言った通りあなたは瘴気に耐えられなくて間違いなく元の世界で死ぬ。どう? わかった?」


 口先だけでは伝わりにくいためか、近くにあった枝をいくつか使いながらシャネアが召喚された際に使われた魔法のことや、元の世界に戻る方法をなるべくわかりやすく説明する。


 嘘をついているようには見えない。ということは本当に死に近い方法でしかシャネアは帰ることを許されないのだと誰もが悟った。


「ふくざつ……でも実質死ぬことはわかった。元の世界に戻るのが簡単じゃないってこともわかった」


「わかってくれたならなによりよ」


「でも、誰でもできないなら自分でなんとかする」


「人の話を聞いてた? 今言ったのが唯一の方法なのよ!?」


「でも()()じゃない。数学的にひゃくぱーがあり得ないんだし。まあ直ぐ帰りたいわけじゃないから気楽に探すよ」


 帰る方法はたった一つだけだと、相当危険なものしかないと言ったばかりなのに、シャネアは焦る様子すら浮かべず余裕な表情を浮かべる。それでいて他の方法を探すと言い出した。本当に人の話を聞いていたのか怪しいが、彼女なりに考えがあってのことでもあった。


 唯一。その言葉はただ一つで他にないことを指す。唯一無二はその強調の言葉となるが、それらは()()とは言っていない。今はまだ存在していないだけで、いつかは生まれうるかもしれない。時間が無いならばどんな手段を使ってでも作ってしまえばいい。そうすれば簡単に唯一という言葉は崩壊する。


 だからこそ今はないのなら時が来るまで待てばいい。その結果を知れただけでも充分でさっさとシトゥネの元から去っていく。

 

 「あ、ちょっと! あなた本当にわかってるの!?」


「おい、シトゥネとやら。諦めとき、あいつは一度言ったことは曲げへんからな。それにあいつは我をペット扱いするし、ひねくれとるし、へそも曲がっとるけ――おいちょまてシャネア! 勇者ちょっぷはやめぐふぇっ……」


 シャネアの背に向けて手を伸ばすシトゥネ。当然彼女の言葉でシャネアは止まることはない。けれどグリフェノルの言葉ですぐさま踵を返し、一気に間合いを詰めるとお得意のチョップを脳天に食らわせた。

 

「余計な事を言うなバカぐらたん。ちょっぷするよ」

 

「い! ま! 今したから! してからチョップする言った! 意味ない! 意味ないんやってそれぇぇぇ! ていうか、余計な事言ったからってチョップを食らわせるバカがいるかぁぁぁぁ!」


「バカって言った方がばか。ちょうひっさつめつぶしれんだ」


「うわ! ばかやめろやぁぁぁぁぁ!!!」


「またばかって言った。主人に対するあるまじき失言。おしおきするから逃げるな卑怯者」


「逃げて当然やろぉぉぉぉぉ!」

 

 むっとした表情を浮かべたシャネア。的確にグリフェノルの目を潰さんと人差し指を突き立てて逃げ惑う魔王を必死に追いかける。その顔は悪魔的な笑みで包まれており確実に()ってやろうという殺意で満ち溢れている。


 シトゥネからすると突然血相を変えて追いかけまわしているようにしか見えないが、いつものこと。ノエルは魔王がボコボコにされるところ見たさで興奮しており、シールは止める気すらなく呆れてため息を吐いていた。

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