お菓子コーナーにも売っていたプラモデル付きカップ麺
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
小学校のプールから帰った娘の京花は、嬉々とした様子でコンビニ袋を下げていた。
「お母さんも今日は同窓会だし、昼はこれで簡単に済まそうよ。」
そうして差し出したのは至って平凡なカップ麺だった。
「この会社のカップ麺なら家に買い置きがあるじゃないか。それにスーパーの方が安いのに、わざわざコンビニで買ったのかい?」
「分かってないなぁ…私の目当てはこれだよ。」
そう得意気に笑うと、京花はカップ麺の上部に被さっていたらしい透明の容器を並べたんだ。
「そうか、京花…小さいプラモが入ってるんだね。」
「この『機甲戦団レギオン』のミニプラがついているのはコンビニ限定だからね。試作型ガンボイも旧型ゾクも、武器の代わりに薬缶を持ってるんだ。」
小さいながらも、ランナーは精密に造形されていた。
全く、技術の進歩というのは凄いの一言だよ。
それにしても、こうしてカップ麺に合わせて丸く成型されたランナーを見ていると懐かしくなってくるよ。
「お父さんが今の京花位の頃にも、プラモ付きのカップ麺は売ってたんだよ。よくスーパーのお菓子コーナーや駄菓子屋で買ったっけなぁ…」
「詳しく聞かせて。今日は土曜で会社も休みだし、童心に帰るには最適だよ。」
父親相手に「童心に帰れ」とは凄い言い草だが、目を輝かせて促してくる娘を無碍には出来ないよ。
「そうだな…零戦とか新幹線とか。それに恐竜の骨格もあったっけ。」
「清く正しい男の子好みのラインナップだね。良い感じだよ。」
嬉々としてロボットのプラモを組んでいる京花が「男の子好み」と言うと、何とも不思議な気分になってしまう。
父親としては、娘と話が合うのは何よりだけど。
「でも、京花が組んでるガンボイに比べたら精度も造形も単純だったよ。零戦なんて、翼と胴体を嵌め込めば大体の形が出来ちゃうんだから。」
「それで良いじゃない。カップ麺を待ちながら気楽に組み立て、美味しく食べた後はプラモで楽しく遊ぶ。そんな気安く組んで遊べる玩具寄りのプラモって、今は珍しいからね。現代っ子の私には、お父さんの子供時代が羨ましく感じられるよ。」
僕と同じように、京花も僕の子供時代を羨んでいたのか。
お互い、隣の芝は青く思えるのかな。
「う~ん、見事に伸びてる…プラモとお喋りに現を抜かしすぎたかな…」
そう言って苦笑する京花の姿に、僕は不思議な安心感を覚えていた。
妙に達観した口を叩く娘の、年相応に未熟な姿を見られたからかも知れないな。