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マチルダさんが町にやってきた

 セーラちゃんに誕生日や好きな食べ物に服について教えた、その翌日。


 マチルダさんが町にやってきた。


 んー、事前連絡なかったなー……。

 ミリーさんも一緒に居るんだよねぇ。


 しかも、二人の近くにノイさんが居るから、ワープで来たことは明白だった。


 二人とも、ヴァラノイア商会の制服を着てるから、お仕事関係で来てるんだろうけど、目立って仕方ないよ!


 と、マチルダさんが振り返ってきたかと思うと、話しかけてきた。


「あら、町では雰囲気が違うお姿なんですね」

「お初にお目にかかりますヴァラノイア会長。ちょーっとこちらへ」


 イザさんやノイさんと一緒に二人を喫茶店の勝手口へ案内してバックヤードに入った。

 あ、危なかった……息を吐きながらウィッグを取って、影に入れる。


「あら、さっきのお姿も素敵でしたよ?」

「これは諸事情があって変装してるだけなので……っていうか、そんなに私ってわかりやすいですか?」

「はい」


 即座に返ってきた忌憚のない意見に涙を禁じ得ない。


 そんな風に話してたら、セーラちゃんが顔を見せた。


「マチルダ姉さん、ミリー姉さん、どうしてここに?!」

「久しぶりね、セーラ。ドラクル様のご厚意に甘えさせてもらったの」


 マチルダさんがノイさんを手で示すと、セーラちゃんは色々と納得したらしく、頷いた。


「それで、今日はどうしたの? 監査ならケイト兄さんがしてくれたけど」

「ふふっ、末の妹が活躍している姿を見に来たのよ。それと、貴女の心を射止めた騎士様の姿もね」


 これは……ヴァラノイア家恒例行事、テオ君審査だ!


 ノイさん、ケイトさん、アンネリーゼさんに認められたテオ君だけど、マチルダさんがどう感じるかはわからない。


「貴女たちのお仕事の邪魔はしないわ。普段通りにしてくれていればいいから」

「わかった。アオイさんたちはどうしますか?」

「あー、紙芝居が終わった後に、またお客さんとして入るよ」


 事あるごとにバックヤードを使わせてもらってるけど、本来、私とイザさんは部外者だ。

 なので、今さらな話ではあるけど、用事が終わったらさっさと出る。


 でも、マチルダさんが呼び止めてきた。


「それなら、アオイさんもご一緒されませんか? 何がご用事がありましたら、お引き止めいたしませんが」

「私はないですけど、イザさんは?」

「私もありません」「それでは、私どもの護衛という(てい)で、ご一緒していただければと存じます」


 まあ、そういうことなら。

 私も、マチルダさんたちがテオ君のことをどんな風に評価するのかは、ちょっと気になる。


「ノイさんはどうするの?」

「紙芝居の準備がある故、一度戻らせてもらう。マチルダ、ミリー、用事が終わったら、大広場に来るといい」

「承知いたしました」


 ノイさんがワープすると、マチルダさんは、早速、ミリーさんと一緒に店内の方をこっそりと覗い始めた。

 私も、バレッタの力を借りて、壁を透視して店内の様子を観察する。


 ふむふむ、お客さんの数はぼちぼち。

 あ、ラーファだ。テーブル席でエニファーたちと談笑してる。

 見習い騎士だけでお茶会って感じかな。


 テオ君は……うん、いつも通り、パーフェクト美少年給仕として、普通に活躍してた。

 これなら、問題ないかな。


 さて、マチルダさんたちの評価は……。


「ミリー、どうかしら?」

「……悪くない」

「高評価じゃない」

「本部のカフェで働いてもらいたいくらい」

「わかるわ」


 おぉ、どうやら、仕事面では合格っぽい。


 なんて感動してる間にも、マチルダさんたちの関心の先が移動してた。


「あちらの女性たちもいいわね。元々接客経験があるみたいだけれど」

「あの人はアイラさん。あっちはモナさん。二人とも、とってもいい」

「そうね。二人とも、中々いいじゃない」

「そう。それと二人とも既婚者……後、妊娠中。もうすぐ産休予定。」

「セーラから連絡があるでしょうけれど、ウチからも何かサポートを考えないとね。……あら?」


 マチルダさんの声に振り返り、彼女の視線の先を追ってみると、アルティスの姿を見つけた。


 相変わらず神々しいまでの美人っぷりだ……いや、本物の女神様だけど。


「あの方は?」

「アルティス・サンクチュアリ。最近入った、新しい給仕スタッフ」


 二人の視線の先で、アルティスは普通に仕事をこなしてる。

 そして普通にお客さんと二言、三言談笑して、次のお客さんの下へと歩いていってる。


「コミュニケーション能力が高いわね」

「モナさんたちも高いけど、あの人も高いみたい」


 二人から分析されてるのを他所に、アルティスが、ラーファたちに近づいてった。


「あら、あの子たちは? 騎士団のスカーフを巻いているということは、見習い騎士の方々かしら」

「そう。今、アルティスさんと話しているのが、ラーファ様。常連さんの一人」

「……サンクチュアリさん、だったかしら。騎士様とも物怖じせずに会話できているわね」

「プロ意識が高い」


 アルティスも二人から高評価されてた。


 っていうか、アルティス、アレ、絶対こっちのこと、気付いてる。

 多分、テオ君も視線やら気配やらで普通に気付いてるだろうけど、あえてスルーしてるはず。


 あ、セーラちゃんのすぐ隣に等身大の薄っすらシャーロットが出現して、透視してる私に向けて手を振ってきた。


「流石は開拓地……こんなにも魔石の原石が眠っていたなんて……」

「私たちもまだまだリサーチ不足……」


 仕事の顔でぶつぶつ言いながら、そのまましばらく様子を見守ってた二人は、テオ君が休憩に入ろうとするのに合わせて、椅子に座り直した。


 そして、バックヤード二入ってきたテオ君が、マチルダさんたちに気付いて、お辞儀した。


「ミリーさん、お疲れ様です。ご無沙汰しております」

「お疲れ様」


 ミリーさんと挨拶し終えた後、テオ君がマチルダさんにも挨拶した。


「お疲れ様です。プロメテオ・ショクテールです。本部の方、でしょうか」

「お疲れ様です。本部の者ですが、どうぞ、来にせず休憩していてください」

「はい」


 最後に、テオ君が私たちに目礼してきたので、同じように返した。


 テオ君は私たちから少し離れた位置に座って、まかないのサンドイッチとコーヒーを影から取り出して食べ始めた。


 私も何か食べようかな……影の中に手を突っ込んで、お目当ての物を引っ張り出して、机の上に置いた。


 料理長さんと共同開発した、カロ○ーメ○ト風のクッキーバー!

 味も保存性も良くて、実はイーナ女性騎士団の携帯食料として採用されてる。


 夏の頃、私がコーヒーゼリーを提案して、流行ったのを知った料理長さんが、団長さんを通して、一緒に料理をしたいと持ちかけてくれたことがきっかけだけど、それはさておき。


 フレーバーは、プレーン、チョコ、ナッツの三種類。

 料理長さんたちが試行錯誤して、レパートリーを増やそうとしてる。


 それを団長さんがライト様たちにも報告して、他の騎士団にも少しずつ認知されてってる代物だったりもする。


 当然……マチルダさんたちが食い付いた。

次回は明日、18時予約投稿です。

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