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プロローグ

初めまして、またはご無沙汰しております。

この半年少し、ひたすら彼女たちの物語を書き連ねておりました。

お楽しみいただければ幸いです。

「私が恋人になってあげよっか?」


 小学校三年生の頃、兄ちゃんの親友のフー兄へ、冗談めかして告白してみた。

 そうしたらフー兄は、


「大人になってまだ俺の事が好きならな」


 困ったように笑い、私を振った。

 いや、振ったという自覚すらフー兄にはなかったと思う。

 だって私も、本気じゃないですよー、からかってますよー、っていう雰囲気と笑顔で言ったのだから。


 きっと、私なりに元気出せと励ましてきた、くらいの認識だったんだろう。

 実際にフー兄は、兄ちゃんやましろ姉と次に顔を合わせたときには、普段通りに戻っていて、私にもいつも通りに接してきていた。


 私も普段通りにしていた。


 でも、ましろ姉にだけ、いつもと違うねって言われた。

 何があったかは言わなかったし、ましろ姉も踏み込んでは聞いてこなかった。


 それからしばらくして、色々あって、兄ちゃんとましろ姉は結婚した。


 結婚式では、フー兄が二人の親友として、祝福の言葉をカンペなしで送っていた。

 (いわい)文睦(ふみちか)という名前の通りに、心からの言葉を口にしていた。

 兄ちゃんもましろ姉も、お父さんもお母さんも、おじさんもおばさんも、皆が感激していた。


 私だけ、フー兄の二人を見つめる優しい眼差しに、少しの寂しさを覚えていた。


 これが私の初恋の顛末。

 あれから八年。

 まだ私の初恋はくすぶり続けている。




 試験期間のため部活もなく真っ直ぐ家に帰ると、兄ちゃんとましろ姉が遊びに来ていた。

 今度、こっちで仕事があるから、しばらく世話になると言い出したので、ここは兄ちゃんの実家なんだからと言っておいた。


 照れる兄ちゃんを見守るましろ姉はゆきちゃんの手を引いている。

 ゆきちゃんは、ましろ姉の小さい頃の写真にそっくりで、とても愛らしい。

 彼女のもちもちほっぺを両手で堪能していると、兄ちゃんが、フー兄も来ると言った。

 フー兄と兄ちゃんたちは今も交流していて、私もよく会っている。


「キョーちゃんとフー君と私で盛り上げちゃうから」


 ましろ姉が楽しそうに言いながら、ゆきちゃんを抱き上げて、兄ちゃんと一緒に居間の方へ歩いていった。


 私は玄関で一人、フー兄のことを考えていた。

 明日は休日だし、それに、久々にフー兄に会える。


 未だに妹分扱いで、きっとあの時の言葉も覚えていないんだろうけど。


 未だに私は、フー兄のことが、好きなんだ。




 居間に行くと、お母さんが醤油が切れていると言っているのが聞こえたので、私が買い出しに行くことにした。


 自分が行くと兄ちゃんが言っていたけど、折角帰ってきたんだからゆっくりしときなと無理に言いくるめ、見送りに来ようとするましろ姉も座ったままでと抑えた。


 制服から着替えていないけど、鞄は持って行かないし、エコバッグを持っているから、遊びに出掛けているとは思われないはず。


 まだ日も高いし、人通りもあるし、向かうのも近所のスーパーで、危ないこともない。

 さっさと行って、すぐに戻って来よう。

 でも、フー兄の好きなハンバーグを作るためにケチャップも買い足しておこう。

 そんなことを考えつつ一人で玄関に向かい、靴を履いて、ドアを開いた。




 そんなこんなで始まった、私の異世界旅行記。

 帰ってから、フー兄たちに話した後で緩い一悶着があったけど……。


「三国葵さん、それでは、聴かせてください。貴女の異世界での冒険を」


 フー兄の友達で恩人で、私の親友の一人の大切な人である晴樹さんとその奥さんが用意してくれたお茶菓子とコーヒーをお供に、私は話し始めた。

お読みいただきありがとうございます。

よろしければ、彼女と共に楽しく騒がしい異世界での冒険をお楽しみいただければと存じます。

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