閑話 【ほかの店~チエちゃんご立腹~】
ある日の、江藤書店にて――
「どげんしたん? 蓮ちゃん、そんな難しい顔ばして。なん書きよん?」
「ん? いや、これから開放する店のこと考えててさ。それのリストアップ。金光刃物店はバルトさんにお願いしてるけど、その後、どの店を開放したらいいかなと」
「あ~ねぇ~。でもあれなんやろ? 店主さんってやっぱり、ヴィヴィちゃんとかサリちゃんみたいに、その店にむいた人がやった方がいいんよね? チエちゃん」
《ええ。適性があった方が、いいでしょう。物事には何でも相性というものがありますから。もし適性の無い方が店主になれば……すぐに潰れ、またシャッターを下ろすことになりかねません》
「だよねぇ。それに相手が店主になりたいと思わないと駄目だもんなぁ」
「そう考えると結構難しいねぇ。リストみせて」
「うん」
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小村電器店 → 俺の雷属性と相性がよさそう。
桜ヶ谷酒店 → 随分前に蔵閉めした酒蔵。日本酒が商店街の名物になりそう。
畑辺畳店 → そんなに需要がないかな……
本松精肉店 → 魔物の解体を委託できそう。ヴィヴィたちの負担も軽減できる。
立花理容店 → バルト達の髪や髭をどうにかできそう。トリマー?
おか珈琲 → ちょっと休憩に。旅人たちの憩いの場になるかな。
作兵衛饅頭 → お土産に、携行食に、おか珈琲と相性がよさそう。
etc.
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「なるほどねぇ……そう考えると、この異世界で生活するために必要な店を優先的に開放できとんやねぇ。ヴィヴィちゃんと最初に出会えたのが大きかったかも」
「ほんとそれ。あのまま山菜の水煮が続いてたら、俺、どうにかなってたかも」
「勝っちゃんが、ヴィヴィちゃんを巡り合わせてくれたんかもしれんばい……勝っちゃん! ありがとう! パン! パン! なんまんだ!」
「柏手と念仏……それどうなの? ばあちゃん」
「あり? そうか……まあよかよか! 気持ち気持ち! 寛容の精神ですよ!」
「なんだそりゃ。まあ、店の話だけど……小村電器店とか、電気の力使うものばかりだから、こっちの世界で適性のある店主がいるとも思えないし……もし開放出来たら、かなり便利なんだけど」
《いや、蓮さま、電気系はやはり慎重にいった方が無難です。禁忌ですから。電気は》
「だよねぇ」
「桜ヶ谷酒店はどうね? 美味しいお酒やったよ~。蓮ちゃんは飲んだことなかやろうけど」
「うん。俺が子供の頃には、お酒の販売だけで、酒造りはやってなかったなぁ」
「これよさそうやけどねぇ。冒険者とかお酒好きやん? 大体どんなラノベでも」
「だね。一応、バルトさんに頼んで、今度お酒を持ってきてもらえるようにしてるんだ。ほら、冷蔵庫に入れてたら増えるでしょ」
「おお! そりゃ楽しみばい! お酒なんてこっちに来てから飲んどらんもんね」
「桜ヶ谷酒店も優先度的には低いかなぁ……」
《そう考えると、蓮さまが頭を抱えるのもうなずけます。店の優先度、店主の適性、店主の意向が合致していないと駄目ですもんね……》
――「「「うーん」」」――
「あ! もういっその事、イ●ンとかあったら超便利じゃないかね?!」
「いや駄目だろ!」《それはダメでしょ!》
「なんでぇ? イオ●あったら最強やん。チートやん、チート」
「それは駄目だ。何故かは深掘りしないが……それは駄目!」
《そもそも、ここ、商店街ですから! モールはありませんから! 伊織さま、お忘れですか? モールが出来たことで、私たち田舎の商店街たちがどれだけ苦境に立たされたのかを!!! お忘れですか!》
「ああ~、ごめんばい、チエちゃん~。ちょっと冗談でいうただけやん~」
《冗談にもほどがあります! 伊織さま!》
この後、しばらくチエちゃんの怒りは収まらず、次の開店候補は決まらずじまいだった。
《モールは……敵です!!! ぷんぷん!!!》
おしまい




