8.水と火
網がひとつ満杯になって、漁から戻る。
真水。
さて、どうやって確保するべきか。
ちょっとした木の実や野イチゴはあるけれど。
本当に少しだけだ。
必要な水分量には足りていないはず。
悩んでいると、家の隣でギンが微笑んでいた。
彼女の前には焚火がある。
おおっ、着火に成功したのか!
素晴らしい……。
「おかえりなさいませー!
どうでしょうか、火起こし完遂です!」
「ありがとう!」
「にゃーうん♪」
ついに火が灯った。
むしろ今になってようやくかもだが……。
これで文明度が一段階上がる。
おっと、火も大事だが水も大切だ。
とりあえず急いでサンマを家に置き、戻ってくる。
「ええと、喉は渇いていない?」
「へ? ま、まぁ……少し渇いております」
やっぱりそうか。
迂闊だったな。
「悪い、俺とシロちゃんは水をそんなに必要としないんだ。
海水から水分を摂取できるみたいで」
「そ、そうなのですか!?」
「にゃあ!」
シロちゃんがドヤ顔である。
「……やはり主様とシロ様は神の領域に」
ギンが尊敬の目線を向けてくる。
神の力は本当なので、否定しづらい。
でもギンは普通の人間だ。
まずそこが大事。
「こほん、まずはギンの水確保を最優先にする。
いいね?」
「は、はい! ありがとうございます!」
とはいえ、どうすべきか。
器と綺麗な砂があれば、ろ過ができる。
サバイバルの定番だ。
でもこれは海水に使えないよな。
あるいは水辺を探すか。
うーむ、しかし闇雲に探すのも。
手分けすれば……。
「……主様は器のようなものは生み出せますでしょうか。
できれば金属製で」
「やったことがないけどできるよ、多分」
漁師道具に桶はない。
でも網を工夫すればイケる気がする。
なぜなら生み出す網のサイズと目の細かさは自由だからだ。
でないと色々な魚を捕まえられない。
なので、ちょっとチャレンジ。
……。
できた。
普通の網やナイフより生み出すのに時間がかかったけれど。
ギンのリクエスト通りに目が極めて細かい網を作った。
海水も通さない網だ。
ここまでくると金属メッシュの器だな。
「そこに海水を溜めて頂いて……」
ふむふむ。
この海水を真水にするのかな。
どうやるんだろうか。
「……ぴぃ」
シロちゃんは名探偵のような顔で頷いている。
なんと、彼女の狙いがわかったのか?
…………。
もくもく、もくもく。
海水を溜めた網、その下から火を当てる。
そして網に真ん中に穴のある木の板を被せて。
さらにその上を木の板や葉で覆う。
するとあら不思議。
水蒸気が穴を通り抜け、真水ができるのである!
「おー……!」
「やった、成功しましたよ!」
「にゃあん!」
なんとスムーズな真水確保。
サムライ、凄い。
「いえいえ、これには燃えない綺麗な器が不可欠なので。
やはり主様あっての確保方法です!」
そもそも火が無かったら、成立しないけどね。
でも素直にギンの褒め言葉を受け取ろう。
これは全員の勝利だ。
あれ?
しかもこれって……。
「もしかして、塩が残る?」
「ええ、水分を飛ばした後に残ります。
もうちょっと乾燥させたほうがいいでしょうが」
「いや、それでもこれは大きな進歩だよ。
塩が手に入る!」
火は料理に欠かせない。
生の海鮮もいいのだが、焼き魚も格別だ。
もちろん煮つけや鍋だって……。
おっと、よだれが出そうに。
そんな話をしていると、水が溜まってきた。
「ギン、君からどうぞ」
「主様を差し置いて、よいのですか?」
「俺は今のところ、必要なさそうだしなぁ……」
「……では、お言葉に甘えまして」
板と葉に溜まった水を冷まし、ごくりとギンが飲む。
「ふぅぅ……っ! おいしーですっ!」
ギンの尻尾がぶるぶると震え、回り始めた。
なんという荒ぶりかた。
落ち着きたまえ。
「はふ、生き返りましたぁ……」
よかったよかった。
……でも、やっぱり喉は渇いてたんだな。
彼女には遠慮があるのかもしれない。
この生活にそういう遠慮は無用だ。
俺はそう思う。
「何か足りないのがあったら、気兼ねなく言ってくれよな」
「にゃっ!」
そうだそうだ。
シロちゃんも言っています。
「で、でも主様の手間をかけさせるためには」
「いや、ギンも大切な同居人なんだし。
それにこの島でサバイバル生活なんだから、迷惑とか言いっこなし」
「うぅ……左様でございますか。
承知いたしました」
そんな感じでギンの水分補給と火の確保ができた。
塩もゲットできたが、まだこれは水分が多いな。
屋内の乾燥やさらなる加熱でなんとか固形物になってくれればいいが。
もちろん、これらはかなり原始的な方法だ。
良い子はマネしちゃ駄目である。
その日の夜は、焼きサンマを食した。
空き時間でギンはなんと木の皿と箸を作っていた。
これも刀で?
彼女は実に器用で働き者だ。
これで野蛮な食生活も終わりである。
一気に10世紀は進化した。
ありがとう、ギン。
……もぐもぐ。
皿の上に載せ、箸で食う飯は素晴らしい。
サンマの焼いた身はホロホロだった。
内臓もサンマなら悪くない。
シロちゃんも豪快にサンマを貪っている。
「シロ様も満足でございますか」
「にゃふ!」
苦しゅうない。
そんな声が聞こえてくる。
……。
その日の夜。
焚火は燃え続けている。
火種もギンが用意してくれた。
しばらくは燃えて、周囲を照らしてくれるとか。
夜の火はいい。
なぜなら、ギンの姿がよく見えるから。
「あ、あまりじっくり見ないでくださいませ。
はずかしいっ……!」
いえいえ。
最高でした。
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