47.島の子
「うぅ、まさかカニにかまけて、立ち会えないなんて……!!!」
「にゃーん」
仕方ないさ。デカいカニだったもの。
シロちゃんが慰めてくれる。
でもギンに顔向けできねぇ。
が、出産したばかりのギンはベッドで横になりながらふふりと微笑んだ。
「いいのです。カニ漁は主様にしか無理ですからね。お互いがお互いのできることをすれば……」
そして胸元にいる赤子を揺らす。
ちょこんと小さなケモミミに銀髪。見た目はギンの子そのものだ。
俺の面影は……あんまりなかった。
でも構わない。俺の子だ。
「ほら、抱いてあげてくださいね」
「……お、おう」
すっと渡され、しっかりと赤子を抱える。軽い。あのカニよりも断然。
しかしこちらのほうが比べ物にならないほどの宝物だ。想いがこみあげる。
言葉にならない……。俺の子はよく寝ていた。しばらく、その顔を見つめているとギンがささやく。
「口を開けてみてください」
「ん? それはどういう……」
「とりあえず、やってみてください」
意図がわからなかったが、指でにっと唇を寄せて開けてみる。
ん……なにもない。当然、生まれてから少ししないと歯は生えないからな。
そこでギンが指をぴんと立てる。
「私の一族は、生まれた時から歯が生えてます。それがないのは、混血の時だけです」
「……!! そ、そうか……」
「だから、私と主様の子ですよ」
「そうだな……!!」
なるほど。ギンにとっては明白な違いだ。
俺にとっても……もちろん。俺は改めて父親になったと自覚した。
それから、わたわたと。まぁ、俺の戻ってきた時には大体のことは終わっていたのだが。
もちろん夕方には盛大なパーティーだ。
カニ、カニ、カニ!
食べなければということで、カニ鍋だ。
ハサミや身を茹で、カニ味噌も投下。
去年と違うのは調味料があること。醤油があれば全然違う。柑橘類をちょっと垂らせば、つけダレとしても良い。
そしてギンも早々と鍋パーティーに参加した。……出産直後に大丈夫なんか?
「大丈夫ですよ。むしろすごくお腹が空いてます」
「そ、そうか。無茶はしないでな?」
聞くとエリンの治癒魔術とギンの超人的体力で、大丈夫らしい。まぁ、俺の常識はこの世界の人間には通じないからな。
「はぁ〜。美味しいですね〜」
ギンははむはむとカニの身を食べている。見ている俺のほうがハラハラしてるくらいの食べっぷりだ。
ルニアがワインを飲みながらギンに絡む。
「ついに子どもが産まれたねぇ〜。どう、母になってみて?」
「とても良いですよ」
「ちなみにだけど、教育とかはどうする気〜?」
「そうですね。読み書きはここでも教えられますし……」
「だな。しばらくはここで育てようかと」
その点については少し悩んだ。この島の外にはきちんとした文明がある。多分、現代日本に換算して19、20世紀くらいだ。
その意味では国家による教育行政が育ってきているレベル。ここで育てるよりも……だが、ルニアを始めとして高度な人材がここにいる。
ある程度はこの島で育てて……子どもが島の外にも興味を持ったら、その時は止めないだろう。ギンも同じ方針だ。
「健康でいてくれれば、それで良いのですが……やはり剣の才があれば言うことはありません」
「ま、そうだよねぇ〜。でも……私の勘だと、その子はすっごい魔力ありそうだよ?」
「そうなのか?」
ニーファとラーファも頷く。
「揺らぎが大きく確定ではありませんけども……」
「私も感じました。一流の魔術師になれる素質があります」
へぇ、俺には全然わからんが。でも悪い気はしない。
ギンが意味深に目線を子どもに送る。
「魔術師の才があるなら、そう育てるのもありですよ。この子が好きになれることなら」
「心が広いね〜」
「その代わり、あなたの産んだ子が剣をやりたいと言ったら……弟子にしちゃいますから」
「いいよ〜。じゃあ、その辺はその子のやりたいこと優先で。この島にいる適任の人が教えればいいよね」
「構いません」
ギンとルニアが拳を合わせる。このふたりならではの友情だった。
でギンの次は俺が赤子を抱きながら、鍋奉行。いい感じだ。
ちなみにだが、子どもの性別は男だった。
この世界では苦労するかもだが……でも縁があって辿り着いた世界だ。この世界で俺は幸せになれた。
「にゃふー」
シロちゃんも俺の膝下にやってきて、ふにっと頭を膝に乗せる。すでにカニを食べまくってご満悦。耳がたれ気味になっていた。
「満足したか?」
「にゃうん」
「よしよし」
我が子を眺めながら、シロちゃんのふわふわ頭を撫でる。
こういう生活がずっと続いてくれればいい、と俺は思った。
第1部完結までお読みいただき、ありがとうございました!!
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何卒よろしくお願い申し上げますー!!





