44.春来たりて
すっかり鍋がなくなってしまった。まぁ、この人数の大人が食べれば一瞬か。
「ふぅ〜……あの黒いソースがこんな甘くて美味しい料理になるんだね〜」
ルニアが猫ちゃん(お腹たぷたぷ)と戯れている。
「大豆の黒ソースがこんなになるとは……ここでも作れないものでしょうか」
「チャレンジしてみる価値はありますね」
ニーファ、ラーファは醤油造りをしたいらしい。さすがの俺も製造法までは知らん……今度、モルデブさんが来たら情報をゲットしてみよう。現物があるのだから、製造法もゲットできるはずだ。
片付けも終わり、のんびりと浜辺に横たわる。暖かい風がよく吹いて気持ち良い。
俺の隣にはギンがいた。
「ふぅ、こういう和風な料理はいいですね」
「ああ、やっとこういう料理が振る舞えた気がする」
「……主様はやっぱり東方文化に親しんでいましたよね?」
「まぁ、そうだな」
ギンの瞳が俺を見つめる。とはいえ、そこには俺を問い詰めるような雰囲気はない。
純粋に俺の料理知識に敬意を持ってくれている。
「他にも色々な料理を知っているのですか?」
「ああ、調味料がないから出来ないのも多いけどな」
俺はギンのお腹をそっとさする。
彼女のお腹はだいぶ大きくなってきていた。春になれば俺の子が生まれるわけだ。
「この子が大きくなる頃には、もっと色々なモノが食べられるようになってるだろうな」
「はい、そうですね……!!」
そうして春になった。
飛行船の頻度は変わっていないが、荷物量が当初の数倍になっていた。
モルデブさんいわく。
「飛行船を増やすよりも、ひとつを増設したほうが良さそうなので」
ということらしい。
魔王国の飛行船は正直、かなり大きい。しかもミスリル(俺のよく知らない異世界鉱物)などの資源を大量に使うという。これをもうひとつとなると大変なのは俺にもわかる。
で、春になったということは……カニの季節だ。オリハルコンクラブはまた現れるのだろうか?
ギンの出産も近づいてるので、なんとなく落ち着かない。そわそわする。
そんな春の日のこと。風が強くて波高し。
白浜から北に行って、海鳥を捕まえる罠を仕掛けていたフィーリ、ファウ、フェウルが慌てた様子で俺のところにやってきた。
「た、大変です!」
「ヤバヤバです!」
「聞いてください!」
「お、おう?」
浜辺から海の様子を見ていた俺に、いきなりの突撃。この三人娘が慌てるなんて珍しい。
「カニです!」
「ピカピカしてました!」
「しかも……こーんなにハサミが大きくて!」
三人娘が両手を掲げてアピールする。
「……そんなに大きいのか?」
「ハサミと顔がちょっとだけしか見えませんでしたが」
「一瞬のことでしたけども」
「家くらいのサイズはありそうです!」
むぅ……見間違えとは思えない。
この三人は島の中でもかなり遠目がきく。実際、弓の名手だしな。
その三人が海で見たという巨大なカニ。しかもピカピカ……。
「にゃにゃにゃ?」
オリハルコンクラブじゃない?
シロちゃんがキラリと目を光らせる。前回のカニ鍋、シロちゃんは覚えています。
確かにその可能性は高い。
オリハルコンクラブは結局、去年は一匹しか見つからなかった。しかし一匹いるということは他にも個体がいると疑うべきだ。
伝説によると成体のオリハルコンクラブはもっと大きいらしい。なので、この広くて不思議な海のどこかにオリハルコンクラブがいてもおかしくない。
「……それは今さっきのことか?」
「「はいっ!」」
オリハルコンクラブはかなりアグレッシブである。なにせ、俺の獲物を横取りしようとしたくらいだ。
食欲旺盛で獲物があれば海面近くにも姿を見せる。
「にゃうーん」
折しも風がさらに強く浜へと打ちつける。
もし巨大なオリハルコンクラブが本当にいたら……。そいつがこの海域の獲物を食い荒らしたら……。
なんとかできるのは俺だけだ。
「見に行くか、シロちゃん」
「にゃん!」
ということで、海人の俺はシロちゃんとともに春の海へと向かって行った。
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