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41.竜王エリンの真の姿

 こうして竜王国との交流もでき、エリンが聖域に常駐することになった。どういう理由だか深くは聞かないが、当人の立ち位置はシャウラティと同じくらい……になったらしい。


「まぁまぁ、彼女と私は同じくらいの強さなので妥当なところですわ」


「そ、そうか」


 エルフ三人娘のフィーリ、ファウ、フェウルより戦闘力は下ということなのだろうか。とはいえ、様々な時代の人と種族が入り乱れるこの拠点のこと。


 序列よりも問題が起きないほうが大事で、その点においてエリンは大丈夫、すぐに馴染んでいった。


 で、そんなある日のこと。漁から戻った俺はうずうずと好奇心に負けてしまった。


 浜辺でぺちぺち干し魚を作っているエリンに声を掛ける。


「ところでエリンってドラゴンなんだよな? 真の姿って見られたりする?」


 エリンは常に人の姿をしていた。翼と尻尾は出ているが、それだけだ。本人には言わないが可愛いふりふりの服なので、ものすごーくコスプレっぽい。ドラゴンの気がしない。


 で、やっぱりドラゴンを見たい。見たくなってしまった。

 この世界に来てから、そういうモンスターを見たことがないしな。せいぜい銀色のカニくらいだし。


「構いませんが……」


 ということで浜の広いところでエリンに真の姿に戻ってもらう。


「ん〜……!!」

 

 可愛らしく背伸びをしたエリンの全身が青色に光る。


 ぽむっ。


 ちょっと気の抜ける音がすると……そこに現れたのは全高5メートルの大型のドラゴンだった。


 デカい……!

 それに格好いい!

 全身の蒼い鱗は陽の光を浴びてきらきらと輝き、尖った角と牙と爪は一分の隙もない。フィギュアにしたら売れそうなデザインだった。


「どうでしょうか」


「ああ……凄い! 想像より遥かに上だ!」


「なら良かったのですが……そんなにドラゴンが珍しいのでしょうか? どこにでもいると思いますが」


 ぎくっ!

 この世界ではそうなのか。


 てっきりレアな生き物だと思ったが、ドラゴン自体は人里にも普通に見られるらしい。まぁ、魔王国のモルデブさんも竜王国と友好的だったしな。


 とりあえずごまかしの咳払い。


「こほん、俺の生まれたところではとても珍しかったよ。だいぶ普通の人里から離れていたからな」


 世界を隔てるくらいには距離がある、ということで。


「なるほど……水野様が聖域の海を自由自在に行き来する能力もそれに関係が……?」


「うん、かもな」


 俺の適当なセリフにエリンがふむふむと頷く。で、エリンの竜形態を見た俺はさらにリクエストしてみる。


「そのまま飛んだりできる?」


「お安い御用です」


 エリンがばさっと両翼を広げる。

 おおっ、ドラゴンが空に飛び立つ!


 ……と興奮したのだが。

 エリンがそのまま翼をばっさばさ動かし、うんしょうんしょと巨体を伸ばしても何も起きない。砂が舞うだけだ。


「えーと?」


「どうやら聖域ではうまく飛べないようです。魔力が拡散してしまいます」


「いや、その翼で飛ぶんじゃ……?」


 俺が悲しそうにエリンの翼を指差すと、エリンがぶんぶんと首を振った。


「翼だけじゃ飛べないです。空力学に反してます」


「そっか……」


「すみません……」


「いや、いいんだ。代わりと言ってはなんだけど、爪とか触っていい?」


「どうぞどうぞ」


 まぁ、異世界記念ということで。ドラゴンの爪くらいは触らせてもらおう。

 俺がエレンに近寄ると、猫ちゃんもすすっと集まってきた。


「にゃふー」


「……猫ちゃんも触ってみたいらしいぞ」


「どうぞお構いなく」


 ぺちぺち。猫ちゃんがエリンの爪や鱗を触りまくる。これはあれだな……なんかおもちゃだと思ってる触り方だ。


 まぁ、それを言ったら好奇心だけで触る俺も大差ないか。間近で見てみると、エリンの鱗はとても美しい。爪も透き通るような蒼色だ。


 エリンの鋭い爪をひと撫でして、満足。猫ちゃんはエリンの鱗に頬すりしている。


「にゃにゃーん」


 どうやらピカピカでツルツルな鱗が猫ちゃんを惹きつけるらしい。


「ふふっ……」


 エリンも満更ではないようだ。それからというもの、エリンが竜の姿で猫ちゃんと戯れるのをよく見るようになった。


 仲良きことはいいことかな。


 ついでに猫ちゃんがエリンの鱗で爪をかりかりしているのは……まぁ、エリンが許しているからいいんだよな?

猫ちゃん、たまに硬いものを好きになる。


【お願い】

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