35.衝撃の秋
シロちゃんと並んでロブスターを両腕に抱え、拠点へと戻る。
「にゃうにゃんにゃーん」
シロちゃんも獲った立派なロブスターに頬擦りして上機嫌だ。
小一時間ほど泳ぎ、拠点に帰還。両手にロブスターを掲げて叫ぶ。
「とったどー!」
「にゃーん!」
ふむ、やはり大物を獲った時はこれだな。
なんだか引き締まる。
で、俺たちの帰還を女性陣も見ていた。もちろん、両手にあるデッカいロブスターも。
「主様、それは……伊勢海老ですか!?」
ギンが目をきらきらさせている。
「今、伊勢って言った……?」
「はい、これはあの高級な伊勢海老では?」
ふむ……俺が聞き返したのは伊勢という単語なのだが。しかし俺はギンの名字、四条というのを思い出した。
遠い異世界で四条なんという単語が共通するのだ。伊勢を使う人がいても不思議じゃない、ということにしよう。
「残念ながらこれはロブスターというやつだな。伊勢海老とは違う」
「かなり似ていますが……」
俺は『万能漁師』によって頭の中に浮かんできたアレコレを取り出す。
「伊勢海老はイセエビというグループで、ロブスターはザリガニのグループだな。近いようで結構違う」
「ほうほう……。さすが主様は海については何でもよく知っておられてます。ふむ、伊勢海老とは違うとのことですが、これもまた偉丈夫な海老ですね」
ギンは大体の海産物を食べた経験がある。デカい海老を見て、尻尾が荒ぶっていた。
そんなギンの背後からルニアが抱きつく。
「んぎゅー!」
「むっ、ルニア……!」
「ギンがそんなに尻尾を振り回してるってことは、その大きなエビも美味しいのー?」
「無論です。甲羅の大きさと見事さで言えば私の故郷で最高級の伊勢海老とほぼ互角……ぷりっぷりでミソにも期待できます」
おお、俺の思っていることを全部言ってくれた。
聞くとやはり、ルニアの故郷ではこういうエビは獲れないらしい。
「まー、手のひらサイズのエビかザリガニくらいかなぁ……」
それはそれで食用としてはポピュラーだが、やはりエビは大物が良しとされる。
すでに時刻は夕方。夜はこのロブスターをたっぷり食べようか。
ロブスターは……やはり蒸しだな。鍋で数十分蒸すだけでも十分だ。鮮やかな赤に変わったら、後はバラしていくだけ。緑がかったワタも食える。
そこにチーズソースや香味野菜のソースを合わせれば、ロブスターの蒸し焼きが完成だ。
「おお、これがロブスターですか」
「大きなエビは小さいエビとは全然違いますね」
ニーファ、ラーファもロブスターは初見のようで舌鼓を打つ。
「にゃーう、にゃん!」
「にゃっ、にやっ!」
「猫ちゃんや、それは殻だよ」
「にゃーん!」
この殻にはまだ身が残ってるよぅ!
という抗議の目とともに猫ちゃんは殻を隅々までぺろぺろしていた。可愛い。
ううむ、これはワインが欲しくなるな……ということで、また少しだけワインを解禁する。
ルニアは大喜びだ。
「やったぁ〜、今日も飲むぞ〜!」
「いぇーい!」
「この美味しいエビを肴に!」
「チーズもさいっこうっ!」
エルフ三人娘もノリノリだった。
その中で唯一、自重したのがギンだった。
「私はお構いなく。野イチゴジュースで十分です」
「……最近、食欲落ちているみたいだけど大丈夫か?」
夏の時もそうだったが、ギンの体調にムラがある。冬はそうでもなかったと思うのだが。浜辺に腰掛けたギンが顔をうちわで仰ぐ。
「そうですね……。夏頃からちょっと不調気味のような」
「結構長引いてるよな……」
正直、心配だ。ここには色々と技術を持った人間がいるが、原因不明というのが一番不気味で困る。
と、そこにシロちゃんがやってきた。
「にゃうーん」
シロちゃんがギンのお腹に頭を擦り付け、彼女を見上げる。そして次にシロちゃんが俺を見上げた。
シロちゃんとの付き合いは俺が一番長いからな。普段は絶対にしないその意味深な動きに、俺はピンと来てしまった。
「……もしかして」
「はい?」
「妊娠してる、とか?」
「にゃーん」
やっと気付いたにゃ。
シロちゃんはむにゃむにゃと頷いた。
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