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31.試飲会

 真夏になり、雨風と熱波が交互にやってくる。

 日本でいうところの6月とか7月くらいの感じだ。

 からっからに渇いている、という雰囲気はない。


 で、ついにだが……ブドウからワインができた。

 ルニアが胸を張る。


「ふっふーん。まぁまぁ、いいんじゃないかな」


「ごくっ、本当か」


「よだれが出そうになってるよ。私もだけど」


「2か月くらい待ったからなぁ」


 砂糖を継ぎ足して、自然発酵。

 正直、地球の作り方とは違う気がするが……仕方ない。


 エルフ三人娘のフィーリ、ファウ、フェウルも興味津々だ。

 そういえばワイン造りに反対する人がいなかったから深く考えなかったが、もしかして酒飲みが多いのか?


「エルフは森の恵みに囲まれてますからね」

「パカパカ飲みます」

「ドワーフには負けません!」


 三人の言葉にルニアが力強く同意する。


「だよねぇ~。お酒は人生の友だし~」


 ニーファ、ラーファは……見た目通りのお姉さん組だからな。

 そこそこ飲みますよ、ということだった。


 シャウラティに聞くと、魔族はアルコール耐性が強いらしい。


「いずれは白ワインなども飲みたいですわ。まずは赤ワインの安定供給が第一でしょうが……。ラズベリー酒とかは難しいのかしら?」


 もう次のことを考えてやがる。

 相当飲むな、これ。


 俺は日本人の並なので、ビール数杯がいいところ。

 それほど飲むというわけでもない。ワインも詳しくないしな。


 でもたまの晩酌が楽しみではあったので……当然、ワインにも期待が高まる。


 というわけで夜に試飲会だ。

 満天の空の下、星明りと焚火のそば。

 この島で過ごしてきた女性達とわいわい楽しめるのだから、最高だ。


 ブドウを詰めた樽を傾け、各々のコップに注いでいく。


「これがブドウから作ったお酒――『わいん』ですか」


 俺たちの中で唯一、ギンだけはワインを飲んだことがなかった。

 東洋風の国の出身だから不思議でもない。


「酒精の香りは本物ですね。故郷の酒に比べると、すっきりしてそうですが」


 そこにルニアが割って入る。


「酸っぱいようだったら砂糖を入れちゃってもいいんだよ~」


「おお、それもそうだな」


 もし地球でそんなことをすれば、間違いなく袋叩きだろうが。

 しかし自家製ワインなので許して欲しい。


 で、コップが行き渡ったので……待ちに待った瞬間だ。 


「「乾杯!!!」」


 ごくごく……。


「こ、これは――うまい!」

 

 つーんと抜けるようなアルコール。

 思ったよりも濃厚で甘みが強い。いや、想像以上だ。


 ギンがぺろりと舌を出した。


「おお、これが『わいん』ですか。甘いですが、いいですね。ブドウ果汁がこうなるとは……。私の故郷の野ブドウとはまるで違います」


「野ブドウはワインにならないのか?」


「甘味がなくて、かなり苦いので無理です。薬にするくらいでしょうか」


 甘味のないブドウか。そりゃワインには不向きだな。


 ニーファ、ラーファがふふりと微笑んでいる。


「魔力を注ぎ込んだ甲斐がありました」

「砂糖も入れました」


「それはつまり魔法ということ……? 聖域で魔法は使えないんじゃ」


「生活の中でちょっとずつ試してはいます」

「ワイン造りの魔法はそれほど高度でもないので」


「……そういうものかぁ」


 ただ、ワインはゼロから魔法のみで作るという訳にはいかないようだ。

 あくまで補助的に美味しくするだけ。

 そういう意味では、発酵を助ける魔法といったほうが正確か。


「にゃーう」

「にゃうにゃう」


 猫ちゃんにアルコールは厳禁なので、炙り肉で我慢してもらってる。

 というか、ワインを飲みたいという素振りも見せないが……。

 ここの賢い猫ちゃんのこと、自覚的に避けているのかも。


 パチパチと爆ぜる焚火に串で刺した魚肉と鳥肉。

 猫ちゃんはうずうずと焼き上がるのを待っている。


 まぁ、俺たちも酒の肴として待っているのだが。


「にゃーうにゃう」

「にゃう、にゃうぅぅ……」


 猫ちゃんの目がいつになく真剣だ。

 今日は試飲会ということで大盤振る舞いだからな。


 ルニアが赤い顔をしながら俺にもたれかかってくる。


「飲んでる~?」


「いやぁ、結構飲んでるよ」


「ふーん、そうかなー? なんだかあんまり顔色が変わってないみたい~」


「んん、そうか?」


 個人的には飲んでるほうのペースだと思うのだが。

 しかし言われてみると、酔いが回ってない。

 心地良い浮遊感はあるが……意識がグルグルするような感覚がない。


「これ、ちょっと度数高くしちゃったかもー……」


 ルニアがべたーっとくっついてくる。

 ……彼女が人前でこんなになるのは珍しいな。

 

「にゃーうにゃーう」


 シロちゃんが香箱座りしながら、俺に声をかける。

 視線は焚火の干し肉に向いているが。


『ワインも水だから、身体に悪影響を与えないんじゃないかなぁ』


 そういったような気がした。

 うむ……それは盲点だったかも。

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