30.夏生活
じめじめとした感じではあるが、それ以外は夏でもあまり変わらない。
まぁ、湿度は食料保存の大敵ではあるが……。
食当たりになったら洒落にならない。というわけで、新しい制度を導入した。
「にゃうにゃう」
猫ちゃんたちの前には干された魚、塩漬けの鳥肉が並べられている。
つまりは数日経った保存食だ。
猫ちゃんたちが神妙な顔をして、保存された食べ物の匂いを嗅ぐ。
くむくむ……。
行ったり、来たり。猫ちゃんたちがじーっと観察する。
「にゃうー」
「にゃうん?」
「にゃうにゃう」
顔を見合わせて話し合った猫ちゃんが……ひとつの鳥肉を前脚で指した。
「にゃう!!!」
びっと猫ちゃんたちが保存された鳥肉を前脚で指す。
「うーむ、だめなのがあったかぁ……」
猫ちゃんの嗅覚は人間の数万倍。
ということで、腐ったかもな保存食を診断してもらったのだが……。
エルフ三姉妹が鳥肉を取って匂いを嗅ぐ。
「うーん、私にはわかりませんね」
「でも猫ちゃんの嗅覚は人間より遥かに上ですから」
「食べるのはやめておきましょう」
それでも腐りかけ程度なので、魚や鳥を誘う餌にはなる。
サバイバルでは簡単にぽいって捨てられないからな。
こうして猫ちゃんは食べ物診断にも活躍してくれることになった。
もちろん、猫ちゃんも腐ったモノを食べたくはないだろうしな。
そんな夏の中で、ひとりだけ体調を崩し気味なのがいた。
ギンだ。今日も木陰で休んでいる。
「ふぅ……なんだか気力の衰えを感じます」
「顔色があまり良くないな……。どこか痛かったりするか?」
「いえ、夏バテだとは思うのですが……」
確かに夏になって湿気は蔓延している。
俺はあまり感じないが、女性陣はちょっとだるそうだ。
「かなり蒸しますよね、ここ。故郷とは大違いです」
「そうだなぁ……」
俺が大丈夫な理由は多分、湿気も水のひとつだからだ。
だから湿気による影響を俺には及ぼさない……のだと思う。
かなりニッチな能力の気はするが。
「ま、食料はたくさんあるし、当面は建物を作る予定もない。ゆっくり休んでくれよな」
「うぅ、面目ありません……」
「いいっていいって」
むしろ人間を遥かに超えたギンにもこういう面があるのかと、少し安心したくらいだ。会った当初は、マジで腰を抜かしかけた時もあったしな……。
こうして夏を過ごしながら、俺たちはひとつのことに気が付いた。
ニーファ、ラーファが始めた家庭菜園。
先日、種を植えたばっかりなのだが……もう芽が出て、育っている。
10センチくらいだろうか。
「明らかに成長が早いよな」
俺にそういう家庭菜園や農業の知識はない。
でも異常な気がする。
お手製のシャベルを持ったニーファ、ラーファ。
このふたりは表情が読みづらいが、困り気味なのが伝わってくる。
「ですね。数倍の速さで成長しています」
「聖域だからでしょうか」
そう言われると返す言葉もない。
海からして季節で泳ぐモノが入れ替わるのだから。
植えたものが常軌を逸したスピードで成長しても不思議はなかった。
「それとも魚の骨粉や内臓を肥料にしたせいですかね」
「廃棄物の有効活用です」
「……そっちの気がするな」
ここで生まれた子猫の成長スピードも速いしな。
まぁ、俺たちは成長期を過ぎてるからか変化はないのだが。
栄養と不思議なパワー満点の海の幸が植物にも作用するとは……。
俺は屈んで家庭菜園で育つ苗をじーっと見つめた。
「でも悪い話じゃない、よな? 成長が早いほうがいいし」
ニーファ、ラーファもじじーっと屈んで苗を見つめる。
「それもそうですね。収穫は来年になるかと思いましたが」
「この調子だと秋には成果が出そうです」
素晴らしいじゃないか。
この調子で家庭菜園も広がれば、食も豊かになる。
さらに俺はニーファ、ラーファの後ろにある木製バケツに首を伸ばす。
彼女たちの言う通り魚の内臓やらが入っているのだが……。
聖域のパワーなのか魚の内臓パワーなのか。
知りたくはある。魚の内臓パワーなら、交渉道具になりそうだ。
「今度、魔王国の飛行船が来たら渡してみるか? 調べてくれるかもだし」
「それはいいですね。正直、使い切れる量ではないので」
「しっかりと調べて欲しくはあります」
うんうん、そうだよな。
もし植物の成長が本当に早くなるなら、魔王国も興味があるだろう。
決してゴミを渡すわけではなく……友好関係の推進のためだからな。
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