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29.夏になって、イカ

 夏になってくる。

 海で獲れるモノが変わってきた。


 具体的にはイカ・タコ・カツオ……あとは小魚かな。

 コチなんかも獲れる。 

 見た目はまぁまぁアレだが、美味い魚ではある。


 どことなく海産物が秋に獲れるものに近付いた気がする。

 1年もあっという間だ。


 しかしやることは変わりない。

 魚を獲って、日々を好きなように生きていくだけだ。


「ふぅー」


 ということで今日も漁を終えて陸に上がる。

 中々に獲れたな。


「にゃーう」


 相棒のシロちゃんがじーっと見ているのは、イカだ。

 獲れたてのスルメイカである。

 もう締めてあるけれど。


 実はイカを獲ったのは初めてだ。

 イカ・タコ類は夏までいなかったしな。


 日本人なので当然食べる。刺身もいいし、焼いてもいい。

 イカ・タコ万歳だ。

 だけどシロちゃんはちょっと首を傾げた。

 

「にゃう?」


 本当に食べるんですかって目をしている。

 食べます。美味しいよ。


 と思ったのだが。

 イカ・タコ類を食べる習慣をほとんどの人が持っていなかった。

 ギン以外はイカに対して疑わしい目を向けてる。


 一方、ギンはイカに対して乗り気だ。


「おおー! イカですか。イカはお刺身もいいですが、焼いてもいいですよねぇ」

「わかってくれるか」

「はい! ……あれ? 皆さん、どうして引き気味なんですか?」


 やはり見た目のビジュアルがマズいか。

 でも本当に美味しいのに。


 ここはひとつ、俺がイカの美味さを布教しなければ。

 ということで……俺の思う最強のイカ料理、塩辛を作ってみる。


 イカをさばいてワタを塩漬け。

 で、半日ほど冷暗所に置いて混ぜ合わせる。


 夏なので熟成も保存もあまりできないけれど……。

 ぶつ切りの塩辛はどうだ?


 まずは俺とギンが一口。

 しっとりとした濃厚な旨味。シンプルだけど舌に強烈に残る。

 ああ、これだ。和の味がする。


「いいですねぇ、あふ……」


 ギンも感無量らしい。

 尻尾がぶるぶる震えている。


「そんなに美味しいのー?」


 ルニアがひょこっと覗いてくる。

 好奇心の強いルニアならどうですかね。

 美味しいっすよ。ということで塩辛を差し出してみる。


 ルニアは恐る恐る、一口。

 最初はビビり気味だけど、口に入れた瞬間にぱぁっと表情が変わる。


「んっ……んんー? あ、いいね。うん、濃厚だ。イカって食べたことないけど、ふんふん……美味しいよ!」


 お、どうやら好評らしい。


 ルニアの好評を受けてニーファ、ラーファも塩辛を食べてくれる。


「おおっ、確かに内臓系ですね。この塩味がグッドです。獣のような生臭さはないですね」

「イカだからでしょうか。もぐもぐ」

「ラーファ、食べるのが早いですよ」

「もぐもぐ。ニーファこそ」

「もぐもぐ……」


 この二人は言葉数が少ない。

 だからこそ、食べるのが早いのは嬉しいな。


 あとはイカ焼きだ。

 ぶつ切りのイカの身を塩と胡椒で下味をして、焼く。


 マジで醤油が欲しいけれど、我慢するしかない……。

 代わりに柑橘系の実からスパイシーなタレを用意する。


 適度な焦げ目がついたところで、実食。


「……うま」


 そもそもこの海で獲れるモノが美味い。

 なので当然、焼いただけのイカでも美味いわけだ。


 柔らかくもしっかりとしたイカの風味。

 爽やかなタレとよく合う。


 ちなみに猫ちゃんですが。


「にゃーうにゃう」

「にゃうん!」


 どうやら刺身とゲソの部分がお好みのようだ。

 ぐいぐい噛んで食べている。

 歯応えが楽しいらしい。

 確かに、イカを食べる楽しみのうちの半分は食感だ。

 猫ちゃんはすでに楽しさを見出しているようだった。


 あとはパスタが出来れば、イカ墨スパゲッティとかも出来るんだが……。

 まだ遠そうだな。


 とりあえず塩の有効活用もあるし、塩辛は適度に作っていくか。

 上手く保存できれば、食の豊かさにも繋がる。

 んー、それにしても……ワインでもいいから酒が飲みたくなるなぁ。

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― 新着の感想 ―
初めまして。 あまり貞操逆転異世界という感じがしないですが面白いです。 無粋だと思うのですが猫に生のイカは厳禁なはずです。 まあ、地球ではないので猫っぽい別種って事でしょうが。
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