26.剣士シャウラティ
私の名前はシャウラティ・エレステナ。
魔族きっての名家の生まれ。
魔法は得意ではありませんが、武術なら魔王国最強を自負しておりますわ。
これは自信過剰ではありません。
私はかの勇者王とも剣で戦い、互角だったのですもの。
この戦いは壮絶を極めましたが、最後に私の剣が折れてしまって終わりました。
もし剣の質が同じなら、勇者王をも倒していたかもしれません。
なので剣術だけなら、世界最強の一角ですわ。
ゆえに魔王国三大幹部として遇されてもおります。
しかし私でも魔王様には傷ひとつ付けられません。
魔王様の結界術が凄まじすぎるからですの。
完璧な防御を持つ相手に勝つ方法などありますかしら?
実際、魔王様に傷をつける相手がいるなど想像もしませんでしたわ。
それが……まさか聖域を覗き見――もとい調査して反撃にあうとは。
魔王様は玉座から転げ落ちたそうですが、私は食べかけのクッキーを落としましたのよ。淑女としてあるまじき醜態。
で、私は性悪モルデブに嵌められ、聖域への飛行船に乗せられてしまいましたわ。
出荷される豚の気分とはこういうものなのかしら。
知りたくもありませんでしたわ。
聖域に到着して一番最初に思ったのは、寒気でしたわ。
まずのほほんとしたエルフのお嬢さん。
えーと、ルニア――様という名前でしたね。秒で覚えましたわ。
見た目は内蔵する魔力が完全にバケモノですわね。
もちろん滅却の魔女の名は魔王国に轟いていますわ。
最大火力で山を吹き飛ばしただの、爆発跡が湖になっただの……。
伝説かと思っていましたけど、違いますわね。
ガチですわ。マジでやれる魔力ですわ。
彼女が現役の時代でなくて良かったと、心底感謝しましたもの。
フィーリ様、ファウ様、フェウル様も竜王国と戦ったあの三人ですわね。
竜王配下であったワイバーン100頭殺しの記録。
どうやら眉唾ではないようですわ。
で、にこにこと微笑んでいるニーファ様、ラーファ様。
……どうして初代魔王様と同じ名前と角の形をした方が、ここに?
いや、確かにお二方が魔王国を作ったわけではありません。
その頃の魔族は諸部族と争うだけで、国というようなものではなかったと家庭教師に習いましたから。でも慣例上、魔族を最初に統合して今日の礎を築いたので、この姉妹を初代魔王とするのが普通なのですわ。
ああ、そんな……怖すぎて魔力を探る気にもなれません。
これが魔王国だったら漏らしてたかもですわ。
で、ニーファ様とラーファ様に跪こうとしたら、マズい雰囲気を感じたのでやめましたわ。
「誰も気が付いていないので内緒ですよ」
「ここではのんびりと暮らしたいので」
逆らえるはずもなく。
ここではただの魔族のニーファ、ラーファということらしいですわ。
そして最後がギン様。
ヤバすぎ……。
近くにいるだけで冷や汗が止まりませんわ。
ルニア様もそれは、確かに危険すぎるのはわかります。
戦場で絶対に戦いたくありません。
でも私は武術家。
本当の意味でルニア様の実力を測ることもできなければ、そうするつもりもありません。魔法が発動するか斬るかだけの話ですから。
同じ物差しではないのです。
でも、この方は――こんな怪物が世界に存在していたのですか?
勇者王なんてごちゃごちゃ魔道具のアクセサリーで固めた筋力馬鹿。
竜王だってドラゴン特有のステータスでごり押ししてくるだけのデカブツ。
本当に剣一本なら、負ける気はしません。
……そんな風に思っていた自分は浅はかでした。
上には上がいる。
所詮、私は一時代でちょっと強いだけなのでしょう。
でも目の前のギン様は違います。
彼女以上の剣士は存在しうるのでしょうか?
でも絶望が深い分、希望もあります。
だって、そうでしょう。
自分より強い方がいるということは、近づける可能性もあるということ。
まだもっと強くなれる気がしますわ。
そして代表の水野様。
彼はなんと言っていいか、不思議です。
強さは感じないのに勝てる気がしません。
勝てるビジョンが思い浮かびません。
不思議です。
オリハルコンクラブを討ち取ったのは彼という話なのですが。
もしかして、アレでしょうか。
私がまだ彼の凄さを実感できるレベルに達していないとか?
その可能性は大いにあります。
なにせギン様もルニア様も彼に心酔しているようですし。
私はこれから魔王国の駐在として、この聖域に常駐します。
最初のうちはぎゃーぎゃー騒いだ私ですが、今はちょっとだけここに送ってくれたモルデブに感謝します。
追記。
夜になってわかりましたが、水野様も化物です。ケダモノです。
ニーファ様とラーファ様が一緒でなければ、初日で壊れるところでした。
あの御二方もちょっと所でなくケダモノなのですが。
教科書には載せられない歴史の裏側を知ってしまいました。
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