25.ブドウと魔王国の人
ギンの報告によると、ここから1日ほどゆっくり進んだ奥にたくさんのブドウがあったらしい。
「とても不思議なのですが、春なのにブドウが実っていたんですよね」
ブドウは秋の果物だ。
でも生えているなら遠慮なくもらおう。
まぁ、この聖域は海も不思議だ。
猫ちゃんは賢くて大きいし、陸にも不思議があるのかも。
にしても持って帰ってきたブドウはぎゅっと実がつまってうまそうだな。
ごくり……。
「魔術で調べましたがきちんと食べられます」
「むしろかなりおいしいです」
そ、そう?
というわけでブドウの試食会だ。
で、このブドウが甘いのなんの。
久し振りに純粋な糖分を摂取した気分だ。
甘味は人生を豊かにしてくれる。
猫ちゃんはブドウは興味ないのかあくびしてるけど。
あっという間に半分くらいを食べてしまった。
「まだブドウはたくさんあるんだ?」
「はい、まだまだあります。これから定期的に採ってこようかなと」
「それはいい。これだけブドウがあるならワインも作れたりする?」
ルニアがさっと口を挟む。
「おー。考えることは同じだね~。これだけおいしいブドウなら、お酒にしてもおいしいよ、きっと」
アルコールが欲しいのもあるが、ワインにすれば長持ちするしな。
ワイン造りについて、反対意見は出なかった。
むしろ全員乗り気だ。
全員成人しているので、そりゃそうか。
生活が安定してくればワインも欲しくなるよね。
ニーファ、ラーファがワイン造りにちょっとした知識があるようで、任せることにする。
「ブドウ畑まで木を薙ぎ払って道を作れば、相当短縮できるかと」
ということなので、こちらはギンにお願いする。
徐々にではあるが開拓だ。
ワイン造りをするにあたり、また小屋を増やす。
これはワイン畑に近いほうがいいので、海岸からは遠めだ。
とりあえずはお試しみたいな感じだが、量産できるようなら広くしないとな。
それも考えて小屋の配置を考える。
楽しい時間だ。
そういえばモルデブさんが帰ってからもう数ヶ月……。
新しい飛行船が来る気配はない。
来たらワイン造りだとか、次の次に相談したいこともあるのに。
やはり交流はそう簡単に上手くはいかないのだなぁ……。
遥か北の魔王城。
「うーん、ううーん」
モルデブは悩んでいた。
最近、寝不足で胃薬が手放せない。
原因は聖域についてだった。
オリハルコンの分配。聖域の情報開示。
もちろん聖域についての文献調査も。
胃が痛い仕事が増える一方だ。
「ふふっ、顔色が悪いですわね。モルデブ」
モルデブの執務室を訪れたのは金髪の魔族。
スレンダーでありながら出るところは出ていた。
彼女の名はシャウラティ。
魔族の名家として生まれ、魔王軍の三大幹部も務めている。
魔力には乏しいが剣の腕は魔王国最強と言って良かった。
「戻ってきていたのですか」
「ええ、国境の視察もきちんと終えましたわ。
はぁ……にしても働きすぎですわ」
「あなたはずっと最前線ですからね」
「そうよ! もう何年も休暇がありませんの。
魔王様に相談しても進展がありませんし!」
「……ふむ」
「あーあ、どこか温かいところでのんびりしたいですわー。
休暇でなくてもいいから、寒いところとはおさらばできないかしら?」
ちらっ。
これみよがしの大声でシャウラティはモルデブを見た。
「その希望、叶えてあげましょうか?」
「マジですのっ!?」
「ちょうどいい勤務地があります。
誰に行ってもらうか悩んでいたのですが」
「そこは暖かいのですわ?」
「無論、年中快適に暖かいです」
「ついでに美しい海とかあったり?」
「自然そのままですよ」
「乗りましたわ! ぜひ私に行かせてくださいませ!」
ぐっとガッツポーズをするシャウラティに、モルデブは微笑んだ。
「ええ、とても良いところです」
魔王国、聖域行きの飛行船。
シャウラティは涙を浮かべながらモルデブに抗議していた。
「は、はめられましたですわー!!」
「何を人聞きの悪いことを!」
「聖域赴任なんて聞いてません! どうして私がっ!?」
「それなりの立場と信用がある人じゃないと駄目なのです!」
「でも、聖域って魔王様に傷をつけたのでしょう?
私なんかが行ったらすぐ殺されちまいますわー!!」
「大丈夫です! 私だって生きて帰ってきましたから!」
「ああああーっ!! まだ死にたくないですわー!!」
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