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23.モルデブの帰還

 遥か北の魔王城。


 魔王リシャスは玉座の間でモルデブの帰還を歓迎した。

 モルデブの手には大きな宝箱がある。


「おかえり、モルデブちゃん。良かったぁ。

 お葬式と遺書の準備はしたけど、無駄に終わったね」


「生きた心地はあまりしませんでしたが」


「聖域に魔族が行ったのって、何年振りだっけ」


「100年間、魔王国から向かった人はいません」


「そ、そうだよね……。

 それでどうだったの?」


「ハイエルフとヤバそうなサムライ、あとは純血の魔族でしょうか……」


「え?」


「……ざっと見積もった戦力で言えば、この魔王城が一夜で滅ぶレベルです」


「そ、そうなんだ……あ、あはは……」


「というわけで、聖域を覗こうとするのは厳禁です。

 彼女たちを敵に回したら命がいくつあっても足りませんから」


「わ、わかってるよぅ。だ、だからそんなに睨まないでぇ」


 そしてモルデブは水野たちとの話し合い結果を報告した。


「――で、最後に水野様より贈り物を頂戴いたしました。

 友好の証だそうです」


「うん、気になってたんだよね。モルデブちゃんが宝箱を持ってきたから」


 仰々しくモルデブが宝箱を開ける。

 そこにあったのは、オリハルコンクラブの殻であった。


 それを見たリシャスは玉座から転げ落ちた。


「お、おおおわーー!! そ、それってもしかしてぇぇっ!!」


「はい、オリハルコンクラブの殻でございます」


「生のオリハルコン、初めて見た。

 こ、これをもらったの? もらってきちゃったの?」


「……もらってきてしまいました」


 オリハルコン。

 それは神代の武具、装飾品に使われた特級の鉱物だ。


 しかし争いの中でオリハルコンも歴史から姿を消した。

 真のオリハルコンを使った品物はもはや数えるほどしか残っていない。


 魔王国ではオリハルコン合金の指輪――魔王の指輪だけだ。

 この混ぜ物をした指輪でさえ、オリハルコンを使った品物としては世界最大のものである。


「産出地も精錬法も失われた今、これほどのオリハルコンを得たのは幸運です。

 幸運を通り越して足ががくがくします」


「はぁ……うわぁ、こんなにもらっていいのかなぁ?

 他の国はなんて言うだろ」


 リシャスは文官には不向きだ。書類仕事を嫌がり、根気がない。

 だが不思議なほどの大局観を持ち合わせていた。


「ご懸念はもっともです。これほどのオリハルコン、独占したと知られたら……」


「絶対に色々と言ってくるよね。横槍も入れてくるよね」


「最悪の場合、戦争になりかねません。いかがいたしますか、魔王様。

 このオリハルコンであれば大都市ひとつと引き換えにできるほどの価値がありますが」


「あー、うー……」


 リシャスがぼさぼさの髪をかきむしる。


 ……しばらくして。


 ぴっこーん!

 リシャスは閃いた。


「じゃあ、三等分! このオリハルコンは魔王国と竜王国と勇者王国で!

 あとは聖域の情報も全部開示しちゃおうよ」


「その心は?」


「そうすれば他の国も聖域の恩恵を受けて、ハッピーだよね。

 変な溝もできないし……。

 それともモルデブちゃんがずっと聖域大使をやってくれる?」


「うぐっ……」


 聖域に行くのは構わない。

 でも、うっかり不興を買ったら死ぬかもしれない。

 特にヤバそうなサムライは殺気立っていた。怖い。


 あるいは訪問時にオリハルコンクラブが襲ってきたりしたら……。

 自分だけ死ぬかも……。


「そ、そうですね! あそこは国際管理地域ですから」


「そうそう! 私たちだけ付き合うのは、違うよねぇ」


「ええ、そうですとも。そうしましょう!

 皆さんも巻き込みましょう!」


「それがいいよ! あはははー!」


 こうして魔王国は竜王国と勇者王国に聖域の情報を開示することにした。

 それがまた世界に波紋を引き起こすのは、もう少しあとになってからの話であるが……。

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