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21.魔王国との話し合い

 来客は飛行船でやってきた。

 飛行船のサイズは中々で、大型旅客機くらいはデカい。

 

 飛行船があるってことは、この世界にも20世紀前半の技術力はあるんかな。

 魔力で動いてますとかなら別だけど。


 全員で浜辺に出て飛行船を見上げる。

 ギンが刀に手をかけていた。


「おおー、なんと面妖な。敵でしょうか?」


 おいおい。

 いきなり物騒なことを言わんでよ。


 観光客かもしれませんよ。

 言っちゃえば、俺たちだってそんなもんだし。


「ですがあのような代物、見たことありません」


 あれ?

 聞いてみると、あれが飛行船だとわかった人はいなかった。

 どうやら女性陣の生まれた時代に、ああいった乗り物は存在しなかったようだ。

 なんというジェネレーションギャップ。 


 俺が空飛ぶ乗り物だと説明すると、ルニアが感心したように腕を組んだ。


「あれ、どういう原理なんだろうねぇー。魔力は使ってなさそう~」


 どうやら魔術組によると、あの飛行船自体に魔力がないらしい。

 ということは普通の飛行船か。

 ヘリウムとかで浮いてんのかな。

 

「でも魔力のある人は乗っていますね」


「どれくらいの魔力だ?」

 

 一応、聞いておく。


 フィーリ、ファウ、フェウルの3人のさらに半分くらいのレベルらしい。

 そのレベルがわからねぇ……。

 

 でも非友好的でも対処可能だとか。

 そんな危険なことにならないよう祈るだけだ。




 

 飛行船からさらに小さな飛行船が出てきて、ゆっくりと浜辺に降りてくる。


 ミニ飛行船から出てきたのは、黒のスリット入りローブを着た魔族だった。

 きちっとまとめられた金髪。きりっとした目元。あとは爆乳だ。

 バリキャリウーマンの香りがする。


「私は魔王国の大使、モルデブと申します。

 代表者はどなたでしょうか」


「俺です」


 実はさっき決まった。

 決め手は飛行船を知っていたこと。

 代表なんてそんなものである。


「魔王リシャスより、ご挨拶を。

 このたびは友好的な関係を結べればと思って参りました」


「どうもご丁寧に」


 ふぅ、いきなり争いにならないで良かった。

 友好関係ならいくらでも結びますよ。

 来るもの拒まずだ。

 

 浜辺で立ち話を続けるわけにもいかないので、

 新しくできた俺の家へ案内する。


「魔王国より友好の印として、こちらを贈呈いたします。

 どうかお納めください」


 彼女が取り出したのは、綺麗なナイフだった。

 装飾品がごてごてと凄いな。実用性はなさそうとか思ってしまった。


 形式的な挨拶を済ませた後、彼女から色々と説明を受ける。


 この聖域は現在、どの国にも属さない中立地帯になっているとか。

 あとは聖域を巡る争いとか……。

 ギンやルニアから聞いたことが大半ではあったが。

 

「それで現状としては大国間の持ち回りで管理している状態です。

 向こう10年間は魔王国が責任を持つことになっています」


「じゃあ俺たちはどうなるんだろ。不法侵入者とか……?」


 特に異世界から流れ着いた俺ってどういう扱いになるかしら。

 いまさらだけど、結構マズくない?

 と思ったのだが考えすぎだったらしい。


「い、いえ! そんなことはございません。まったく!

 お気になさらずにじゃんじゃん住んで頂ければ!」


 ふむ……。

 でも一応、魔王国の土地ってことになるんだよな。


「税とかは必要だったりしない?」


「無税で結構です」


「そういう訳にはいかんでしょ」


「では100年ほど無税で。

 その後、余裕があれば税を納めてください」


 ええんか、それ。

 でもいいらしい。


 モルデブさんは書類を取り出してサインを始めた。


「ええと、水野様の治める聖域は100年無税で……っと」


「この場で決めちゃって大丈夫なの?」


「大丈夫です。きちんと他の国にも言っておきますので」


 どうやら聖域がアンタッチャブルなのは事実らしい。

 権利を主張しようとする姿勢がまるでない。

 てっきり何か主張されるかと思ったけど。


 俺としてはこの気楽な漁師生活が続けばいいだけなので、ありがたいが。


 国際的にどーなのよとは思ってしまう。

 まぁ、でも普通の世界じゃないもんな、ここ。

 女性3万に対して男性1人の貞操逆転世界だ。

 前世の感覚と色々違って当たり前か。


 で、色々と話をしていると。

 モルデブさんがぴくぴくと耳を動かした。


「申し訳ありませんが、魔力の流れが不安定化しています。

 そろそろお暇しなければなりません。聖域から出られなくなってしまうので」


「ここに来るのってそんなに危ないの?」


「聖域周辺は魔力の流れが大変危険です。

 チャンスを逃すと何ヶ月も行き来できません」


 思った以上だった。

 それは大変だ。

 ということでモルデブさんは帰ることになった。


「最後にお聞きしたいのですが、オリハルコンクラブが現れませんでしたか?」


「ああ、アイツね……。現れたよ」


 思い出してちょっとムカムカ。

 あいつは俺の獲物を横取りしようとしたカニだからな。

 もう殻しかないけど。


「ど、どうなされたんでしょうか?」


「獲って食べたよ」


「……!? そ、そうですか……。

 ちなみに獲ったのはどなたでしょうか?

 外におられるヤバそうな方々の誰かでしょうか」


 ヤバそうな方々って。

 でもギン・ルニアを筆頭に人類を超越してるからなぁ。

 木を豆腐のように斬ったり、地面に爆破で大穴開けたり。

 

 でもオリハルコンクラブを獲ったのは彼女たちじゃない。


「獲ったのは俺だけど」


「……なるほど」


 気のせいだよね。

 一瞬、化物を見るような目で見られたような。


 というわけでモルデブさんが俺の家を後にする。

 話ができた時間は短かったが、有意義だった。

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