17.冬が来て
そして夜。
ニーファとラーファが俺の寝床に来た。
二人一緒。
この姉妹は常に並んでいる。
夜も変わらないらしかった。
で、聞いて驚いたのだが……ふたりには子どもがいたとか。
しかし夫はもう死んでしまったのだという。
なんてこった。
姉妹で未亡人だった。
その夫も姉妹で共有していたとかで、相変わらず凄い世界だが……。
魔族では当然らしい。
まぁ、女性3万人に対して男性1人なら共有しないと無理か。
その関係をどう表現するかの問題だ。
で、気になったのが。
「……子どもさんは?」
「もう天寿を全うしているでしょう」
「別れは済ませてきました。お気になさらずに」
うーん……。
やはり、そうか。
ふたりも仮死状態になってから、
長い年月が経っているんだろうな。
だからこだわりはもうないらしい。
強いなぁ。
割り切っているのか。
割り切るしかないのか。
母は強し、か………。
この世界のことは俺は断片的にしか知らない。
結局は人から聞いただけだ。
何も知らないに等しい。
どんな事情があって。
どれくらいの悲しみがあったのか。
俺にはただ、慰めることしかできなかった。
「ありがとうございます。お優しいのですね」
「まだこんなに若いのに……」
見た目は18歳くらいだからな。
でも考えは大人のつもりだ。
ふたりのほうが人生経験豊富だろうけど……。
俺の手をふたりがぎゅっと握る。
「ニーファとまた一緒にいられるだけで幸せです」
「私もラーファと一緒にいられれば満足です」
…………。
ふたりのクールさは見た目だけなのかも。
あるいは様々な悲しみを背負った末か。
「でも、子どもはまた欲しいです」
「可愛いですから」
断る理由もなく。
この場所で遠慮はいらない。
お互いに合意があれば。
神様も許してくれる。
というわけで。
ニーファ、ラーファとの夜は激しく燃え上がるものだった。
冬もどんどん過ぎていく。
どうやら雨が増えるだけで、気温はさほど下がらない。
雪や時化がなければ問題はない。
住人が増えたので小屋も増設していく。
水や食料のストックはどれだけあっても困らないからな。
ニーファ、ラーファ姉妹も貢献してくれている。
「これはアク抜きをすれば、結構イケます」
「イケます」
どやっ。
植物にはかなり思い入れがあるらしく、
表情が結構表に出ていた。
全然知らない草ではあるが……。
茹でれば本当に食べられる。
味も悪くない。
新しく生まれた子猫ちゃんズも元気に過ごしている。
母猫のグレイちゃんも健康そのものだしな。
今では子猫を連れ、住居の周りを案内している。
子猫ちゃんは皆、活発的である。
将来が楽しみだ。
「ふみゃーん」
そして可愛いことに。
子猫ちゃんは時間があると、遊んでくるようせがんでくる。
よしよし、いくらでも遊んであげようね。
雨の日は漁に出ないので、遊ぶ時間もたっぷりだ。
お気に入りは葉と蔦で作ったボール遊び。
ころころ転がして。
「ふみみー」
子猫ちゃんが戻したのを、またころころ。
うーん、可愛い。
むしろ遊ばれているのはこちらかも。
でもいいんだ。
猫に愛されるのは嬉しい。
すくすくと育ってくれたまえ。
お魚なら、たくさんあるからね。
そしてついに塩も量産できた。
乾燥と加熱を繰り返し、真っ白な塩の結晶ができたのだ。
ありがとう、ルニア。
彼女の火炎魔術のおかげだ。
滅却の魔女が塩づくりというのもアレだが……。
気にしないことにしよう。
で。
最近は保存食作りも本格化させている。
まだ試行錯誤の段階ではあるけれど。
水分を綺麗に抜き、塩をまぶして容器に入れる。
うまくいけば干物とかも出来るだろう。
試行錯誤を重ね、なんとか保存食を作っていきたい。
そうすれば……森の奥を探検する余力が生まれる。
保存食がないと探検は厳しい。
なぜ、保存食と探検が関係するのか。
森の奥に食べ物があるかがわからないからだ。
というより、今のところはあんまりなさそうな雰囲気。
木の実や草くらいだ。
これでは日帰りが限界だ。
数日間生きていくには魚の保存食が必要だろう。
良さそうな場所を見つけても、拠点作りもできないしな。
保存食がちゃんと用意できれば、遠くまで行けるようになる。
まぁ、焦りはしない。
人も猫も増えているが、出来ることも増えている。
水の確保はもう心配しなくてもいいレベルだしな。
着実に進んでいる。
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