15.子猫誕生
グレイちゃんの出産は何事もなく終わった。
マジでほっと安心である。
「みゃー」
「んみゃー」
今回、生まれた子猫は4匹だ。
灰色の子が3匹、白と灰のまだらが1匹。
猫は一度にたくさん産むのが当たり前らしい。
初めて知った。
「んみー、にゃうんー」
グレイちゃんが子猫を舐め、綺麗にしている。
彼女も落ち着いていて何よりだ。
神様に大きな感謝と祈りを捧げ、出産小屋を出る。
マグロはすでに解体済み。
赤身たっぷりで、とてもうまそうだ。
解体を手伝ってくれたギンが、
じーっとその赤身を見つめている……。
「これはグレイちゃんのだぞ」
「も、もちろんです!
うぅ……あまりに見事なので、つい……」
気持ちはわからんでもない。
マグロのことを赤いダイヤとはよくいったもの。
しかも100センチ超のキハダマグロだ。
輝くしっかりとした赤身がある。
「でも天狼幕府でも魚は食べるんじゃ?」
と思ったが、そうでもないらしい。
「幕府の中枢は内陸部なので、中々おいしい魚介類は巡ってこず……。
むしろ肉のほうが多いかもです」
意外だな。
東洋風の国だから、魚介類もばくばく食べてると思った。
だけど、生の魚を食べられる地域は限られてたっぽい。
まぁ、昔の日本でもそうか。
生で食べられる魚は贅沢品だったはずだ。
「新鮮なお刺身は常にご馳走。
毎日、感謝しながら頂いておりますっ」
ギンがにぱーっと微笑む。
可愛いなぁ。
ルニアも魚介に関しては同じらしい。
基本的に新鮮な魚介はご馳走だったとか。
「帝都も森にあったからねー。
旨味の詰まったお魚は貢物や宴会用で、普段は食べなかったな~」
「エルフだから……とかじゃないんだ」
エルフは森に住んで森の物を食べてそう。
野菜が主食じゃないのだろうか。
個人的なイメージだけど。
でもそれはルニアに言わせるとちょっと違うらしい。
「森に生きていると森の産物ばっかりだからね。
水産物のほうが高価なのさ~」
その辺はギンもルニアも変わらないのか。
なんにせよ、おいしく食べてくれることはありがたいことだ。
その日の夜。
グレイちゃんに赤身のキハダマグロを献上した。
夢の食べ放題である。
いい食べっぷりだ。
「……にゃ」
シロちゃんが何やら木の実をくわえ、グレイちゃんに差し出している。
食べなさい、ということか。
もしかして出産後に必要な栄養を知っている……?
なんという賢さ。
シロちゃんに任せておけば安心である。
もちろん余ったキハダマグロは他の猫ちゃんや俺たちも消費した。
マグロうまい……。
「にゃあにゃあ!」
猫ちゃんズにもマグロは大変好評だった。
力強い赤身には誰も勝てない……。
ついでに薬味があったので、たたきも試してみる。
この食べ方はギンもルニアも知らなかった。
もったいないことだ。
さっ、まぐろのたたきを食べてみなさい。
飛ぶよ。
「うーん……ほぐれた身と葉っぱや木の実が旨味を引き出しています!」
「あー、沁みるねぇ。マグロってこんなにおいしかったんだー♪」
残念なのは米と醤油がないこと。
くっ……いくつか、きっと。
その日の夜。
マグロによって精がついたのか。
それともグレイちゃんに触発されたのか。
ふたりとも色々と凄かった。
生まれてからの子猫ちゃんの世話も抜かりなく行う。
体温を温かく保つ、それに水。
ベッドはいつも清潔に。
で、思ったのだが。
これからも猫ちゃんは増えていくと思う。
なので備えが必要だ。
子猫用の空間もあったほうがいいだろう。
「なぁ、猫ちゃんの家を作らないか?」
「いいですね。これからも猫ちゃんは増えるかもですし」
「賛成~。子猫ちゃん用の遊び場とかも作ろうよー」
「くっ、猫ちゃんの好感度稼ぎを……!」
「んふふー。ギンを仲間外れにはしないよぅ。
一緒に猫ちゃんアトラクション、作ろー」
「……ま、まぁそれなら……はいっ」
ふたりとも話し合い、猫用の家を作る。
中で運動できるような構造、ふかふかのベッドだ。
自分の寝床よりも気合いを入れて作ったかも。
これは当然だ。
猫ちゃんは選んだから。
「にゃーん♪」
シロちゃんもご機嫌である。
子猫ちゃんの成長は順調だった。
生まれてから1週間で歯が生えて、離乳しはじめた。
すくすくと体重も増えている。
こんなに猫は早く育つのだろうか……。
違うような気もする。
元々、この島の猫は大きめではある。
異世界でもあるし。
そのせいなのかなぁ。
生まれて半月ほどで、母猫との密着期間が終わる。
ちょっとずつだが子猫同士で行動しているのだ。
兄弟は揃って仲良し。
いつもお互いに毛づくろいをしていた。
とてもよき。
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